少年B
「何か、ご不満でも? ここらへんでやっている店って学食しかないのですから期待されても困ります」
特に何も言っていないのですが、不満と言えば脈絡も無くそう言ってくることでしょうか?
僕としては飲み物が美味しいというだけで十分なくらいくつろげるので不満は全くないのですが。
飲み物だけ注文というのも芸がないので、本日のケーキというものを注文しました。
注文してから気が付きましたが、ミルクレープですね。
いや、嫌いではないのですが、クレープ生地というのが好きでは無い訳で。
食べて予想よりも美味しいのですが、全部食べるのにやや苦痛を感じます。
同じものを注文したので分けるという方向性も無理そうでした。
どうしましょう? ――全部食べますが。
そんなことを考えている間も話しは続いた。
中身は左から右に聞き流していたので自分の中に内容はそれほど残ってはいなかった。
その理由は中身がない話なのであるが、何よりもテンションが変だと感じたからだ。
「ケーキ苦手だった?」
「いえ、そんな事は……」
フォークで崩し始める。
話の切れ目がなかったので中途半端なところでそう言わざるを得なかった。
直観的にも止めなくてはならない気がした。
「落ち着いたので、少し歩きませんか?」
「さっきまで……」
「歩きたいのです」
僕に心配させまいとした行動なのであろうと、何も言わずに立ち上がる。
ここの湖畔は名所に指定されるほど綺麗である。
水面に写ると病が治ると言い伝えがありましたが、昨今の調査によるとそういった効力は無いと記事になった残念名所です。
おかげで人はちらほらさえいません事で。
「じとじとして蒸し暑く不愉快な場所ですね。こっちまで来なければ良かったです」
何と情緒の無い事を――と言いたいところですが、無視をしにくいレベルですね。
「戻ろうか?」
「いえ。もう少し、ここにいます」
意地っ張りだ。
そう思ったのだが、何処か遠くを見つめている目の横顔にそういった考えはなくなった。
「よいしょっ。今日はこれで帰ります。現地解散で。それでは」
やっぱり、いつも通りの自分勝手だ。
どちらが本物なのであろうか?
それはどちらも本物であるに違いないのだが。
結局、僕は何も知らなかった。
湖から北へ、歩いて行けるほどの距離にログハウスがある。
「いらっしゃい。ようこそ、僕の秘密基地へ」
気分転換にと誘われてきたが
「こんな所でやるの?」
という気持ちが分かるくらいに湿気がひどかった。
彼は見慣れない機械を手慣れたように動かすとあっという間に感じなくなった。
テーブルに置いてあった説明書によると湿度の安定化装置らしい。
前にいたところは施設的なもので一帯を管理していたので初めて見ました。興味あります。
「うーん……」
苦戦を強いられています。主に僕の方ですが。
魔法文字。
分からないこともないのですが、分かりません。
レポートの手が止まりました。
「どうしたんですか?」
「え。ああ――書いてあることは理解できるのだが、合っているのかが分からない」
去年の十一月に発行してるのでそんなに古くないはずなのだが、より良い方法が多々思いつく。
かといってこちらも間違っておらず、どちらが最適かと問われれば、それを証明する手段を持ち合わせていない。
もう一人のペンも止まってしまいました。
けれども答えは出ませんでした。
ここでは言いませんが、巻き込んでおいて申し訳ないのですが、どちらでも良い気もしてくるのでした。
「たまには課題ということで、後日までに私を含め簡単に自分なりの結論をまとめてくることにしましょうか?」
三人の中で一番近しい答えを出したのは彼でした。
勉強は学科生とそん色ないな。
これにて僕たちは一旦課題を止めるのだった。
手に余るような怪物を生み出してしまったのでした。
後世に残るような疑問として新聞やら雑誌にのってしまったのだ。
僕たちの簡単な疑問の答えは専門家達によって拡大解釈されて討論されることになってしまった。
僕たちは単純にどちらが良いと聞きたかっただけでした。
それ証明するとなると、別の話でした。
身近にいる担当教授が出来なかったのです。
はい。
結末は、それを証明できれば賞金がでるとの事でした。
僕たちの追える場所をゆうに通り過ぎてしまったのです。
自分らが見つけたもので使命感とかあるかもしれませんが、悔いが残る感じで止めてしまったのでした。
目的が違うと諭して止めさせました。
本当はやらせてあげたかったのですが、時間が余りにも足りなすぎました。
曖昧も大切と今回の一件で学びました。
僕は今読んでいる本に栞を挟まず、別の本を手に取るのだった。




