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レポート作成

「では、賢者の石の弱点とは何でしょうか?」

「質問を質問で返さないでください。私が聞いているのですが?」

「答えは無尽蔵に変化するのだし、その人の考え次第でレポートの書き方も変わるのだよ。だからこそ君の考えを聞いておかなければならないし。優先すべきは担当教授の参考資料だから聞くよりも読み直した方が早いのじゃないか? それと要は説得力。そこだけ何とかすれば力業でいけるでしょ」

「そんないい加減な……。こっちもそんな様な事しか書いてないですし」

「そのまま書いて、自分がどう疑問に思うかも書いてどう解釈したかストレートにまとめればいいじゃん。どうせ答えなんて必要ないし」

「ええ……」


「じゃあ、体験してみる? その鱗片を」

「え?」


手から光さえ吸い込みそうな黒い球体を出す。そこにヒビが入りまばゆい光が僕たちを包む。


「――ここは?」

「疑似賢者の石から作り出した疑似世界」

「でしたら、石を直接……ってあれ?」

「直接は触らせることは出来ないから――」

「いや、い、え? え?」

「?」

「この世界……賢者の石で出来るモノより凄いですよ! 何ですか! これ!」

昔のオモチャの様に握りこぶしでL字の腕を上下させる。

一般流通している賢者の石一つって事だろうか?

あっちにいた時はボーリングの玉サイズ以上のものを見たことがあって感覚がイマイチ掴めなくなる。一番でっかいのは岩でしたよ。ええ。それにつけられた値札。数字の後にある文字をゼロに換算するとなんとまあ凄い事で、自分の生涯年収何人分というレベルでした。売るためのものでは無くて客寄せの方が意味合い的に強そうですが。

動きと言葉から伝わってくる。

「興奮してるの初めて見た」

「言うてる場合ですか! どうなってるんですか、これ」

「うーん。実際は賢者の石使わなくても通常魔法で代用可なのだけど、というか魔法陣を使うよりも普通に作った方が早いし、タネを聞けばある程度の人ならだれでも出来るし、かなりショボいぞ」

「幻術でも見たことないですよ。これ」

仕組みは単純。

段ボールで囲ってそれに魔法をかけるだけ。

魔法陣で多少の維持。

中心にエネルギーが集中すれば相乗効果で魔法が強化。

大体こんな感じで、出来上がり。

「ええー、え、えー」

「な?」

「な? じゃないです。確かに口にするのは簡単ですが、誰にでも出来る訳では……あれ? 出来るのかな? ん? 革新的過ぎで頭がついて行かなくて、何が何だか……」

「思ったよりハリボテだよ。ハリボテ。衝撃を受ければすぐに崩れる。とりあえず、この世界の中で一度だけ願いが叶うから試してみて、レポートの参考にすると良いよ」

「頭の中がそれどころじゃなくて、レポート進まないのですが」


「あのっ。この願いって現実に持ち込めますか?」

「貪欲」

「……。そうじゃなくって、単純で純粋な疑問です。レポートにも書くかもしれませんし」

「う――ん。可能ではある……かな? そうなると現実世界で対価として賢者の石並みの魔力が要求されるけどね」

「……下手な願いをしたら、ここら一帯が飲み込まれるって事ですね」

「事です」

「それって、テロじゃないですか。爆弾並みじゃないですか」

「冗談だ。ある程度の対策は打ってあるし、最悪の場合でもこの部屋で収まるから。卵を電子レンジでチンする感覚?」

「どっちにしろ。テロっぽいのですが」

「しなければ、大丈夫」


「軽い」

「そんな願いでよかったの?」

「怖いですから」

「怖いって、多少無茶なお願いしても良かったのに。無茶と判断されれば、ほぼは不発で終わるから大丈夫だよ」

「ほぼ、ね」

彼女の願いは重力の軽減。

跳躍力が向上して僕の身長を飛び越えるくらいに――結構、楽しい。

ぴょーん。

ぴょーん。

ぴ……「気持ち悪い。酔った」

「私も、さっきから、そろそろ解除を……」

床は冷たく気持ちよさそうなのだが、顔を黒く汚しそうで付けなかった。

解除してから少しの間う動きたく無かったけど、飲み物。

「自販機、行ってくる、けど、コーヒー、でいい、かな?」

「やめでぐださい。死にますよ。水で」

「はーい。――おっと」

肘が壁にゴッと少しだけ心地よい音が響いたのだが、変にしびれた。痛みが後から襲う。よろよろとしながらコインケースを片手に廊下を歩く。


「落ち着いた所で……僕たちが今回の事で学んだ教訓は、願いは叶えた後も考慮した方がいいという事」

「違いない」

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