金色神速
『最速の一頭が決まる。黄金杯。君は歴史の証人になる』
「もうそんな時期か。今年も買おうかな? ねぇ、教授、興味ない?」
「うーん」
それに答えは無く。
自分に得になる返答は存在しえない。
自分に興味が元々な無かった物事を他人から勧められた場合、高確率により何も生み出さない。
強いて言えば、最初に上手い事断るのが正解かもしれないって事だけだ。
「買える年齢になったらまた誘って……」
「今回は僕の名前を使って、ね? 物は試しだよ」
僕は長考の為の先延ばしという愚策が失敗して困った表情をしていると
「ギャンブル好きな男は、女の子に良い印象は受けませんよ?」
横から興味の無い人の不愛想な意見が突き刺さる。
横槍って言葉がピッタシなくらい鋭さです。
言葉の冷たさに嫌悪も感じられましたけど。
「不愛想な女の子も男にモテないよ?」
睨みあう二人に「あまり、ね? そのー。一緒にやっている仲だしー、ね?」と仲裁を試みるが、
「優柔不断な奴はもっとだけどね」「優柔不断はもっとですけど」と一蹴される。
「あははは……。すみません」
矛先がこちらに向かったことで鎮静化へと向かう。
博打否定派は少なからず存在する。
自分はというとどちらにも属していなくて、さっきの言葉を借りるなら優柔不断である。
興味が出ていないというのが正確で、他にやることがあるから手が出せていない。
出したところでそれは自分に合うものか、合わないものなのか、未知数な部分が先に頭を過る頭でっかちな部分もあることですし。
まあ、新しい事に進まない事です。
腰を据えてやり込めば儲けることも可能なのも事実であるが、それに似合う労力であるか比較してしまう人物の否定論が強いのもまた事実。
損をするというのが存在する事。
――見送りで。
「オッズは三枠だけど、調子がこっちの方が……」
端末片手のその姿は周りと一体化している。
「マジですね」
「そうだね」
あまりの本気度に引く感覚よりも、邪魔をするのが悪いなって気持ちが先行した。
ついて行っての見学って事で中間点の案に落ち着いた。
それを聞いていたもう一人の方も付いてきたのでした。
大人しくなっているのは自分も含めて会場の不思議な雰囲気にのまれていたからでした。
事細かに、説明されたのですが、情報が処理できない。
聞き流すのは失礼なので無理矢理にかみ砕いているのですが。
「違いが分からん」
「いやいや、全然に違うじゃないですか」
「色?」
「そうですけど、そうじゃなくって、こう、脚の肉付きとか、毛並みとか」
「毛並みって関係あるの?」
「勿論じゃないですか――」
あー。もう無理かな。入ってこなくなってきました。
外集団何とかの原理って読んだことを思い出した。
にしても微小な差異は睨めっこでもしていないと難しい。
結局は流れていくのとほぼ一緒なのでした。
『黄金最速の名、グリンブルスティの栄冠にふさわしいのはどいつだ! 黄泉の淵競猪場よりお届けしております実況は――』
近くの食堂で食事を取りつつ、中継を見る。
会場を前にして中で見ないのかって疑問は僕たち二人の多数件により封じ込めました。
観戦席で間近で見たかった彼は不満そうではあったが、受け入れさせました。
あの熱気は人のいられる所じゃ無かったです。
決着はレイコンマゼロゼロ以下の世界で決まる。
スタートとゴールまでもレイコンマなのですが。
神速を超えた猪たちの戦い。
金毛、栗毛、桃毛などの色さえも見失う――色に意味あるのでしょうか?
まだ、早すぎましたね。僕には。
最後まで面白味が見出せませんでしたね。
はい。
「パドック? でしたっけ? を見にいった意味はあったのでしょうか? 何といいますか……」
「社会勉強という事で」
「あっ。はい。そんな感じで、はい」
色々な衝撃で思わず共通して共有する結論を求めたのでしょう。
そんな謎の一体感の安心感がありました。
「今日はどうでしたか?」
キラキラと輝かせた目をしていた。
「あぁ、えーと」
「「食事が大変美味しゅうございました」」




