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十時限目

白衣に袖を通す。

少しだけ消毒液の匂いがして、嫌だった。

スーツに白衣という少しだけ不自然さが抜けない格好で実習に向かうのだ。


無菌室を使用した実習。

ここまでする必要が無いが、念の為。

道具の消毒をして持ち込んで準備は万端かな? 忘れ物は取りに戻れないから、少しだけ念入りに思い出す。

よしオーケー。


やる可能性はあるとは思っていたが、白衣の着方とか手の洗浄とかそんな基本的な所から入る。皆にはいつもより早く来るように、昼休みを半分ほど切り上げてもらって正解だった。

少しだけ強い風に当てられて、頭がクラクラしたので大きく息を吐いた。

そして――

授業を始めます。

と今日も教壇に立つのだった。


今日の講義は魔法陣を使用した再生です。

魔法陣は召喚だけではなく、吸収と保有の能力も有しています。

魔力の吸収や物質の吸収、はたまた時間までも吸収可能です。

陣内に前もって空白を作って置く事で陣内に物の貯蓄能力を保有します。

詳しくは次回の講義にて解説しますが、今回はこの二点以外は考えないでください。

では、ここに書かれている陣について説明いたします。

実習書を開いてください。


今日は少し湿度が高めだな。

少し書き直さないといけないかもしれない。

他は――踏んで削れた部分の上書きと。

こんなものかなと。

そんな雑念を抱えながら口頭で今日の内容を話した。


はい。計測計のセットお願いします。室内なので風向はとりあえずゼロで良いですよ。時間は今から三分後でお願いします。

よーい……スタート。

では簡単に――。


補足説明しつつ、ちゃちゃっと追加の陣を書きました。

範囲はこんなものかな? 誤差はコンマ一パーセント以下くらいなら平気……でしょう。心配なのでここは念の為厚塗りでっと。

よし、時間か。


一個目の陣を発動させる。魔力は少々。全体に行きわたった事を確認して、二個目。

想定していなかった事が起きました。眩しい。予想より発光しており、展示物のようにライトアップされていますね。安物を使ったので少しだけくすんで不気味に光っておりますが、

原因の答えは直ちに思い当たったのでスルーです。きっと大丈夫しょう。

いっ! 思わず声が出てしまった。甘かったか。


では、レポートの提出は――次回のレポートと一緒に提出でお願いします。

各自あとは自由にしてください。


まあ、そうなるよね。

ここでの非日常だから。



今日の研究室は静かで久しぶりにゆっくり休めそうだった。

今日は来客が来ないであろう。

仕事は程々に残っていたり、いなかったり。

『やらないと』そんな気持ちにさいなまれるがそうもいかなくて。

気持ち的にゆっくりはできなかった。

未だに右腕がピリピリとしていると僕はソファーにだらけていました。

せっかく体調が復帰したというのに何かをやれないのがもどかしい。

あの時は魔力を感知されないように『魔力の前借』なんてものを試してみたのだが……もうやらない。体に刻まれた魔法陣は腕の痛みが良くなったら書き換えておこう。後が辛い。


「ちわー。おかげんいかが? って寝てました?」

「別に」と言いつつ、変に気を使われるのも嫌なので起き上がって見せる。

腕に下げている袋を「お見舞いです」といって冷蔵庫に入れていた。

他学科なのにこんな時間に来るのは、こちらとしても面倒くさい。

特にこの人はなんだか馬が合わない。

「ふーん。すごいものですね。腕まくりしていいですか?」

僕の腕をニギニギとして「おおー」と感心していた。

「跡が無い。中々にえげつない事やったのでしょ? 何人かを病院送りにしたとか」

「腕がまだ痺れるのだけれど、それくらいにしてくれるかな?」

間違ってはいないのだけれども、返事が面倒なので突っ放した。

「ああ、ごめんごめん。エリーが心配していたよ。大丈夫だって知っていても腕を切り落とすなんて事は良くないじゃないかな?」

それでも実習書には前もって書いてあったから、それなりの心構えで来ているのだと高を括っていたのは間違えでは無い。

そこまでショックな事だとは想定していなかった。

「……エリーをあまり心配させないであげてくださいね」


「そうだ。最後に一言。こほん」彼女は一息溜めてから「無茶するのは男の特権とか思っていませんか? 誰かにやってもらえとかそんな事は言えませんけど、何というか……その、もう少し考えてやってください。いろんな事に。男だから粗末にしていいなんて事はありませんし、女の子だったら尚更気を付けなきゃですけれど。自分をもっと大切にしてください。上手く言えないけれどそんな感じです」と彼女は去って行った。


それは見当はずれで意見も的から外れていたが、なぜか心に響いた。

自分でもそこに至る事は出来たが考えられなかった事に、言葉で表せなかった事に感心していた。少しだけ見直してしまったじゃないか。


お腹がすいたのでコンビニで何か買ってこようと、僕は夜風が寒くなった外へと歩き出していた。



『最初に覚えるべき魔法は何でしょうか?

攻撃、召喚、治癒……様々な魔法がありますが、怪我は伴うものです。

怪我をしたら治癒すればいいじゃないかと思う方もおりますでしょう。

失敗しなければいいというのは不可能です。

新しい事を始めるには失敗はつきものです。

後遺症、再生不可能な傷、再起不能などの大怪我をしないとは言い切れません。

一つの結論として怪我をしない、最小限にすれば良いという発想になります。

つまりは自衛、最低限身を守る事が出来ればいい。

よって最初に学ぶべき魔法は、防御魔法という事になります』


まあ、持論ですけどね。

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