(2)
辺に結合する魔法陣のデータの再確認。
こんなものかな?
いや、ここが分かりにくいかな?
うーん……。
あと一時間くらいで来そうだな。
必修科目終わりそうだし。
それより先に予習するデータを作るべきか?
もう少し手を加えて教えたい部分が……。
それは無いな。面倒だし、間違えて覚えられても困る。
急いては事を仕損じるは今日の教訓としよう。
今のは嘘で、もう終わっている。
本当はこんな事、しないでもいいくらいで。
カタカタとキーボードを打っていないと落ち着かない。
ちゃんとしたものを渡せているか、ちょっとした強迫性障害だよな。
鍵とか閉め忘れたのか気になるし。
当然、二、三回確認はする。
暇だしコーヒーでも入れますか。一つ伸びをして立ち上がる。
学生が所有している家政婦とかメイドとかそんな物が羨ましく、欲しくなったりする。
当然、雇う余裕など無い。
それにここは学業区域なので雇っても来られない。
学生の居住区にはいるみたいでちょっとだけ羨ましい。
可愛くなくても、戦闘できるカッコいい紳士じゃなくても人を雇って何かをさせるのはどんな気分なのだろうと好奇心だけはある。数日で飽きそうだけれど。
沸かしている間、本の整理をしていると読み直したいと思っている本が出てくる、出てくる。
とりあえず読みたい本は山積みにして、残りは詰め込む。
増設は近々しないといけないだろう。
四部屋に分かれた研究室は本棚で一杯になりそうだから、いらない本は処分しなきゃいけないなーと思う。
思うだけで進まないと思うけれど、何かしら理由をつけて倉庫か書庫でも貰おうかな? 空き部屋はまだあるはず。
あとは、あとは――。
おとなしく論文でも書こう。何かしら実績でもあれば違うしね。
テーマは『魔法陣学の今後』かな。
魔法陣学は僕の中でもうとっくに終わっていて、旧世代の遺物だ。
パソコンで陣を作るプログラミングで形を決めてそれを作る。
パソコン一つですべて終わってしまう。
完璧なものはスパコンが必要になるけれども、理論はパソコンと言う名の箱一つで完成してしまう。
高スペのパソコンだったら、ある程度の魔法陣は容易に作成と発動がされる。
スマホでさえ外部メモリーがあれば簡易なものは発動できる。
つまりは人が魔法陣を考える時代は終わっているってことで理論は完結した。
それだったら現代魔法を作った方が有意義って物だ。未来がある。
それでも、未だに使用価値があるのでこの状況である。
陣を刻めば出来上がり。紙とペンがあれば最低限のものは出来る。簡単だね。
ここでいったら、壁紙に描かれているものがそうだ。これで気候の安定化に一躍買っているみたいだし。デザイン性的にもアリなのかな?
応用なんていくらでも思いつくが、僕はもう疲れた。
それでもちょっとした愛着はある。
だから後は生徒に、誰かに任せようと思う。
そう考えていたら、コーヒーはすっかり冷めていた。
いつの間にか寝てしまっていたようだ。
来場者名簿は――なし。
珍しいが、面倒くさい実習でもあったのかな? と今日の講義室の使用申請を見ると、やはりなと、今日はもうヘトヘトで来られないだろう。そう思い、電源を落とした。
今日はもう宿舎に帰ろうか悩んだ末、もう一休みしてから戻ることにした。
プルルルルルル
電話が静かな部屋に鳴り響く。
歩いて十数歩、1分とかからないこの距離が嫌だ。
留守録に任せよう。
重要なことなら、誰かここに直接尋ねに来るだろう。
それじゃあいいか。
「はい。こちら魔法陣研究室の――」
相手の四回くらいのコールで出られたと思う。
どうも鳴っていると落ち着かない。
「――はい、分かりました。それではよろしくお願いします。失礼します」
すっかり忘れていたが荷物が届くのは今日だったか。
時間も遅いし、取りに行くのは明日だな。
今からだとギリギリ受け取り時間には間に合うけれど明日って言ってしまったし、それに。
「疲れましたぁ―。あっ、冷めたコーヒー飲んでるじゃ……やっぱり。入れ直しますから下さい。」
「それよりご飯の方がいいんじゃない? 少し早目だけれど」
「そうですね」
体はもう新しいバイオリズムが形成されていた。
自分であって自分で無いそんな別なものになっていた。