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龍の爪を穿つ

「はああああああああああああああああああああ! 目を覚ませええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」


「ぎゃああああああおおおおおおん!!!!」


「ふぅ――――――」

龍の指についていた硬い爪は崩れ落ちて体液が先っぽ漏れ出る。

防御に回す分は最小限にしている為、一撃一撃が重い。

体より心が痛い。

数時間しか戦えてない。

長く少しでも長く。


竜子は必死に抵抗しているんだ。

僕が諦めてどうする。

幾ら言い聞かせても諦める思考は払しょく出来ない。

助けたいからといえばそれで自分を含め周りも納得はする。

それは甘えじゃないのか?

誰かを助ける事が出来るのは強い人間だ。

そして、考えない事。

僕はどっちも出来ない。

僕は弱い。

暴走から取り戻すんだ。


龍の咆哮に辺りは龍のにおいが充満する。

鼓膜は爆音で痺れる。

自分の声の音量はそれよりも遥かに小さい。

届いてないかもしれない。

けど、叫び続ける。

僕の最強の対抗手段はこれだけ。

教壇に立ち続けただけはあるという位、声はまだ枯れることは無い。

声だけが未だ元気だ。

血反吐が出ようとも必ず

「りゅううううううこおおおおおおおお――――!!!!。しっかりしろおおおおお――――!!!!!!」

助ける。


聞く耳持たず。

少しも動揺はせず。

僕への攻撃は止む事は無い。

か。


ちっ、ポケットに入っていた噛み魔石も切れた。

覆い隠していたはずの痛みは、魔力で無理やり強化していた身体は悲鳴をあげさせる。

これ以上やりあって魔法の加護が切れたら人としての原型を保てなくなるだろう。

ここまでと僕の全てが語り、悟る。

戻る兆しにもなれなくて。

予想以上にダメだったなあ。

本当に。


諦めきれないだけの僕がそこにいて。

ただ、八つ裂かれるのを待った。


覚悟をしていた僕の目の前に首が落ちる。

その重量に似合ったドスンという音を立てる。

切り口からは壊れたホースの様に血が噴き出て、その絵の具の様に濃い液体が僕の顔にも引っ付いた。


剣に着いた血を布で拭き払い、青年は鞘にしまう。

「僕と直接話すのは初めてでしたっけ? 魔法陣学科講義以来ですか? お久しぶりです。ってそうでもないかな。ねぇ。兄さん」

「どうも。お前も俺の後ろで隠れていないで出てきたらどうだ?」

「……」

「こんな怪物ごときに殺させる訳にはいかないのでね」

「計画に支障は無い。それよりも早く終わらせて仕事に戻らないと怪しまれる」

「そうだね。兄さん」

「じゃあ封印の方よろしく」

「……ごめんなさい」

「お前、こっちで教えを受けて情でも出たか? 殺す訳では無いからそんなに気に病むな。お前は優しいんだから」


「父の為、よろしくお願いしますよ。せんせー」


この日をどんなに待ち望んだか

僕たちがこの計画にどれだけこれに時間を費やしたか知る由もないだろう

そう、君が魔法陣を語るずっと前

君が目覚めてからずっと見続けてきた

誰よりもね


父上は殺された

記憶を全て抹消されたんだ

理由なんて知らない

調べられる手段も無い

それも、消されたのだから


君に恨みなんてないよ

いや、恨む相手もいないから――君を恨んでいると言っても間違えではない

だって、いないから

他にないから


でもね

僕たちはそんな事で動いていないんだ。

損益なんてものはこれっぽちも求めていない

ただ

唯一の遺産は使わないと、報われないだろう?

遺産と言っても、手記の走りだけど――


これでよし


誰も傷つけないし

君がいない事に誰も気が付かないから

安心して、ゆっくりお休みください


三人組は去っていった。


潰された肩で腕は支えることは出来ず、立ち上がれない。

肉をえぐられた太ももは力が上手く入らず、立ち上がれない。

脇腹に出来た深い傷で呼吸も上手くできなくて全身に力が入らなくて、立ち上がれない。


這って進む。

ずるり。

血で滑って。

ずるり。

前へ。

ずるり。

前へ。

ずるり。


残りの魔力は全て体から流れ出た。

竜子の首が落ちた時点で僕の精神は崩れ、魔力と血と一緒に流れた。


痛い。


痛くて、苦しい。


体が、心が。


僕の周りはガラス張りの牢獄で封印されている。


何をするのでも無く、何が出来るのでも無く。


体を持ち上げ、ガラスを掻く。


竜子はどうなったか?

助かるのか?



外に出る。その一念で掻き続けた。

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