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E's memories/T's mind

流れゆく景色で、何も思うことはなかった。

全身茶系で一昔前のコーディネートは、どこか自分を奮い立たせる意味合いを含みたかった為であったが特に意味はなさなかったみたいだ。

ポケットにあったチョコを口に含むが、口の粘着きが不愉快で――景色を再び眺めた。


車内から外へは肌を刺すぐらいの痛みだったが、背に腹はかえられないと自販機へと向かう。

少しだけ悩んで、スポーツドリンクを買うことにした。


「はー、あったか」と声が漏れた。

暖房が効いていて耳まで赤くなりそうなくらい暖かい。

「やっぱ、寒かったな」と誰が居るわけでもないのにまたひとり言を、次が出る前に飲み物を流し込む。

「冷たっ」

こんなに甘かったかな? 普段こんなの飲まないからなあ。


「切符を拝見します」と多分言われたので財布から取り出した。

普段は鞄なんてものを持ち合わせないので少しだけ違和感があります。

それ以上に列車なんてもの乗ることもありませんけど。

「どこ行かれるのですか」とか「女の子一人は危ないので気を付けるように」的な無駄話もしてきました。

話すのが嫌だとかではなくて、確かに馴れ馴れしくて相手するのが面倒だったけれども訛りが酷くてニュアンスで聞き取っていた。

別の国に来た感じがする。

そうだったら、良かったのに。


眠い頭が冴える様な朝焼けの中、終着駅のホームに私は降りた。

自分が存在しない世界でも成立するって感じるのは、時が進むからである。

夜通し見た車窓の景色は流れた。太陽も昇る。列車も進む。

言葉上の表現がどうしても、どうあがいても前へ前へと進んでいて自分と比較してしまう。

自分とは違うから。

特別――だったら、どうなのかな?


私の他にも数人ほどそこにいて、何処かの雑誌で見た有名なスポットに似ていた。

すごいとは思った。それだけで何もなくて、すぐにホテルへ向かった。

そして、眠った。


夢を見た。

その私は、無気力。

今も無気力だけど、ずっと無でしかなかったのに絶望していた無気力。

閉じこもっている永遠の夢が夢の中でループする。

彼の言葉は結局、届かなかった。

あれから二週間後の自分はここにいた。

何故と問われれば、無いから答えられない。

四時間ほどの睡眠は体を余計にだるくした。


林が青臭くて不愉快で、木漏れ日がチラチラして不愉快。

これが、寝不足やらが無かったらどうなのだろうか?

美しく感じたのだろうか?


私はふーと長く息を吐く。

自殺しに来た訳ではない。

今、飲み物を飲んでいる。食べ物を持っている。

気が付いたら、死にたいという意思さえ失われていたらしい。


結局は何を見つける事もなく、何を見出だす事もなく、私の旅は終わった。


「お帰りなさい」

「ただいま」


私がこの旅で得たものは無い。

そう、元通りの日常に戻るだけだ。


/


私は何だ。

私は私でしかない。

本当に?

そんな中学生以来の疑問が再び浮かび上がる。

それもこれもあいつのせいだ。


解決とは何なのだ。


扉を前にしてそんな事を再び考えてしまった。


私は彼の事が気になっていた。

好きだったと言ってもおかしくはないが、過言であろう。

そんな、気になる存在。


私の間違いはいくつもいくつもあって、全部であってほしくない。

今の今まで考えさせられた。

長くて、長くて、長かった。

必要ないくらい考えていた。

考えた末が、自己保身。

この答えが納得できなかったのだと思うし、他のより良い答えが欲しかった。

これも、自己の為。

否定して、否定して、否定して。

時々諦めては、また思い出して思索する。

永遠に答えなど出ない事は行き着いたけど、納得なんてできるわけがない。

それは、私が子供だからだろう。

子供と表現されるのは嫌ではないが、その考えで終わるのが気持ち悪かった。


「せんせー、大丈夫ですか?」

「ん? ああ、ちょっとね」

「? そう、ですか。 資料ってここでいいですかー?」

「ん。机の上、置いといて」

「はーい」


私は魔法で缶コーヒーとジュースを出して、ぼろっちいソファーに腰かけた。

座りっぱなしの仕事は確実に私を蝕んだ。主にお尻の方ですが。


「あれ? またコーヒーですか? 好きですね」

「験を担ぎだよ。験を担ぎ」

私が投げたカンカンを上手くキャッチ出来なかったんで「下手くそ」と言ってやった。

ムッとした顔をして「先生って男っ気無いですよねー」と言われて癪に障ったので蹴とばした。

同年代が結婚しているとか、子供がいるとか気にしていないですし、まだ大丈夫です。

その態度が嫌なのです。

ざまあみろ。


「痛たた……。って年増をからかっている場合じゃない、次の授業に遅れるっ。そいじゃあね」

「はいはーい」と手を振った。

教える側の立場って辛いなー。

あいつはいい奴だから多少の冗談が言える中で感謝している。

結構、融通効かない奴が多くてこの仕事を後悔してる。


教材の下敷きになっている招待状を引っ張り出すと、上に乗っていた全部が床に散らばった。

……もういいや。後にしよ。


封筒の中身の時刻を再び確認して時計を見る。

三十分ほど書類まとめてから行きますか。

一年前だったら、もう少し時間があったな。

最近化粧のノリが悪くて鏡と向き合う時間が増えた。

寝不足とかも原因だよなとキーボードを打ちながら考えるようになってきた。

あの人もそうだったのかな?


私にとっての彼女は友人でしかなかった。

どうあがいてもそうでしかなかった。

そして、彼女は旅に出た。

私がしたことと言えば、連絡を取り続けた。

関係を切れなかったし、切りたくもなかった。

すがり続けて、汚くて醜い自分。

その上でしょく罪になるのであれば、なんでもしたかった。

そして、寄り添っていたくて、あげたかった。


『ねぇ、私達って何なんだろうね?』

『何? 突然』

『いや――さ。なんか思うことが一杯あって』

『友人ってのも何か可笑しいね。それじゃ――』


電話が鳴る。

「やほやほー。うーん。はいはい。あはは、分かってるよ。うん、うん。大丈夫。え? こっち来るの? 私がそっちに行くのかと。うん。じゃあそんな感じで。はい、はいはーい。それじゃあ」

私は親友からの電話を切った。


さーて、用事の前にもう少し進めますかね。

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