表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

____1日目


____ここは何処だ。

俺は確か外国に住む親戚の誘いで

とある島へキャンプに行く予定だったはず

そして俺達はその島へ向かうフェリーに乗っていた筈なのだ。

なのに何故、耳元でさざなみが聞こえるのだろうか。

出来れば目を開けたく無い。

現実を受け入れたく無いからだ。

ただ、薄々は分かっている。

今どういう状況なのか。


__俺は今波打ち際にいる。

直前の記憶がフェリーに乗ってて

そこから波打ち際に時間を飛ばすような

シチュエーションなんて1つしかない。

でも、自分からは絶対言わない。

遭難したなんて口が裂けても言わない。

え?もう言ってる?

遭難してるって?

へぇーそうなん(遭難)だ!!!!

はーい、体が冷えるからやめましょうねー。


「うん。やっぱりそうなりますよね…」


目を開けた瞬間呟くと

俺の声は虚しく響くだけだった。

すぐ様溜め息が後を追う。

取り敢えず、もう少し落ち着く場所で

状況を整理しよう。

そう思って立とうとした瞬間____


「痛ッ!?」


____砂浜に足を取られてコケた。

忘れてた。ここ砂浜だったね。

全身についた砂をはたきながら

立つと周囲を見回す。

いやはや、

白い砂浜、暑い太陽、透き通る海。

これにビキニの美女が居たら最高だね!

だがしかし、最悪な事に美女どころか

海の家のオジサンすら居ない。

強いていうなら海の家も無い。

本当に人っ子1人居ないのだ。

まだ不明な所は多いけれども

多分、おそらく、否、ほぼ確実に

ここは無人島だ。

まあ、某ゲームのように

謎すぎる生命体だったり、

これまた謎多き原住民も居ない。

居たら居たで困るが、

居なきゃ居ないで寂しい。

そういうものだ。

それと、その他ゲームや小説、漫画なんかでよくある記憶喪失設定も無いらしい。

この状況だったらむしろ救いだろう。

一応、何かあった時のために

自分の情報をメモしておきたい。

ついでに荷物の確認もしておこう。

俺は砂浜のすぐ近くが森になっていたので、しっかりした土の上に移動してから

慣れた手つきで運良く背負ったまま流されたらしいリュックサックを開いてみる。

どうやらペンも紙もジップロックの中に入れていたために無事な様だ。

良かった。本当に良かった。

母親の影響で、何でもかんでも取り敢えずジップロックに入れて小分けにする癖をつけておいて。

正直このどうでもいい(悪?)癖に

ここまで感謝した日はないだろう。


さて、気を取り直してメモに入る。


_俺の名前は誉田ほんだ 九字馬くじま

19歳の男子。

ロシア人と日本人のハーフで

母親がロシア人、父親が日本人だ。

肌が白くて目の色素が薄い事以外、

特に外見上の特徴は特筆すべきものはない。

髪の毛は黒くてボッサボサだ。

美意識高めの母にはよく注意されるが

このボッサボサの髪は嫌いじゃない。

あ、ちなみに俺の名前のクジマって言うのはロシア人名で本来はКузьмаって書く。

九字馬って言うのは完全に宛字で、

宛字の由来は競馬の馬名がカタカナ九字までだから、と言う救いようもない適当な由来。

当初の名付け親こそ母だが、宛字自体は父が考えたんだそうだ。許さん。


経歴も特に異常なものは無い。

小中高と普通に通った。

ちなみに部活は物理部。

タイピングには自信があるぜ。

まあ、今の状態だとクソの役にも立たない。

ちなみに19歳だが、就職も進学もしていない。

と言ってもフリーターとかニートでも無いから安心して欲しい。

浪人生だ。

言い方変えただけじゃんとか言われそうだけど、

難関大学を受けて落ちたのだから親の了承は得てる。

一浪で受かってみせると次回のセンター試験に向けて猛勉強中だったのだが、

今回はその息抜きで母の故郷ロシアへ旅行へ行き、ブッシュクラフトという遊びに行く筈だったのだ。


ちなみに俺は多趣味で

音楽とか読書とかを

こよなく愛する反面、

サバゲーとかも大好きだ。

ちなみに行ったことは無い。

いつかは行きたいけど

さっきも言ったとおり受験生で両親に迷惑をかけてる身の上な以上

アウトドアな趣味に走るのははばかられる。

つまり俺は現状

超インドア系男子。

見ろやこの筋肉。

あ、見る程ないわこの筋肉。

だが、知識はある。

サバゲーをエアガン持ってガチなサバイバルをする遊びだと思っていた頃に付けたサバイバルの知識が。


しかし、サバイバルするにも道具は必要だ。改めて俺は道具の確認をする事にした。全部無事だったらいいのだが。

再度リュックサックを開いて中を見てみると____

メタルマッチ

ライター

なた

シースナイフ

ロープ

折り畳みののこぎり

携帯スコップ

携帯浄水器

サンチャージャー

サバイバルブック

双眼鏡

寝袋

着替え

手拭い

1週間分の食料

そして例え圏外だとしても

ライトとか時計として役に立つ

スマホ…!

俺は狂喜した。

「…僥倖…!!!」

某漫画の台詞がついつい出てしまう程に。

まあ、誰もザワザワしないのだが。

それでも親戚の女の子に「クジマは大袈裟だね。」なんて言われるほど持ってきた荷物がここまで役立ちそうなものばかりとは。

俺のチキンハートに感謝だ。

しかし、1つどうしても確め無ければならない事がある。

それは以前人が住んでいた形跡についてだ。

正直な所水の確保は死活問題だし、

シェルターも欲しい。

と言うかシェルターに何日もいると気が滅入る為に安定した居住地が欲しいのだが

ログハウスを1から作るのは骨が折れるので

せめて基礎でもあれば手間が省けるだろう。

夢もへったくれもないが生き抜く事をメインに考える以上、楽なのに越したことは無いのだ。

まず、人の居た形跡を見付けるのに手っ取り早いのは“家畜”を見つける事だ。これらの動物が自分から島に住み着く可能性は極めて低い。

かつて人がいたという証拠になる。

それと、もう一つ直接人工物を見つける事。言わずもがな、動かぬ証拠という奴だ。

時間は12時18分。

中途半端だが、日没まではまだ少し余裕がある。

探索に出掛けることにした。


____暑さを避けるために密林に入って2時間後。


「マジかよ…せめてなんか川とかあってくれたら嬉しかったんだけど。」

驚く程に何も無い。ここまで何も無いと気が滅入ってくる。小動物や鳥などは見つけられたが、家畜等は見つけられる気がしない。

同じ景色ばかりが続く。一応鉈で通った木に傷をつけながら歩いているので迷う事は無さそうだがいい加減飽きてくる。

せめて何か。何かないだろうか。


そう思った時にふとあたりを見回すと、何かの気配がした。

その正体が何かはハッキリ言って分からない。

しかし、大変な寒気、そして恐怖を感じた。

ガサゴソと草の根を掻き分けて出てきたのは

____紛れも無く獣。

鋭い眼光で、今にも俺に飛びかかってきそうなソイツは綺麗な白銀の体毛をしていた。

逞しい体躯に凶悪な爪と牙を携え、

ジリジリと四本足で歩み寄ってくる。

サバイバル生活1日目にして死亡か…

これから起こりうるであろう残念な未来に、せめて食い散らかさずに綺麗に殺して欲しい。

そう願った時。

白銀のソイツの異変に気付いた。

どうやら、その綺麗な毛並みの下に

大きな傷を負っているようだ。


しかし、例え怪我をしていたとしても

俺よりは速いに決まっている。

豚でさえも某陸上選手よりも速いのだ。

勝ち目は無い。

だが、1個だけ手段を思いついた。

俺は即座にリュックサックから取り出したそれを白銀の獣に投げ付ける。

案の定白銀の獣はその餌に食いついて夢中になった。

その隙に俺は一目散に逃げ出したのだった。


暫くすると俺はハッとする。

正直人生で一番走ったかもしれない。

が、鉈で印をつけ忘れた。

「大失態だ…!!!」

だが、戻る気は失せている。

と言うか初めから無い。

食われに戻るようなものだ。

大体犯人は現場に戻ってから捕まるが、

獲物だって元いた所に戻るから捕まるのだ。


それはそうと随分と森の奥に来てしまった。ちょっと薄暗くて気味は悪いが涼しくもある。ちょっと肌寒いくらいだ。

季節的にはとても嬉しいが雨が降った時が怖い。後、日も傾いてきた。

「…今夜はここで野宿か。」

諦めにも似た溜息と愚痴を交えて言葉に出した瞬間、もう少し奥の方に何かを見つける。気配は無いので恐らく動物ではない。と言うか寧ろ何か建物のようだ。

でかい岩だったら絶望に打ちひしがれるだろうが、まるで成形されたようなシルエットに俺の期待は膨らむ。

背の高い草を掻き分けてそのシルエットに近付いたのだった。


____そこにあったのはブロック塀的な雰囲気の家というか簡素な小屋のような建物だった。

ドアは無い。

屋根も無い上に草が生い茂っていて何があるか分からない。

しかし、もう日が暮れている。

これ以上の探索は無理だ。

そう判断した俺は近くから適当に石と

板状になってる木片と枝を集めて、

焚き火を入口の所に設置するとメタルマッチで適当にノコギリで枝に傷をつけた際に出た大鋸屑おがくずに火をつける。


そして寝袋を取り出すと、

____泥のように眠った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ