十七時限目と深く考えない
魔法学における生物資源学講座
魔生生物はエネルギー資源になりうる次世代エネルギーである。
近年エネルギー生産する犬型の生物が誕生した。
現在、開発主任の娘が管理飼育してている。
今後、一人に一体となる日は近いであろう。
本日の新聞記事より
社会福祉学
魔法界隈においても超高齢社会は問題である。
若年層のワーキングプアが増加傾向にあり、早急に解決しなければならない一つである。
働き手は増加の一方であり、老齢による引退も視野に入れるべきか議論は未だに決しない。
打開案として新しい学問を導入し、新たなる仕事の開拓にを――
公共放送 超高齢者社会に今あなたは何を思うか? 特番
時事ネタも織り交ぜつつの講義です。
――自分は何の先生なのだろう? 最近、分からなくなってきました。
『調子は?』
『面倒。もう、辞めたい』
『辞めれば?』
『冗談ですよぅ。本気にしないでください』
『資料まとめといたから』
『うん。ありがと。愛してるぜ』
『そう』
『冷たいな』
そんな事をメッセージしたりする。
最後に『無理するなよ』と一言だけ。
『それは約束出来ません』と返された。
僕は知っている。
伝える事は安くて、知る事は高い。
聞き手はどんなに博識や賢人が話していても疑念を持てば、正論といえどもその価値が砂で作った城の様に簡単に崩れてしまう。
信頼関係で成り立つのは確かなのではあるが、他人同士では価値は安くなる。
プラスは存在せずにマイナスだけ。
伝える事の難しさ。
それは何処まで行っても付きまとう。
それは素人の僕にとって尚更。
そして、知る事は何よりも敷居が高い。
新たな事を覚えるの言うまでも無く。
年々情報が増える現代で一を聞いて十を知るレベルで足りなくなっている。
知ると理解するの違い。
こうなると妥協は必須で、何処まで妥協するか。妥協してよいのか。
解決する事は不可能。
自分なりにやればいい。
こんな安い言葉でも、人により。
ケセラセラと取る人もいるだろうし、真意は自分の出来る上限かもしれない。
これらは自分と他人の価値観のズレであり、一生埋まることのない溝。見ないふりにしろ、働きかけるにしろ、それをどう克服するかが、どう折り合いをつけるかが、自分に対して最も効果的な方法だと自ら気が付かなければならない。
彼女達に一番元気づけられる言葉を今の自分は持ち合わせていないから、日常会話で心の内が見える素直さをぶつける事しか出来なかった。
たまっていたレポートを送る手続きを午前中にやっておきたいので、教務課へ。併設されている郵便窓口へと向かうと懐かしい人物がいた。
「貴方、確か……」
「どうも、お久しぶりです」
いい思い出が無いあの人とこんなところで再会したのでした。
「何でこんなところにいるの?」
お互いにこんなところという認識なのでした。
「いや……、まあ、色々とありまして」
「長い事いろんな人を見てきて、見る目は肥えていると思っていたのだけど、勘違いだったみたいだね。あんたは大成するタイプだと、そう予想していたのだけどね」
「はあ。そうですか」
「引き際が上手だのに。一体、何をやらかしたらここに来るものなのやら……。私みたいにたらい回しにされている訳では無いのだろうによ。はい、手続き終わり」
「よろしくお願いします」
「もっと、上手く生きなさいよ」
それが出来れば、人生はどんなにイージーゲームだったのに。
「私の事、嫌いかい?」
「どちらかといえば」
「だろうね。年上の私に臆せず罵れるなら、きっと大丈夫だ。頑張りなよ」
変な人に中途半端な応援をされて、複雑な気分になりました。
……今は何も思う所は無いのですが、変に思い返さない様に遅めの昼食に食堂へと向かう事にしました。
ストレスのリスク回避行動として、何も無いところでも余計な考えを出さないように体が動いてしまう変な癖がついてしまった。
仕事をしている時はいいですけど、何かがないと思考が動いてしまうのでした。
「何してんですか」
「何にしようか、悩んでいて」
「種類無いんですから、なんでもいいんじゃないですか?」
「どれも気が乗らないというか……」
「どうでもいいですけど、客の少ない券売機前でずっと立っているのは目立ちますよ」
「後、少しだけ……」
食券を三つ。
「そんなに買うのなら悩む意味、あるのですか?」
「まあ、いいじゃないか。気にしない、気にしない」
「はあ、そうですか。ところで今日の午後、都合は大丈夫ですか?」
「二時間ほどなら」
「彼女にもそう伝えときます。ではまた後で」
「午後の授業も頑張って」と見送った。




