有り難き受難
「おい、そこのお前!」
明人は、目の前で女子大生に絡むナンパ男を睨みつけた。
「俺の女に手を出すとはいい度胸してるな」
にじり寄りながら、男にガンを飛ばす。
「ち、なんだ、男連れかよ……」
明人の気迫に押された男が、掴んだ女子大生の腕を離す。
「人待ちなら、そう言えよ、ばーか」
ナンパ男はぺっと唾を吐いて、そそくさと人混みに混じっていく。
「あの、ありがとうございました。助かりました」
絡まれていた女子大生は、明人に向かって礼を言う。
「良いって良いって。困ってたんだろ?」
「本当に何て言ったらいいのか……」
心底ホッとした顔の女子大生に明人が笑顔を向けた。
「もういいさ。んで、君の名前は?」
「葉山友梨佳です」
「友梨佳ちゃんかぁ。いいね、可愛い」
明人は彼女の手を掴んで人混みの中を歩き始めた。
「え、あの、どこへ行くんですか?」
「ん、もうちょっと先」
繁華街から逸れた細い通りを2つの影が行く。
「あの、ちょっと、ここは……」
友梨佳が声を上げたのは、ホテル街に入ったからだ。
「助けてあげたんだから、お礼はしなくちゃでしょ」
そう言って明人は見知りのホテルへと友梨佳を連れ込む。
「心配しなくていいよ。一晩で解放するから」
にっこり微笑む明人を友梨佳は呆然と見つめた。