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二十時限目のピエロと赤ひげ

「相席、良いですか?」

「どうぞ」

座った直後に真後ろの席が空いたが僕は言うことは無く、彼もまた気が付いているだろうに表情をピクリと一瞬動かしただけで立ち上がることは無かった。

「その本」

「これですか?」

「僕もこの本好きなんです」

「へえ」

会話終わり。

いつもならここで終わり。

思っているものをそのまま口に出せばいいじゃないかとしたのが始まり。

そのせいでだらだらと話せる癖がついてしまった。

それが見ず知らずの他人でも。


「ちょっとゴメン」

生暖かい感覚にテイッシュを押し当てる。

赤色がしみ込む。

「大丈夫ですか?」

「ああ。さっきの講義前に急にね。傷がまた開いたみたい」

「良かったら使います?」と彼はハンカチを差し出す。

「直ぐ止まると思うから大丈夫」

「でしたら塞ぐためにも使ってください。僕も良く使いますから」

半強制で手渡された布は傷の修復魔法がかかっているものだった。

「ありがたく使わせてもらうよ」

「はい」

深くもたれ掛かり鼻の下に軽く当てる。


魔法生物学の魔法遺伝子について

大まかに先天性を有している物と後天性を有している物に分けられます

先天性は誕生して保有している魔力

細胞は二十代前後で全てが無くなり、通常ある細胞と同じ働きをする

後天性は魔力の貯蓄も担う

生涯で誕生と死滅を繰り返す

両遺伝子の数は決まっており、魔法区外の者との間の子には顕著な差がみられる

……

魔法の最盛期は人の年齢で十代後半相当

三十代で最終期となりその後の魔力量が決定となる

これを統計化したものを――

……

「大丈夫ですか? 鼻血、垂れていますよ」

「え? あ、ほんと」

講義中に鼻に詰め物はやりにくいしカッコ悪いなあ。

手近にあったティッシュで押さえつつ本に戻る。

聞き覚えのある名は――そうだ。前の学園の教授で似たようなのいたな。教員職員名簿で見かけた気がずる。

自分の名前を付ける気分はどんな気持ちなのだろうか?

恥ずかしくは無いのだろうねきっと。

それの数値化したものを種族別に比率にした法則を――の法則といい、魔法健康指数の値として使われている


「止まったみたい。ありがとう」

「いえいえ」

「ここの学生?」

「はい」

「悪い。そのー、雰囲気が違うから」

「そう言われた事無いですけど、なんか分かります。自分でもそう思いますから」

物語の主人公、お坊ちゃま学校、男子校、サークル、文化部ともまた違う。

限られた空間に集められた感じの別世界の住人みたいだった。


それっぽい。


「っぽい? じゃなくて本人ですよ」

「? ああ。君はミーハーじゃないの?」

「いえ、そんな事は。凄い方ですよ。ええ」

「僕なんかまだまだですよ」

「いやいや、ご謙遜を。十七歳でA1入りした天才じゃないですか」

「入っただけで全然勝てなくて今や落ちるのも最有力候補ですけどね」

「入っただけでも自分なんかが考えられない世界ですよ」

「僕なんかがここで生きていくにはこれしかないですからね」

ボードゲームの人類トップで希望の星なんて三面の隅でみた。

ネット記事も目にしたが複数人乗っていて誰が誰だか。

そんな小さなニュースでも覚えていたのは理由がある。

「ピエロだっけ?」

「涙腺が切れやすいみたいで集中しすぎると目から血が垂れる体質なんですよ。お恥ずかしい限りで」

「私、あまり好きじゃないんですよね」

「本人の前だぞ」

「だから言えるんですよ。なんだか苦しそうで、辛そうで。とにかく私は嫌なんです」

「……」

「つまりは、えー。もう少し労わって欲しい? って事です」

「あはは。クォーターエルフの限界ですよ。人から潜在能力を無理やり引き出しているから弊害が出んです。それにこれでメディアに売って貰っているので治療すると申し訳ないんですよね」

彼はにへらと笑った。


「何処か似てましたね」

「そう?」

「ええ、何かに狂ったように集中するところとか。類は友を呼ぶですかね?」

「だとしたら――」

「だとしたら、私もって?」

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