表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/73

十二時限目

言っていいこと、言っちゃだめな事の判断は何歳になっても難しくて、人を泣かせる事はどうあっても慣ることはないだろう。

動物と人間の差はどこに存在するのだろうか?

この世界は昔も今も変わらず曖昧だ。


「本日はよろしくお願いします」

「ではこちらからお入りください」

「それじゃあ、あとはよろしくお願いします」

「はい」


学長の書面よし、つまらないものよしと確認する。

ほどほどに高いつまらないものですが。

僕はキュッと蛇口を閉めてお偉いさんに会いに行くのだ。


本日は企業の見学会みたいなものです。

みたいなものとは、職業体験とか工場見学などのどちらかと言えば小中学生がしそうな雰囲気が感じられる。

少しだけ大人っぽくしただけだと思われますが。

それでもいいのはする必要がないのとこれである必要があるからである。

ある意味企業努力なのでしょう。


魔法学校と企業は癒着している。

企業と官僚間のせいで悪いイメージしかないが、これに関しては一概には言えない。独占したいだけという面も確かにあるのかもしれないが、それ以上にあらゆる事が限られている。学内ですべて賄える訳ではなくて資金にしろ人材にしろ限界がある。

それは悪いことともいい事とも僕は判断しかねなくて、仕方のないことであると結論付けた。


そしてなによりも情報に一番の重しを置いている。

だから、ここも学生関連の誰かの企業であろう。

顔色のお伺いも含まれるのです。


学生が入社する事がここにいる人にとって重要なのは言うまでもなく、それこそ金が……、いえ鴨がネギしょってくるような人は特に。

だからこそのウェルカム感がなんかいやなのですが、仕方のないと思う事にしました。


昼食の時間となりました。

三時間という時間はおなかを減らすのには足りなかったみたいです。食欲というものが生まれてきません。

普段の大学の講義では移動距離が長かったり、立ちっぱなしでマイクでしゃべるのは意外にカロリーを使うようです。初対面の人の聞き役というストレスも多少、いや大いに関係ありそうです。

職員と対面方式のお食事会が始まりました。会食でしょうか? しかし、高そうな食器ですな。

今思う事は『帰りたい』それだけです。なんだか、味がしない。

テーブルマナーはあそこにいる以上、勝手に覚えてしまうのがなぜか空しいです。

教員をしてから良い物食べた記憶がほぼないですがね。


食後は自由見学、説明会って流れです。

でもまあ、夕方くらいに研究室に帰れるので生徒としては楽な事であろう。

僕はガラス越しの良く分からない生き物をボーっと眺めていた。

「動物と植物の違いって無いな……」とそう呟いてしまった。

それがいけなかった。聞かれてしまったのだ。

よりにもよって動植物学科の学生に聞かれてしまったのだ。


この世界で本当に差異が無くなっている。

植物は呼吸をして食べ物を食べて栄養を蓄えて、ましてや思考もする。

動物は食べずしてエネルギーをまかなえる手段を持つようにもできる。光合成だってそうだ。

それらは自分での線引きでしかない。

それでも学んでいる者がいる。

だからその言葉は人生を数年かけてきたものを無意味にするもの。

そして、動植物という一つだけになった学科。

人の心を踏みにじるにはたやすい言葉だった。


僕は無意識だった。

言い訳染みているけど、本当に無意識だった。

謝って、許しの言葉を貰っても僕は僕自身が許せていなかった。

だって、泣してしまったのだもの。


彼らもきっと理解もしていて、理解に苦しんでいる。

動物と植物の生徒の仲たがいはここにあるのであろう。

存在意義を示すための手段の一つにしては幼稚であるかもしれない。

学問としての存在価値は残るのだろうか、学問としての限界と終末。

それはこれに限らず、僕自身にも。いや、僕の方が早く振りかかるものである。


「……ごめ、んなさい。も、もうっ大丈夫です」

「本当にごめんな。その――」

その後は慎重に、本当に慎重に言葉を選んだ。


それに対してもがいている人がいて、ただただ僕の言葉は惨かった。


魔法学――いや、学問の末路。最後のともしび。終わりの狭間。

僕は底を垣間見てしまった。

そして、触れてしまった。

長く伝えた学問の終わりは紙とインクだけの歴史となり果てる。

僕の学問はそれさえ叶わないまま消えていくのであろう。


学迎のバスは眩しい西日を浴びながら、ただエンジン音だけが響いた。



今回の講義は――。


僕から無理を言って動物小屋を使えるようにしてもらった。

無理と言っても快諾してもらったのだが、普段から忙しそうなので申し訳なさがある。

動植物学科は協力という形で自由参加なのだが、半ば強制的に参加する形にはなっている。


ロウソクの最後の火のように激しく燃えて終わりになるかもしれない。新しいロウソクに付け替える様なそんな存在になればいい。そんな、下らない後付けを考えながら。小説の読みすぎですかね?


魔方陣による物質及び動物の割合の測定です。

今回は仮に七十五パーセントを基準に動物、植物、動植物としましょう。

では、各自チームを作ってレポートにまとめてください。

解散。



僕の意志とは無関係に動植物学科は三つに別れた。より専門性が高く、生き残るために。

前々から決定していた事らしく、それによる不安が泣かせた理由だったらしい。

きっかけにすらなっていなかったのだ。



僕の中では悔いしか残らないかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ