情報共有施設ネスト
苦手だ。
変な恐怖感とやった気になれない。
百聞は一見に如かずと言いますが、聞いて極楽見て地獄の方でした。
「一旦休憩にしようか」
「はい。全然見つからないですねー」
「かなり、古いものだからねー」
「何してるんですか?」
「ん、ネストに繋いでた」
「ああー、私あれダメなんですよねー。脳に何か埋め込まれている感じで」
「いやいや。それはないから」
「でも、似たようなものでしょ?」
すべての文献はここ『ネスト』に全て存在する。
すでに紛失したものから最新のものまで、情報媒体で存在する。
その名の通りの動物の巣状、穴倉の様に無数に深く広がっている。
そこに眼鏡形状の魔道具をかける使って入り込む。
嫌がっている大半の理由は脳に直接情報が送り込まれる点だ。
その点は自分もよろしい感じは無くて、必要性があるからやっている。
資料があればそちらという現物派なのである。
宗教上の理由でやらない人は置いておいて、体に合わない人は少なからすいる。
二酸化炭素の濃度が上昇すると酩酊して魚は道に迷う。
多量の情報が脳に送り込まれるとここから抜け出せなくなる。
上限が設けられているものの、ここもそういう物なのだ。
「――っ」
「ちょっと見せてください。――限界ですね。ここまでって事で」
「まだ、出来ます」
「これ以上は。ここで倒れられても、迷惑ですので」
僕の方へ視線が向く。
「大丈夫だよ。あとは一人でやっとくから」
「バカですか? あなたも同じくらいやったのですから、休んでください」
「……。そうするよ。期限を延期して貰って、また後日という事で」
「……はい」
大きなため息を目の前でつかれた。
僕は間違えた。
気を付けていてもやってしまう。
魔力保有に関する健常者と非健常者の違い。
リミッターは健常者側にある。
責任感の強い彼は僕がいない場所で使うに違いない事。
僕の思考は時々不完全な場所で完了する。
後悔を生み出す機関は改善することが出来ないので注意レベルを引き上げるだけで終わる。
出来るはずなのに出来ない事は、悔しかった。
結果的にはベストな状態になったけれどもそれでは駄目だ。
お礼を口にするのはは大袈裟かな? 感謝の気持ちだけ。
礼服のネクタイを緩めつつ、いつもの集会所に入る。
「おーい、二人とも。まだかかりそうだから――」
もう少し待っててくれと近場にいた方に言伝た。
ついでにしわになるから上着ぐらいはハンガーにかけろと付け加える。
一つ頷くだけのアクションで理解したと判断して部屋から出た。
こんな時にタイミング悪いな。
後から決まったのは仕事の方ではあるのだが、並行してのモチベーションが伴ってくれない。
下げからの戻しや上げは難しい。
下げるものがあるという訳ではなくて、下げなければならないものがあった。
違う。
こんなこと思うやつだっけ?
自分は変化していた。
本質は変わらなくても、考え方が変わってしまっている。
こんなのは自分じゃない。
自分は――。
僕は誰だ?
調べ事のついでに目に入った論文にはネストと人格変化に関してのものがあった。
確かめようが無い一方的な暴論。
結論としては干渉され徐々に変化するというもの。
それは普段生活する上でも変化するのと違うのであろうか?
書き上げて眠りにつく。
目覚めると悪い事も良い事も忘れる。
これも変化だと捉えれば変化になるのだろう。
そうやっていつも通りの思考する自分に戻っていた。
人間は何があっても本質は変わらない。
自分も変化はしているし、退化もしているといえなくもない。
元に戻るのではなく、元のものに変わる。
そうあればいいな。
なんてね。
「今日も相変わらずのコーヒー三昧ですね。お好きなんですか?」
「癖、みたいなものかな」
「なんですかそれ。まあいいです。本日もよろしくお願いします」
「よろしく頼むよ」




