鏡の中身は?-2
事象や物事すべてに名前、呼び方がある。
原因はいまだ不明で監査の人が僕の記憶を調査したところ、鏡を見て発症して鏡を見て元に戻るそんな様子から今回の出来事には『鏡夢』と書いてキョウムと名が付いた。
事件は解決しておらず、迷宮入りしそうな事案である。
主な理由として、催眠術とかそんな魔法のようで記憶から要因にたどり着けない点が一点と証拠となるようなものがない事だ。
困りました。
記憶を抜かれているのだが、抜かれている部分がわからなくて気分が悪い点は今置いておきます。
抜かれたという事実がまずい。
誰が検証しようと抜かれていることはわかるのだが、それ以外すべてがわからない。
よって処分が保留となっている。
ここについても具合が悪い。
犯人になりうる人がいない事で隠し通した方が都合が良いみたいで、とりあえず先に口止めを食らっている。
大学側はなんだか慣れているようで少しだけ裏を見た気がした。
一番の悩み事は休めない事でした。
ホテルのベッドが固い。
ハードです。
クッションを敷いて寝ている私ですが、そろそろ腰が限界です。
数日の缶詰なので文句も言わず。ええ、いけると思っていた私がバカでした。
取り調べですか? 初日は長かったですけど、それ以外は機械の中で寝ているだけです。
こっちの方が寝心地良かったです。
なにはともあれ、本日は我が家に帰ってきました。
「ここまでまとめましたが……、帰ってきたのですね」
「あっ、おかえりなさい」
「何やってんの」帰ってきての一声は冷たくあしらってしまった。そんなつもりはなかったのですが、そんなつもりになる状況です。
不在の状況でホワイトボードに書いて探偵だか警察ごっこ。
寝不足でいらついていますから聞いてのさえだるいです。
「今、事件の概要をまとめていたところだよ。ワトソン君」とペンで自分を指したので僕がワトソン君ですかね? 嫌です。ホームズがやりたいという訳でもありませんよ? やりたいのは読者です。
小学生の頃読んだ記憶がありますが、ワトソンが被害者ですか? ――初回はそんな感じでしたっけ?
「……疲れているので、パスは使えませんかね?」
「だめです」
「休ませてあげようよ。ね?」
「ワトソン君バトンタッチで」
「ならよし」
安いワトソン君で。
「ええ――」
「お詫びにこれで」
疲労感で食たくなくなりましたのでお菓子を献上してみました。ちょうどよかったですよね?
「は……い……」
紙袋と僕の顔を交互に見て少しだけ複雑な顔をしていましたが、受け取ったので交代です。
その日はこれで終わりました。
二日目。デイズ2です。
起こされたところから始まります。
「ワトソン君、ずいぶんと寝坊助ですね」
「――んぁ、今何時?」と尋ねると起床予定時間より四時間ほど早いので「ワトソン君は休業です。それではまた」と上手い返しをした。寝起きの悪い中なので甘めの採点です。
「おーきーろー」と大声で揺さぶられたので目が覚め……気持ち悪い。
「何用で?」
「昨日の続き」
「ワトソン君はバトンタッチしたので」
「やっぱり、バトンタッチは無効ですのでよろしくね」
答えず、ボーっとしていると「助手ちゃんが可愛くないのですか?」
その助手ちゃんは取り調べ真っ最中。つらいかつらくないかで言えば、普通ですね。それ以上でもそれ以下でもありません。僕の取り調べよりは楽だと思われますが。
「んー、それじゃ、コーヒー入れてもらおうかね。ホームズ君」
「はい」
「んー、何もないですね」
相変わらず、研究室の鏡を調べている。プロが調べたから出る訳がない。
「そりゃあね。多分だけど……自分が通った道のどこかにあると思うんだ」
「なぜに?」
「それは――」
それは勘というものもあるが、プロが調べて見つけられない場所にあるということだけはわかっている。
「そんな訳で隣ですか」
場面は変わって隣に来ました、自信はない。
「では開け――」ドアの取っ手をつかもうとした瞬間、何かが僕の手を動かして彼女の腕をつかんだ。痛かっただろうか? それより僕がつかんだことに驚いているどうだった。
僕も驚いた。直感的に動いたことにも。
「その――、一回戻ろう」
「あっ、はい」
「あの部屋に入ったことは?」
「無いかな?」
「……私も」
引きずっているようでそれを誤魔化すように、そう悟られないように。
「いやな予感がしたんだ。これ以上は……あ」
口に出した時点で終わっていた。
「あ?」
場面は終局になりそうです。
「では、再突入ですね。お願いします」
「……付いてこなくてもいいよ」
「これがありますから」と本をチラつかせる。
分かっていますから。提案したのは自分ですからね。
こんな形で使うとは思わなかっただろう。これも自分も。
部屋にちょうど数冊、山積みになっていた教科書です。
フタを開けてみれば単純でこちらの部屋事態にカラクリがあった訳です。
取っ手をつかむ、魔法にかかる。眠らされて、記憶が埋められる。といった仕組み。
そんで、その装置は鏡の裏にありました。
どうして自分と助手の彼女だけがかからなかったのかといえば、魔力量が足りなかったからといった単純な理由であろう。
こんな低魔力の人物がいたと想定はしなかったでしょうし、一般的な保持数があれば気が付かないで終わっていたでしょうし。
ちりも積もれば山となるみたいに小さな不足分が大きな穴となって現れたってとこなのであろうね。
「失礼します。そのー、これどうぞ」
菓子折を持って現れたのは見知った女学生だった。
「気にしなくていいのに」
「私の実父のせいですし」
「それじゃ、これはもらってくよ。それで終わり」
ここで終わらせることであとくされなく終われる予定だったが、気にしているようで彼女の話はここで終わりませんでした。それは何かを聞いてほしかったから言ったのだろうか? それとも聞かれたくなかったのか。
そして、僕は聞かないことにした。
それは僕の身勝手な判断かもしれないが、そこまで関われなかったって事だと思う。当然だけど余裕なんてものが持ち合わせていなかったのも理由だ。
「でも、許されることじゃない事はわかっています。だから――」
「許す、許さないじゃないんだよ? その――僕も忙しいからね。だから終わり。納得しなくていいから、わかって」
「……はい。失礼しま――」
「あっ、ちょっと待ってそれじゃあ――」
上手く言えないのは僕が少しだけイラついていたからかもしれない。
あの後大変だったのだから、二人にちょっとだけのお仕置きを。
ついで言うと助手さんにもとばっちりを。
そして僕にも。
「とっておきの、持ってきてください」と笑顔で言い放ってやったら「はい」と元気よく彼女は去って行った。




