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それじゃあ、いっしょにいきませんか?

僕は首を絞められている。

薄れ行く意識で僕は、助かった。



夢。

夢は見なかった。覚えていないのではなく見なかった。

体。

体の節々が痛くて。そうか、仕事をしたまま寝てしまったのか。

時計を見ると昼というには早いですねという時間指していた。

目覚ましがてらに昼食を買いに行きますかね。

少しだけ節々がみしみしする体を無理して動かした。



「ねえ」

研究室の前で声をかけられた。

かけられなくても前にドアの前に立っているのですから聞くつもりはあります。

少しばかしの心の準備は必要ですよ。

「あの――、何かご用でしょうか?」

コンビニ袋を後ろ手に回した。

恥ずかしいとかは無いんですけど、初対面の人って緊張するではないですか? 未だになれないです。

だから、後ろで手を組んで自分の指を触っていたようです。

「あなた……ここの人?」

スレンダーな女性は研究室を指差した。

薄い香水の香りがする美人さんだ。

「ええ」少しだけ笑顔を作って愛想よく言ってみた。

「それじゃあ――って知ってる?」

聞き覚えのない人物の名を口にした。

「……。存じませんが……」

身の回りの人物や……多分、前任者? の名も思い出したが確かに覚えがない。

「おかしいですね。たしか、ここの教授でしたのに」

「どこかとお間違えではな「今の担当教授は誰ですか?」と僕が言い終わる前に聞いてきた。

「私ですが」

「じゃあ、あなたでいいや」



――っ!。速い。

なんとか距離はとれたものの、思いつかない。どうすればいいか。

「どうして逃げるのー? 私をあんなに惨く殺したのに」

「誰かと間違えて――」こっちの話を聞かずの一方通行ですかい。

こういった事態は想定していませんので最低限の準備しかしていません。

顔を拭くと袖口が赤かった。

ふー、と長めの息を吐く。

ドーパミン出まくりで痛みさえ感じない。


『音の壁』

重っ。

防ぎましたが一撃の重さとこの速さ。パないですね。ぎりぎり目で追える。

受け止めるのは無理っぽいですね。受け流すことに集中。距離を保ちつつ自分を有利に。無駄な魔力を使わない。最小限で。

なんとかあいつの動きを止めなくては。

「どうしてですか? 奥さんとの浮気は許します。でも私を最後には選んでくれるって言ってましたよね? そうですよね? 私も、私も愛してます」

まっすぐこっちに向かってくる分にはなんとかなるだろう。

『壁を走る衝撃』

そのまま突っ込んで来やが、間に合わ「つっかまえたー」



痛みは細い指に似合わないくらいの握力で僕の腕を締め付ける。

「どうして、急に居なくなったんですか? 寂しかったですよー」

振り払おうとした、触った所で気が付いた。

これは人ではない。

私怨だ。


ほぼ私怨と表現した方が正しいでしょう。

長い年月で変わってしまったのか、そういう性格なのかは定かではありませんが間違いなく強い念が残った物です。

行方不明の女生徒がいるとのオカルトを聞いた事がありましたが、多分それ系統ですか。


死ぬ事のない世界のその後の答えの一つがこれです。

体は朽ちて魔力のみが存在する場合、魔力によって体が形成され、精神が形成され、魂が形成され、形作られる。

僕らとは真逆の存在で、いうなれば亡霊が近い位置付けだと。

魔力を失えば死ぬのか? の答えはノーである。

体によって生産され続けるためゼロになることは故意でない限り不可能で、魔法が使える連中が集まっているここでは他人に接するだけで魔力が体に引っ付くし、ましてや空気中には微量にも存在するため無くなりようがない。

蓄積となると別問題だが、空気のように体に取り込み空気のまま使える永久機関。

体の方はいくらでも延命させられる。


だから、死ぬことのない世界。



じゃあ、彼女の言っている死って何だろうか?


僕の体が死んだ状態で持ち歩かれるか、僕も私怨側になる事ではないかと。

昔やったゲームで例えるなら、棺桶のまま連れていかれる仲間か、状態異常ゾンビって感じです。

僕の場合、保持できる最大魔力量は大したことないので、そうなったとしても均衡が崩れてすぐ消えて無くなりそうですがね。


「一緒に死にましょう」

嬉しそうな顔で僕の首を締めあげる。

対策はあった。

あったが、血液がその部分について不発陣になったのが一瞬見えた。

だから、その策は諦めた。諦めたが、これに対する有用な策は他に持ち合わせていなかった。

基本戦闘向きに作っていないですし、運が悪かった。

今から描き上げるのも無理っぽくて、万策尽きました状態です。

というか、最初の見立ての時点で負けていた。

人だと、悪意の欠片すら感じ取れなかったのだから。


「今度こそ、ずーっと一緒にいてあげますからねー。心中。これこそ、究極の相思相愛」

自爆も意味ないな。効かないし。

思い残すことは、思ったよりもなくて。

そうだな、この危険なのを誰かに知らせて――これも一緒にいなくなるのかな? じゃあ、もういいや。

「・・・・・、・・・・・・・・・・・?」と僕は口で彼女に問うた。

「はい」

僕は僕の首を絞めている手にそっと右手を触れた。

これで、彼女は僕を取り込んでも成仏するであろう。僕の最善手。


「まったく、世話が焼けますね。持ってかせませんよっと」


僕の体は床に打ちつけられた。

「大丈夫――でいいや。まったく、甘いんですから。攻撃魔法全く使って無いじゃないですか。こういう奴は言っても聞かないんですから、跡形も無く仕留めてください。それが正解です」


誰が助けに来たのかも見ることは叶わず、声も出すことは許されないほど力が抜けており、床にへばっていた。

僕が吸った息は、なんだか落ち着く匂いが含まれていて――僕は気を失った。

「全く……運だけは良いんですから」

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