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鏡の中身は?-1

鏡には筋骨隆々――ではなくて痩せ形、標準身長の男が映っていた。

僕です。

これ、僕ですよ。

実験には予期せぬハプニングが付きものなのです。

本当に予期しておりませんで。

目線が上がりました。いや、下を見るようになったので目線が下がったのが正しいのか? どっちでもいいです。とにかく身長が伸びたのです。

うれしい悲鳴を関節が叫んでおります。

うれしいと脳内でうたってしまいましたが、正直な所そうでもないのです。そう見えないでしょうが、見え方が変わって興奮しているだけなのです。

「お待たせしました。では向かいましょうか」との声に僕たちは商業区へと向かった。


歩く前からこうなることに気が付いていました。

そう、注目の的です。

この身長に、この僕ですから。

翌日がっつり整形した人くらいの注目の的です。

まぁ、そうだったらまだ良いのですが「その格好で良いの?」とさすがに出会ってすぐに尋ねてしまいました。実際は僕一人が歩いていたら気にする人はチラホラいるかいないか位だったで標準より気になる程度のヒソヒソばなしの対象しょうね。キモいとか近寄らないほうがいいよとか。でもね、目立つんですよ彼女が。それに対する回答が「恥ずかしいからあまり見ないでください」だそうです。まあ、追求しませんよね。

「元に戻ることは戻るのだと思うのですが、何日かかることかわからないですからねー。服は必要ですよね」

「あはは」と少しだけ無邪気に笑う顔を初めて見ました。

気を紛らわそうと話しかけていたが、この顔で僕はそんな感情は消えてしまったのだ。

「ここですよ。何着かあれば――」

「いえ。せっかくこのプロポーションになったのだからおしゃれしたいです」

「そっか」と気合を入れているのを見て、なんだか僕まで笑顔がこぼれてしまった。


居合わせた彼女も身体的変化がありました。

なんだか光が悪かったみたいでピカーって。

それで今コレです。

実用化は検討中ですが、再現不可なのが問題です。

誰かに託しますので製品化の方、早めにお願いします。

回想よりも希望的観測のほうが強いのは気のせいですので――。


いらっしゃいませとの声。

店員はこちらをじっと見ている。

ドラマの見すぎでしたね。強いまなざしが来ると思って少しだけ身構えていました。

怪しいですよね。ぱっつんな服の男性と黒ずくめな女性のコンビですし。

自分らより奇抜なファッションな方々はちらほらとお見受けしますけれどね。

感覚的にニアイコールぐらいじゃあないのですかね?

適当に選んで「着て帰っていいですか?」と尋ねて買い物終了。

これでギリセーフです。自分の利己心とのバランスがです。

当たり障りのないものを。

なぜこんな大型店を選んでしまったのかといえば、ここくらいしか知らなかった点は置いとくとして、相手の趣味を知らなかったので棺桶からゆりかごまで的に品ぞろえがある点と女性物がある点でここにしてみました。

よく考えたらサイズ直しのほうが早いですね。料金がほどほどにかかりますが、そのままの物を大小するだけですし。

まあ普段着だけですし、記念にという事で。

スーツは――その時に考えましょう。


記念だか何だかわかりませんが、買い込んでいるであろう彼女との待ち合わせの場所まで行くと当然のごとく大量に買っていました。

「大丈夫かい?」

「ええ。お小遣いで足りましたし」

「持ち帰るの大変そうだね」

「ああ。忘れていました。どうしましょう……」

お小遣いのことは華麗にスルーできた紳士な僕でも持ち帰るのは無理そうで、いろいろな店舗で買ってしまったので配送も厳しそうという見立てです。


「こんにちはー」

「ちょっと漬物ちゃん」

二人の女の子が近寄ってきた。

「知り合い?」

「初対面だっけ? 魔方陣学科の教授と新任のあれ」

「え? え、え? あ、教授!? どうしました? 見た目が違うので別人かと」

脚先も見ているので僕を身長で判断していたのは痛いほどわかりました。

グッとこらえて荷物運びを手伝ってもらいました。まだギリギリ紳士です。

そういえば、かくかくしかじかってどれ位の伝わっているのでしょうか? ツーカーよりは低いのは気はしますが、省略していていまいちそこら辺が感じ取れません。

女子トークに入れていないので昨日寝る前に考えていた答えを出そうかと思いましたが、無理でした。


「それにしてもよくわかったね」

「そう? そんなに違った?」

「あははは……」と乾いた笑いは、漬物以外興味ないのだろうなとの漬物ちゃんに対するそんな気持ちが入っているのが察してしまった。

そんな会話に最近連絡が乏しくなっていたので、久しぶりに送ってみる気持ちにはさせれてしまいましたね。少しだけホームシック気味です。こう見えてもナイーブですから。


「ここにお願いします」と僕たちは荷物を置いた。

僕の所より少しだけ小奇麗なのはイラッときました。

隣ですよ? 研究室でここまで差がありますか。

でもまあ、実験ができるほど広くはないので仕方がないことなのですが。

「お茶入れますから、少し待ってください」

がさごそとかばんの中を漁ると「お茶に合う漬物」といってタッパーを出した。

「なんですか?」と少しだけ不服そうな顔を見せた。

「いや。漬物ちゃんらしくていいなって」

「なんだか、ムカつきます」


「何をしていたの?」との他愛のない話に「布を買っていました」と。

「この布を――」と目をキラキラさせながら。

そんな他愛のない話で時間は過ぎて行った。

時間を忘れるくらい話したのは、いつぶりであろうか。


研究所に戻るといつもの二人がいたので少しばかしたばかった所で目がさえた。

たばかられたのは自分の方だったかと気が付いたのはすぐのことであった。


「取られましたね」

「やっぱり取られたか」

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