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見えないもの

対価は血、対価は時間。

生えるは常闇の雄々しく醜き翼。

血肉を喰らい我の一部とせよ。

悪魔ノ力我ニ示サン。

羽(ウイング)


「どうですかっ?」

距離感がつかめていないのか、声量が少しだけ大きい。

「何故、片羽?」

「魔力量が足りないんですよう。でも、ちゃんととべてるじゃあないですかっ」

「詠唱魔法プラス魔方陣ね……」

自分がやっている魔法陣学を正攻法と言い切れないのですが、邪道ですね。

あの見た目がそんな感じをより一層思わせますし。

自分の趣味的には禍々しい羽よりはスタイリッシュで機能性を重視を推奨したいところですが、個々の相性もありますし――どないなものでしょうか?


目の前に着地する彼は随分とルンルンな気分なようで。

「で、どうですか?」

「そういわれてもなぁ」

「何点ですか?」

「しいて言うなら……七十五点以上?」

「何ですか、それ」

「七十五はアイデア料。残りは評価できない。詠唱魔法はその人次第だし――アイデア料というよりは基礎点と加点の内訳の方が近いかも」

「なんだよもー。せっかくちゃんと飛べるようになったのに、気分そがれるなあ」

「大変よくできましたっと」

「むー」


詠唱魔法の粗方はもう既に決まっている。

太古より存在するモノも確かにあるのだが、様々に分岐、分化した現代ではあまり意味をなさない。

ましてや、複合魔法に置いては半減する。

その人の気分を高めるものであれば何でも良いというものだ。

『とおぉぉぉぉぉ』とか『うりゃ――――――』とかでも良い。

最悪『ああああ』とかでも成り立つ。

詠唱魔法特化である場合は別であるが。

そんな理由により、魔法陣学との複合による進歩がよろしいものとは感じない。

先人が積み上げてきたものに対して申し訳ない部分もあり。

なによりも別物になる気がして嫌だ。

そういった進歩の物語は王道の方が自分の性に合うだけの事だけどもね。


「一言、アドバイスするとしたら……」

「はい」

「血も時間も対価に使っていないので詠唱を変えるか、破棄した方がよいのではないか? と」

「詠唱破棄って言いましたか? 聞き間違えでなかったら、全否定って事ではないでしょうか? それに、よくよく考えると一部を変えたら全体バランスの見直しもしなくてはいけないので、どっちみちダメって意味じゃないですか? そのー、代案は」

「……歌唱魔法とか?」

「それは、却下で」


昼飯の調達の為にキャンパス内を通過したと所、偶然に出会った。

「変なところで会いましたね。何をしていたのですか?」

「もう一人のサークルの奴に特訓を所望されて、見物?」

「私だけ除け者ですか……」

「いや、そういう訳では……」

「まあ、いいです。時間は空いていたのですが、私は私でそれなりに予定を今から作りますから」

「あのー、良かったら一緒に来ませんか?」

「それでは、二人でどうぞ。では、また」

「あっ、はい」

いつもの事であるから、彼が連絡しているものだと思っていた。

そうだからこそ、投げかけてあげる言葉が瞬時に出てこなかった。

悪い事したなという少々の罪悪感と人の心を理解するのって難しいな気持ちが入り混じりながら買い出しに向かうのだ。


「秘密特訓だから」

「なんだそりゃ」

「その方が、なんか響きがいい」

「秘密特訓でもサークル仲間なのだから連絡を入れておくように」

「それって、秘密特訓の意味ないじゃん」

「練習内容が秘密って事で。おーけー?」

「……はい」

「よし。それじゃあ特訓再開で」


指南とか指導をしているというよりは、施設利用するための監視人の名義借り。

そんな感じの立場なのでコーチングはしておりませんが、何か切っ掛け的なものを見つけられたのであろうか。

本と睨めっこしつつ、横目で見ていましたが、最後まで同じことを繰り返している様でした。

時間切れは限りがあるから存在する。

期待しているから、終わって欲しくないから、何かに対して、切れている。

それに期待ができるのなら「時間切れ」とは使わないで「時間になる」となるのだろうなぁ。

自分がどうこう言うのも可笑しいのだけど、この時間に意味があったのかな?

何か見つけることは出来たのかな?

そう、心配しているのだ。

人を心配するなんて事を久しぶりにしたものだから、気持ちの整理に少しだけ戸惑った。

気持ちを奥底から引っ張り出す感じ。

……忙しさにかまけていたせいか。

心の上辺が埋まっていた。凝り固まっていた? そんな感じだ。


こうして何かをしながらも余計なことを考えているのだから、自分の本質は何時になっても付きまとい変わらないのだとつくづく思う。


終えたであろう数日後、彼に会うことが立ったから結果を聞くとピースサインを出したから、僕はサムズアップしといた。


「男の友情ってやつですか? 反吐が出ますね」

未だにご機嫌は斜めの様で。

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