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十九時限目の居候

「今日も相変わらずのコーヒー三昧ですね。お好きなんですか?」

「癖、みたいなものかな」

「なんですかそれ。まあいいです。本日もよろしくお願いします」

「よろしく頼むよ」

はいと元気よく四半竜人の少女は答える。


托竜一族は最も人に近しい竜人だ。

他の竜に比べると知能面、身体面、その他全てにおいて下回り、竜族最下位の種族である。故に血を守るため有精卵を托卵という形で他の上位種に育てさせて能力を盗み、時には交配して世代を重ね種を強化する。

というのは過去の話。

今はその風習の名残でホームステイ感覚で他種族との交流を図っている。

任せられる人物の消去法的に僕が選ばれたのでした。

断れないという決まりもあり、当分の日中は共に過ごす事になった。

寝床はワンルーム部屋とそこに寝泊まりさせる訳にもいかないので自分で準備して貰いました。

何かしたいというのでとりあえずは家政婦的なものや事務的な事などその時その時に思いついた事をして貰って紛らわせている。


「ひいひいお爺ちゃんの言った通りの人でした」

おじいさん?

「ええ」

思い当たる人物は無く、前の学園長は――似て無いか。それくらいの年齢の人物はいるはずも無く。

「覚えていないんですか……。そうですか……」

残念そうに言う。

言うからには思い出さなくては――。

「大きなリヴァイアサンです」

「え? あ」

池のあいつか。

「少し困惑しているご様子で。

 ですが覚えていたようで、ひいひいお爺様もきっと喜びますよ。

 今、嫌なところが似ているとか思いませんでしたか?

 優秀な遺伝子を竜為的に選べるんですよ。

 だから大体の魔法は手足を動かす程度には扱えるんですよね。

 今使っている心を読む魔法も。

 勿論、古代魔法から最新のものも使えるよ。

 そして君のやっている魔法陣もね」

読まれているのか。

「私の目的秘密にしといてもしょうがないですから言いますけど、

 人間の婿探しです。

 ほら見てください。ここです。ここ。鱗が固いんですよ。可愛くないですし。

 それに物事が同時にできる脳野も向上させたいですし。

 教授でも良いですよ? ねえ、どうですか?


 ふふふ。わかりました。保留にしときます」


数歩進めて振り向き、まだ言い足りなかったのか「そうだ、断ればよかったなんて寂しいこと言わないでくださいよ?」と微笑んだ。


久しぶりの僕の分野だ。

魔法物理化学。

魔法陣が使える。

楽しい。

楽しいとは少し違うか、気が楽だ。

普段より少しばかし狭い講義室は最後列の席までよく見えて、机の下で何かをしている動きも分かる位だ。

自分も学生時代は落書きとかしていた口であるし、気持ちは分からなくもない。

注意するつもりも無く、放任主義寄りかな。出来ないのは自己責任だが、出来るのであれば無問題。

一度だけで人の話を聞き理解するのは不可能に近い。

近いという考えに至ったのはそういった類の天才を多々、目にしてしまったからでもある。


余裕があるとそんな無駄な事を考えてしまう。

余裕というより慢心かなと、間違えた所を手早く書き直し訂正する。


相対魔法

魔法Aと魔法Bを魔法Cに見立てる。

魔法Aベクトルと魔法Bベクトルの差が魔法Cベクトルと考えることが出来ます。

異なる二つの魔法なので合成魔法と違い単純に加減法で計算できます。

最終的な方向予測も容易で任意に発生させることが出来ます。

これは幻術魔法にも応用され――


文字に書く事もいうなれば、目に見える物。

現物で見るのは刺激的価値が違う。

脳が文字もそれと同一以上の刺激として処理して観測できる人間は一種の才能であるのかもしれない。

そういった人は一度で物事を覚えてしまうのが天才なのであろう。多分。


魔法陣は高さの異なる光の柱を立てる。

エネルギーを組み合わせる魔法陣の設置。

移動させる自由度を高めてっと。

これで結果を変化させる。

それは幼い頃にやった日時計に何処か似ていた。

そんな簡単な問題でバカにしているのか? って思っている人は少なからずいるだろう。

分かりやすさの追求の最終形はこういったものにしかならない。

幼子にも教え説く人物はポテンシャルが高く、偉大だ。

頭の中だけで年相応に変換もしている。

どちらともなっていない自分は未熟だ。


「未だにこの程度のレベルのものをやっているのですね。

 残念ながら私が学ぶことはここには無さそうですね。

 でもまあ、人と話すのは嫌いじゃありません。

 なのでおしゃべり好きな女の子として、よろしくお願いしますよ」

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