それは何を思うのか
「はーい。ご飯ですよー」
わんと白い犬が鳴く。
「いいなー。可愛いなー」
そんな光景を横目で見つつ仕事に戻るのだ。
いつもより騒がしく感じるのは四六時中一緒にいるからでしょうか?
教え子から犬を預かりました。
白いヘルハウンドです。
不吉の伝承に対しアルビノのこの子たちは幸運として縁起を担いでいるそうな。
食べこぼして飲むこぼしているのを喜んで拭いているような声が聞こえてきます。
断ろうかと思うくらいでしたが断れないのがここでの常です。
「ここにいる動物たちは察知能力が高いんですから、変な事考えちゃだめですよ。不安がっちゃいますよ。気をつけてください」との釘を刺されました。
さいですか。それじゃあ任せましょうと餌係。そんで今の状態です。
このわんこはおとなしくて聞き分けのいい子で良かったです。実家の近所にいる犬はひどいものでした。だからという訳ではないですけど、犬は好きではないです。苦手ぐらいです。面倒臭いという意味での苦手です。数日なら大丈夫という心の隙を突かれたのでしょう。
聞きわけのいい子という言い回しはどうなんでしょうか? 人の心が読める――という事に繋がる気がしないでもないです。そこら辺は飼い主の趣味によるのでしょうし。
しゃべる犬よりはましかと思います。何か抵抗があります。
いいなー、飼いたいなーとことごとく呟いている彼女が気がかりです。
言いたい気持ちは多少なりともありますが、飼ってあげる、飼えばいいと無責任な事は当然言えないです。
それでもその小言は気になります。仕事の妨げです。
止める言葉を持ち合わせていないのもストレスですね。
あと少しで終わるのにアイデアが浮かばないのもそのせいですと心の中で八つ当たり。
次の日は晴れました。
縁がないと思われていたドッグランへと来てしまったのです。
どちらかといえば連れ出されたという方が正しい。
どうしてもという事で散歩中です。彼女が乗り気でした。
暖房の利いた部屋でぬくぬくと過ごす予定でしたが、乗り気な彼女を止める手段も持ち合わせておりませんで、犬に対しての単純な知識量では負けているのでどうあがいても無理です。
ペットなど飼ったことがないので少しだけ彼女がうらやましかったりするのですが、行きたく無さが勝っています。世話が僕だけでしたら昼の散歩だけになりそうですので、色々してくれる彼女がありがたかったりもします。
ここですが、広いですねー。ものすごく芝の匂いがします。
手を振っていたので振り返しました。
本日の休日はこんな感じに過ぎて行きます。
学校の都合を抜けば、学生が休日を決めてよいのですからこちらとしては不定期の休日な訳で旅行なんてものはもってのほかです。予定はないですが。
まあ、彼女が楽しそうで何よりです。
やはり寒いですね。
体がすっかり冷えてしまいました。
「そろそろかえりませんかー」と声をかける。
「そうですねー」
「ちょっと動かないで」と髪の毛についた芝とか取ってあげました。
どっちが犬か分かんないですね。
自販機で買ったホットドリンクを飲みながら帰りました。
汚いままカフェに入るのは抵抗があります。
自分もジャージですし。
「どうぞー」
「どうも」
「飲んだばかりですけど」
「ふふふ……」
箸が転んでもおかしい年頃レベルに機嫌がよろしいようです。どんな返しでも笑ってくれます。ニコニコです。
「お前もどうぞ」わんこにもぬるま湯のサービスです。ネットで調べたので飲ませても大丈夫そうですし、普通の犬よりは丈夫なのでお湯でもいいとは思いますが、念の為です。
「うん。決めた。私のとこでは犬にしましょう」
「へー。決めたんだ」
「はい。一緒にいる事も考えるとやっぱり気に入るのがいいですから」
「そっか」
「隣に来るので、ご迷惑にならないようなるべく鳴かないのにしますね。後、縁起も担ぎたいですねー。どれにしましょうかねー」とカタログを見るのであった。
後で調べたのと会話で推測するに研究室、部屋ごとに動物を飼うことが習わしになっているらしいのでした。犬なら不幸を追い払うとか猫なら幸運を招くとかそんなげんを担ぐ部分が大いにあるそうです。潰れかけだった研究室が動物を飼って持ち直したというのが由来らしいです。
彼女はペットショップで一目ぼれしたガルムにしました。
僕も付き合わされたので目撃者です。
一番この子が懐いていたからといえば聞こえがいいかもしれないが、お目当ての子は偶然にもおりましたのですが、一歩もこちらに来ませんでした。ええ、僕も察してあげて余計なことは言いません。
ですがあえて何か言うなら、経費で落ちるなら僕も自分のところの奴を選びたかったです。
二匹目は落ちないそうなので。
という経緯で二匹のわんこを本日お世話させられています。
エリーの飼い犬はろくな世話押していないのに懐かれてしましました。遊びに来たとのこと。
助手さんは風邪で一時的に預かる事になりました。すぐに治るというかもう治っているだろうが移ることを考慮してらしい。まあ、隣に越してきたよしみです。
三匹分の餌を用意するのだった。
自分の研究室といえば――クジラ雲で決定していたそうです。
やっぱり敵わないな。
「なぁ、そうだろ?」と水槽に向かって話しかけていた。




