一時限目:連結魔法陣の基礎
ネクタイを締め直して襟元を整える。
教壇に立つ事はいつになっても慣れない。
ためらわない為にこの二段を一気に駆け上る。
授業内容を頭にもう一度確認。
ファイルの破損とかもなし、さて始める準備はOK。
大きく息を吐いて精神統一。
開始のチャイムが鳴り、「それでは始めます」と授業に入るのだ。
今日の内容は連結魔法陣です。
連結魔法陣はメインとなる陣とサブになる陣を繋げて、一つの魔法発動をするものと考えていただいていいです。
一つの魔法陣で行うには膨大な魔力や材料を必要とし、そして限界が存在します。
それらをサブの陣で補助することにより、コンパクトに陣をまとめる事が出来る事、素材の代わりに魔力で補う事が出来る陣を繋げると体一つで発動する事が出来る事、魔力の伝達率を上げる陣により少量の魔力でも発動が出来る事など様々な可能性が出てきました。
これにより、魔法陣学は難しく取っ付き難いものから、より便利に一般的に使える物に変化しました。
また、今まで理論上発動できなかったものも発動可能になりました。
今回君たちが勉強するのは、エネルギーの移動についてです。
これを頭の中で図形が想像出来ることで魔法陣の連結の理解を深められると思います。
魔法陣学はあらかたの基本を理解している体で進めていきます。
今回は六角陣を用います。用いる理由としては何処に結合するか分かりやすいためです。
そんなに難しい所に繋げる事はありません。
シクロヘキサンのように六角形を書き、これを基準の魔法陣とします。
中に6と書き着こんでください。
それを魔法陣内の移動するエネルギーとしてください。
それぞれの角に1~6の数字を振り、その角に連結した魔法陣を勉強します。
辺に結合する魔法陣については時間があれば今日中に、出来なければ後日プリントかデータで配布します。
1から棒を一本引き、その上に逆向きの三角を書きます。
三角の中には3と書いてください。
これが結合した状態です。
高校で習うような基礎的な分子の結合のようなものです。
しかし、これでは安定しない事は一ヶ月間学んだ範囲で理解できますよね?
上と下のエネルギー量が異なるので魔法陣が発動した時、うまく循環せず不発又は片方だけ発動となります。
六角陣の方が押し出すエネルギーが倍強いため、魔力で補助しながら発動させてもバランスが悪いため、陣自体が損傷又は破壊されます。
陣を書く素材が伝導性の最も高いものでも現段階ではこの状態で維持できる物はありません。
ではどうすればいいでしょうか?
「はい。上と下の陣を両方とも六角形にすればいいと思います」
「もしくは下に三角形をつけるとか」
では両方書いてみて実際に発動してみましょう。
それではそこの席に集まってください。
僕は紙を2枚とペンを持って前の机へ向かう。
皆が見やすい位置に集まったのを確認し、二つの紙を離れた位置に配置する。
片方にチョークを乗せて完了。
今から転移魔法を行います。
これには二連結魔法陣をそれぞれ書いてあり、上の魔法陣は物の転移する陣、下には魔法陣に利用する生贄の代わりになる文字を羅列してあります。
これにより生贄を用意する必要はなくなります。
陣や文字が生贄の代わりになっている解釈で良いです。
転移元の陣にそれぞれの陣に魔力を注ぎ込むと、ペンは移動した。
見て欲しいのは転移前の魔法陣で、インクで汚れています。これは外側だけ移動して中に達する前に陣が発動してしまったことになります。
では席に戻ってください。
僕は汚れた手を濡れティッシュ拭く。拭いたのち、リモコンで動画を映す。インクが飛び散り、白衣が黒くまだらになった物を見せた。顔にも飛びてって結構そのあとが『面倒くさかったなー』と思い出しながら見た。前もってやった派手目な失敗だ。
え―、こういった失敗はまだいい方です。
ペンのプラスチック片が飛び散り、目に入ったら危ないですからね。
そういった理由で魔法陣の図は今まで教えませんでした。
さっきの紙はそう言った事が起きないように、裏にもう一つ魔法陣が書いてあります。
安全装置みたいなものですね。
皆さんに今日お配りした教科書の裏側にも防御陣が印してありますので、教科書があれば身を守ってくれるようになっています。
回数制限はありませんが、使えば当然陣が消耗して不発になる事もありますので、気をつけてください。怪我をしない事にこしたことは無いですからね。
実習を行う場合、事前に教科書の所持を確認しますので講義中の安全の保証はしときます。卒業まで怪我をさせるつもりはありませんのでよろしくお願いします。
話がそれてしまいましたが――なぜこうなったのかは、魔力量の不足、コントロールの技量不足でもありません。
陣の結合に問題があります。
一つの細い線しかなかったので上と下の陣から陣への魔力の通行が不十分だったと考えられます。
これに対する解決方法の一つは、線を増やす事です。
二重結合、三重結合はやりましたね。
それに近い感覚でこれにも応用できます。
ですが最高の状態の効率を求めないと発動が不完全発動になります。
そこで三重でも足りない場合が多々あり四重五重という形になる場合もあります。
もう一つの回答として太い線にするということも出来ます。
これは砂時計をイメージしてください。
細く小さい穴の場合、下に全部落ちきるまで時間がかかりますが、太く大きい穴であればすぐに落ちると言う事です。
そういった理由で陣だけではなく結合する線にも何か表記をしなくてはなりません。
逆に線が多すぎたり太すぎたりと使わない部分が発生するため、そこを魔力で埋めなければならなくなり効率が悪くなります。
そのためにも少しでもこう言った事を頭の中でイメージできる事が上達する一つの手段だと考えてください。
六角陣の移動エネルギーを6とすると六角陣同士を繋ぐのに最高率の線は6必要です。
魔法陣式を使って表すと『六角形―6―六角形』となります。化学式の要領で書いてください。
ただ結合の間に数字が入るだけです。
そして魔法陣の移動エネルギーを陣内に書くと完成です。
両方の六角形の中に6と書けば完成です。
教科書には今日習った6-6の魔法陣のほかに、3-6-3の魔法陣、1の6個あるベンゼン型の魔法陣も書いてあります。
後で復習お願いしますね。
2の魔法陣は二重丸となっている事も合わせて覚えてください。
陣のエネルギーや線については名称が決まったのが最近なので、分かりやすいように見た目のままで決めていただきました。
自分の名前が付かなくて良かったです。
今日は口頭でのここで授業は終了します。
残りの時間はプリントをやってもらいます。
簡単な問題なのでちゃちゃっとやってください。
それでは配ります。
次回は二次元魔法陣と三次元魔法陣について説明します。