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二時限目:立体魔法陣の基礎

今回は高次魔法陣および立体陣の授業を行います。


高次魔法陣は魔法陣の主となっている陣からどれくらい離れているかを表すものです。

一つの魔法陣からいくつ魔法陣が連結されていてもすべて二次魔法陣となります。二次魔法陣から連結しているものが三次魔法陣となります。

四次、五次と繋がって行きますが四次以降は一次に影響力が低くなっていく事も覚えておいてください。主陣に対し二次魔法陣は約三割程度影響し、三次魔法陣は約一割以下です。

魔法陣の中心からは放射状にエネルギーが出ます。連結しているのでお互いに放射したエネルギー同士がぶつかり合い衝撃が発生します。これを利用して同調させることにより効果の高いものも生み出せます。逆に不和をさせる事により効果を減退させることも可能です。


三次魔法陣は一割以下しか影響しないと言いましたが分かる人はいますか?

「距離が遠いからじゃないですか?」

正解ですが答えとしては不十分です。

シクロヘキサンの模型を用意しました。椅子形が安定するのは学びましたよね。これと同じように連結魔法陣にも安定する形と言うものがあります。


適当に映像化したものをスライドに映した。これのおかげで土日を失ったが、我ながら傑作とも言えよう出来だ。本格的なものはプログラミングができないので自力でやるには何ヶ月も何年もかかりそうだと言う事で諦めた。


前回やった六角陣の一位と二位に陣が隣り合って結合していたとします。これを発動すると主陣の結合部分が動きます。これは空中に書かれた魔法陣は安定する形へと変化しているからです。これをちょうど横から見るとY字になっているのが分かりますか? 今回は六角陣と同じ放出量のものを用意しましたので、等間隔になっていると思います。主陣から二陣までを1とすると主陣から三陣まではルート3離れている事が分かります。

今やったのは、理想値を用いて動画にしたものです。今度は円陣を打ち込んだものを見て見ましょう。円形の陣では結合位と言うものが存在しませんので円に沿ってどんどん動いていきます。そして十分安定できるようになった時発動します。

距離が一定以上離れる事により魔法陣は安定して発動する事が出来ます。この性質を利用して時限式魔法陣を作る事が出来ます。実際は魔力伝導性の考慮した素材や陣の保有魔力量など様々な抵抗を受けるため、結合線に補強することが必要になってきます。


実際に見て見ましょう。

ここにコップがあります。ペットボトルの中には水が入っています。今日はちょうどいい素材が提供されましたので、合成銀を使用します。錬金術の授業で余ったものです。動きが早いので動画を取る人は準備してください。


提供されたというのは正しくなくて、処分に困っていた錬金研究室の準教授から少しいただいたものだ。決して無理やり渡されたものではなく、あくまでもいただいたという体だ。欲しい量よりは多めだったがあっちも処分できるような量になったと喜んでいたし、なにより恩が売れたのがとてもとても。そういえば感覚が麻痺していたが、そういえば授業を映像化するなんてすごいよね。授業を撮るなんて考えなかかったなー。そんな発想無いし、自分の学生時代はそういう系の持ち込み禁止だし。


準備ができたようなので始めます。

前もって少し準備しておいた魔法陣を使用します。この陣は第二魔法陣となります。

今から第一魔法陣を空中に描き連結させます。銀に魔力を込めます。ここからは集中力が必要なので黙って行います。

スティックに魔力を。陣十七センチ、転移、文字、安定性、魔法の形、魔力移動のイメージ、肌で感じる温度と湿度、連結後の関係性、魔力の逃げ道――連結。発動まで約三十秒。

これで完成です。もう少ししたら、――発動しましたね?


少し黒みがかった銀色の魔法陣からは、ジョボジョボと音を立ててコップに水が注がれる。魔力調整に少し失敗したため、こぼれている。バットとかもてくるのだったなあ。そういえばタオル何枚かあったし、大丈夫って事にしよう。幸い二百ミリのペットボトルで助かった。五百の奴が売り切れてラッキーだった。タオルをカバンから出し拭きながら授業を続ける。なぜだか目線が定まっていない。決して焦っている訳ではありません。本当ですよ? ここ重要なところです。テストには出ませんけれど。


えー、魔法陣は先ほど見ていていただいた様に形を変えて発動したのが分かりましたか? 銀の魔法陣は魔法伝導も優れているため大まかな形の陣であれば、自分自身で勝手に変形してくれます。魔法陣の主陣は書いてから発動が早いため、副陣は先に書かせていただきました。副陣だけで発動はしません。副陣には触媒と生贄の両方の性質を持たせるため、楕円となっています。この楕円はふたつの魔法陣を組み合わせた重複陣となっています。


重複陣は二つ以上の陣の一部を繋げた陣になります。

相乗効果を狙ったものが基本的な目的となります。

中心には高密度な魔力が発生します。その影響で魔力の放出方向が単体の陣と異なるので副陣を結合するには注意が必要です。連結を固定したり、結合部位を増したりする事で強固な結合で連結陣にする事が出来ます。中心から逃げていくように放出するため、位置は最も影響しにくい所に形成しなくてはなりません。放射方向については棒磁石の磁界をイメージしてください。流れに沿って連結することにより、エネルギーの流れが阻害されにくくなり、結合線への力を受け流せる形となります。

三つ以上の場合はエネルギーが同調し高いエネルギーが発生するため連結陣の現時点での作成は不可能です。副陣の効力がかき消される点と結合線を耐える形になりうる事が出来ない為です。


ここからはとても重要な事なので覚えてください。

高密度の魔力は人体に影響するので触れないようにしてください。見た目は火傷や凍傷のようになり、手が全く使い物にならなくなります。全治一か月ぐらいで最悪壊死もありうるので実習を行う時は細心の注意を払って行うようにしてください。


重複陣の強さは陣同士の相性によって発動するか否かを決定づけます。

お湯と水程度の差なら発動しますが、お湯と氷になると熱エネルギー差が大きいので発動しません。一つの陣でコップに入っている水を移動させるのに対し、複合陣はコップごと動かす様なものです。

複合陣で無くてもコップごと水を動かせるじゃあありませんか? と疑問に思いますが、その通りです。

複合陣のメリットとして、陣自体をコンパクトに出来るという事です。

必要な情報を重ねる事が出来るという点と共鳴し合い互いの効力を高めます。それにより省く点が点在してきます。一つ当たりの陣の大きさが小さくなるという訳です。

重複陣を先に勉強したのはこれから出る立体陣にかかわる事だからです。

立体重複陣は形としては簡単です。円柱をイメージしていただければその上下の両底面のように重なった形です。これと重複陣の違いは同じ陣を用いる事が出来るか出来ないかです。同じ陣を用いる事により同調性を高めて強力な効力を出せます。また、円柱で言う母線の部分から結合しやすいため、結合を用いるにはこちらの方優秀という事とともに距離により魔力同調性を調整できるので利便性に関してもこちらが上です。どうしても上下に幅を取るため、サイズに関してはこちらが劣ります。


銀が余っているから講義の理解を深めるために陣を書きたいな。でも始末書はちょっとなー。スライドだけじゃ物足りないし、なによりこの薄暗さが眠気を誘う。貰った時に申請しとけばぎりぎり間に合っただろうが、スライドでも十分だと踏んでいたのが悪かった。次回の講義は少しばかり遠いしなあ。今日の所は我慢してもらうか。実習でやる前にでも見せようその方が身になるかもしれないし。今日はやらない。決定。


希望者が多ければ複合陣の実演を後日行います。


そう言ってしまったのだ。

もちろんのことその後の結果は言うまでもない。

休日は一日返上だな。


そう後悔しながら今日の講義は終了した。

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