瞳が映す世界は平凡か非凡か?
「角の生えた少女ですかね?」
「尻尾少女」
「なんで少女だけなんですか! 錯覚魔法がかかっているから見え方が十人十色のはずですよ? みんなして少女、少女って、ナイスバディな大人に見える人はいないんですかぁ」
尻尾を地面にべちべちと浮打ち付けたいた。
「……。君、笑いましたね。いいや、笑いました。仮にも年上だぞっ。バカにしてっ」
こっちを向いてにらみつけ、むーっとむくれる。
「決してバカにしている訳じゃ……」
「そのにやけた顔っ。見た目から年齢の事も想像していただろ! うー」
「はいはいそこまで」
「女! なでるなー」
「飴あげるから、落ち着いて」
「子供じゃなーい! 私は最強なんだぞぉー。うがー。やーめーれー」
本当に最強に成りうるので反応に困る。
世代を重ねれば重ねるほど元の血は薄まり、最弱という特徴は薄まる。
ましてや、好きな遺伝子を選べるというのだから強さを塗り固めれば最強になるのも不可能ではなく。
自分たちの元の血は無くせば手っ取り早いのだ。
そうなると自分たちは何者になるのだと、危惧した先代たちが一族を守るために五十パーセントを下回らない様にと管理しているらしい。
半分あればという考え方は人に置き換えれば微妙だが、元に戻せる唯一の後発的長所があってこそなのだろう。
「困ってないで助けれ、しっかり私の事を説明をして……」
彼らもきっと知っていてやってるんだろうなあ。
「余計悪、いい加減にしないと怪我するぞ?
――ってなんでうれしそうなんだよぉぉぉぉ!」
らしいのだが、きれいごとだけで終わることも無く。
恋心はそれで抑えられる訳でもなく禁じられた物に酔狂する不埒な人物もいるのが世の常。
それによって誕生した子は忌み嫌われるとそんな保守派が声を大にする。
何も考えないロボットの様に生きていければどんなに良かったかと彼女は言う。
言葉は形状が無い故にナイフよりも鋭くえぐるのも容易いなのかもしれない。
人生楽な道を通って過ごせたらどんなに良い事かと常々そんな誰も通った事の無い幻想を考えてしまう。
「お疲れさん。はい。コーヒー」
「……お前もまだからかうのか?」
「ミルクコーヒー。嫌だったか?」
「ふん。まあいい」
口を付ける。
「竜の怖さをよく理解しているな。
そんな事ないって事は無いぞ。
単純な力だけでいったら人の十倍以上はある。
見世物になっている者の飼育員もいつ働けなくなるのかとそんな不安と隣り合わせだ。
お前だって例外じゃない。
私が暴れだして瀕死の重傷を負うかもしれないのだよ。
何が起こるかわからないのだから、警戒心はその考えで十分だ。
貴様は他者を信用し過ぎる節がある。
私の事もそう思っているみたいだが、まあ嫌な気分ではないのだけれども。
もしもそんな奴に手を噛まれたとき立ち直れなくなるぞ。
畏怖に値するのは決して獰猛な生物だけじゃないって事だけは覚えておくように。
私はそれを嫌というほど見てきたし、自分も使ったから良くわかる。
それは身近な人物が牙をむく可能性だってある。
経験は――しているみたいだが、注意するに越したことは無い。
あの二人は不自然の塊だ。
疑念が無い。
心が完全に騙されているって感じだ。
つまりは今以上に警戒しろって事」
「優しいんだね」
「は、はぁ!? 今のを聞いていてそれ? んー」
「ずいぶん渋い顔をしているね。なんだかんだ言っていても面倒見良いよ。されるがままに二人の相手もしていたし。今だって自分の事心配してくれているみたいだし」
「調子狂うなぁ……。やっぱり君ってどこかズレているね。見てて飽きないけど」
「けど?」
「ううん。なんでも。見ていて飽きないよ」
「あれ? ここ、間違ってない?」
「うーん。あっ、本当だ。部分集合になってる。ええっと両者を空にするのだから――」
「こっちは今のところ僕はいらない?」
「ええ」
「あはは……」
今日も彼女は静かに座りぼんやりとしている。
遠くを見ている様で僕たちを見ている様な瞳は、そんなおぼろをぼうっと見ている。
あれだけ悪態をついていた彼女は、今何を考えて何を思っているのだろうか? なんて少しだけ考えてやめる。
そして、僕は先ほどまで座っていた彼女の隣に戻り、読みかけの本に戻る。




