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ただ、助けたかっただけなのに

お題:殺された帰り道 

タイトル:ただ、助けたかっただけなのに

制限時間:一時間

 

 俺は平凡なサラリーマン。

 今日も広告代理店に勤めた帰り道、コンビニでインスタント鍋と週刊漫画雑誌を買って帰る。

 住宅街であるこの街は暗い、いちおう街灯はあるが、ほんとうにお情け程度で、明かりもチカチカとたよりない。

 よく見れば空き家も目立ち、人々は俺の顔を見てもあいさつ一つしない。

 最もこれは歩いているのが俺じゃなくてもそうなのだが。

 町の皆は自分の生活のことだけ考えている、それでもここが俺の帰る町。

 俺の前を、名前も知らないOLがツカツカとハイヒールを響かせて歩いている。

 

 ふと、俺の前のOLの歩く速度が上がった。

 秋の夜は早く、まだ会社勤めが帰ったら怒られる時間なのに、道は暗い。だからだろうか。

 見知らぬ彼女を助けたい。守りたい。

 そんなことを思ったのは、何もひいきにしている少年漫画誌の主人公に刺激されたわけじゃない。

 俺も足を速める。

 

 アスファルトの道を、背徳的な音を出して進む黒いハイヒール。

 よく見れば彼女はストッキングを履いてない、寒くないのだろうか。

 タイトスカートは早く歩くのにはそんなに向いてないと、昔つきあってた彼女が言っていた気がしたが、

 それでも女性の仕事着といえばタイトスカートであり、丸く大きな尻が強調されたそれが暗い街灯に光っている。

 無難な髪留めで括られたひっつめ髪が揺れる、彼女は、明らかに誰かから逃れようと足を速めていた。


 

 彼女の怯えが俺に伝わり、俺も彼女を守りたい一心で気が締まる。

 振り返ればジャージに季節外れのサングラスをした怪しげな初老の男性がさっきから俺たちの後をついている。

 彼女の顔は怯えていたが、後から安堵に変わったのを俺は見逃さない。

 だいじょうぶ、俺が守ってあげるからね。

 例え君が暴漢に襲われても、俺が戦うから。

 俺は命さえ無事なら、これぐらい……えっ?連絡先?そんな……。

 

 俺は早歩きをしながらそんなことを考えてた。

 彼女はまた前を向き足を速め、俺も、後ろの男性もそれに従った。

 どこまでこれが続くだろう、どちらにせよこれは、彼女をちゃんと送り届けるまで、気が抜けない。

 

 「助けて、さっきから追われてるの」

 ふと彼女は踵を返し、走り出す、とうとう、俺の戦う時が来た。

 俺も振り返り、カバンを武器に、不審者と対峙する。

 不審者はやおら持っていたポーチからカッターを取り出し、

 刹那、俺の視界が真っ赤な俺の血で染まる。

 

 

 「な……俺はただ……」

 「しまった、ただ、助けたかっただけなのに」

 初老の男性も崩れ落ちる。

 振り返った彼女が俺になにかいいかけた気がしたが、全ては暗い街灯がかき消してしまった。

 


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