誰と居るかだけじゃなく何処へ行くか何をするかも
「次、焼けたぞー」
「美味しいね。竜子ちゃん」
「おかわり、持ってこようか? 竜子」
「竜子って呼ぶな。お前のせいだからな」
「ご不満なようで」
目の前に焼き立ての料理を置く。
僕がりゅうことかたつこかなって何気なく口にしてしまったからそんなあだ名になりかけているのだ。
のだが、どこか嬉しそうな気配がしたので特に罪悪感とかは無かった。
「そうだよ。君たち、若人だよね? もっとこう、さ。何かあるじゃん。海で泳ぐとかさ」
「場所と時期が悪いね。寒いし」
「ビーチバレーとか」
「疲れてて嫌です」
「砂浜で遊ぶとか」
「あー部活とかそんなイメージですね。竜相手にやったら過酷な修行っぽいですけど」
「もー、もー、もー。……っていうか何で普通に話せてるんですか! 私のアイデンティティ一つ意味なくなっているじゃないですか」
「慣れ?」
「慣れだね」
「そんなもの無くても可愛いという最も尊きステータスを有しているじゃないですか。それだけで十分です」
「うーーーーーーーーーー!!」
「青春的な事を期待してたみたいだけれど、ごめんな」
「いや。違うからっ!」
「教授ー。いい感じで乾燥しましたよー」
こーんこーんと乾いた音が砂浜に響く。
お偉いさんの息子とご学友の為、本日は浮遊している水生生物の骨の回収に休暇を取らされ来たのだ。
「何でこんな事しなきゃならないんですかー?」
「まあまあ。そっちが付いてきたのだから、愚痴を言わないで」
そういえば、疑問が湧かなかったな。
「貝殻はどうしますー?」
「んー。それも回収で―!」
大事を言えるのもボンボンの特権なんだなー。
「懐かしいですね。これ。小さい頃に自由研究でやりましたよ。教授も宝石作りですか?」
「そんな感じ」
「今更って感じですねー。買った方が安いし性能良いですからね」
「んー。求めるものが売ってなかったんだよね」
「??」
「全部砕いちゃっていいかいー?」
「どうぞどうぞ。私は粉が欲しいんで」
「竜子ちゃんはどうするの?」
「爪磨き用の研磨剤かな? お土産で喜ばれるんだ」
「粗目に挽いとくから、後は自分で調整してくれない?」
「ついででやってくれませんか?」
「……文句言わんといてくれよ」
「良いところですね。ここ」
答えずに旅館の部屋から僕はボーっと海辺の景色を見ていた。
潮の香は生物の死骸。
場所により海の香は違うのか? という疑問が浮かび、浮かぶだけ。
答えの要らない疑問が浮かぶのはは頭を使い過ぎて休むべきタイミングを失くしてしまった弊害か。
「ねぇ。同じ部屋でいいの?」
「ええ。襖を閉めれば二部屋みたいなものですし、せっかく皆で来たのだからのに二人だけなんて寂しいです。それにあなた方にそんな度量はないでしょう?」
「はいはい。それはなによりで」
「そして何より――二人がもう疲れて寝ていますし」
「夕飯頃に起こそうか」
「うん」
海の近くだけあって海鮮料理の夕食は美味しかったはずなのだが、期待が大きすぎた分だけ美味しさは減っていた。
部屋に併設されている風呂で軽くシャワーを浴び、窓から入る夜風に当たりながら再び景色をを見る。
二度目の風呂で肌の油分が抜けて、指先まで乾いた感じがした。
「どうしたの?」
「うん」
「懐かしい?」
「そうかも」
「ずっとここにいても飽きないくらいですね」
「いいや。そう思ったら今の日常に戻れなくなるから。帰るよ。うん」
「そっか」
眠くなったから僕は立ち上がり布団に入る。
枕はいつもより深く沈んで掛け布団は熱を持つ。
起きた頃には枕は枕の意を成さない背中にあった。
帰るという気を入れて眠気を飛ばすのだ。
「で、作ったものが、これですか? 空っぽみたいですけど……」
「ああ。魔力を入れる感じの器みたいな感じ」
「へー。面白いですね。何に使うんですか?」
「模索中だけど、しいて言うなら――魔力過多の人向けかなって」
「なるほどー。これに吸収させる感じかー」
「自己満足の観賞用だけどね」
「鑑賞ね……。もしかして誰かあげる人でもいるんですか?」
「ん? うーん。じゃあ誰かに送ろうかな?」
「きっと喜びますよ。これ魔法とか不純物が入ってないから綺麗ですし」
「好きな奴持って行っていいよ」
「んー。じゃあ、私に似合う色。選んでください」
「あはは……。中々に難しい注文で」
「ん、写真? これって……」
「安いお礼だよ」
「本当に。あんなに頑張ったのに。使う方は良いですよね」
「お礼は宿泊費で十分だったけどね。これを渡されたから思うんだ。
安くて吐き気がする」
『おにいちゃんへ
おにいちゃんのおかげできれいなほうせきがつくれました
ありがとうございました』




