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気持ち悪い。

見知らぬ部屋。

気が付くと、僕はそこに居ました。

一体ここは……。

いっ! 頭が。思わず力んで、再度痛い。

額を触ると包帯。目の前のベッドカーテンがひらひらと揺れるのに気が行って、気付きませんでした。


目の前の扉から入ってきた少女は、どこか見覚えのある――そんな雰囲気だった。

「おや? 目が覚めたのですね。良かった。あの人は無茶するタイプなので」

彼女は透き通っているようで、少し聞き心地の悪い声で話しかけてきた。

「はあ」と僕は相槌を打った。

「横になって寝ていた方がいいですよ。傷に触りますから」

僕は聞く耳持たずというタイプではないが、未だに上半身起きた状態でぼーっとしていた。

彼女は持っていたタオルを入口近くのタンスにしまい、ベッドの隣に座りました。


……。


カチカチと時計の音だけが響くこの空間に耐えかねたらしく「ねぇ。私の事、何か聞かないの?」と尋ねてきた。

きっと、この状況に疑問を持っていないのみたいな事を聞きたかったのだと思う。

僕は、何もなかった。

「……どなたでしょうか?」

とりあえず彼女の方を向いて、今思いついた事を口にした。

「妙に落ち着いていますね」

「自分でも不思議なくらい」

頭痛がして考えたくないという部分も無きにしも非ずですが、それ以上に自分でも不気味なくらい頭の中は落ち着いていた。

「そう。私は――。いえ、私はここで貴方の世話をする事を申し使っているの」

「はあ。そうですか」

再び、僕は口を閉じると秒針音だけが鳴りだした。

「そうですか? そうですかで終わり? それだけでいいの? 聞きたい事一杯あるでしょ? どうしてここにいるのとか、どうして怪我しているのとか」

言いたい事は分かる。分かるのだが、これだけはどうしようもなかった。

「それじゃあ、そうであろう事を適当に話して」

本当に何も生まれてこなかった。

「――肝が据わっている。そう言った方がよろしくて? まあ、いいでしょう」

その少女はため息をついたのだが、なぜか嬉しそうに見えた。


「……こっからは『ガー』、失r『ガー』、マイク!『キーン!』失礼、マイクを変えました。えー、おほん。私から説明しましょう。下がっていいよ」

静かに立ち上がり、無言のまま扉から立ち去った。

「怒らせちゃいましたかね? まあ、気にしません。これから、時間はたっぷりありますから。本当に落ち着いていますね。すぐに、私がやったと気付いていたのですか?」

それも間違えではないが、交友関係の少なさから選択肢など元より無い様なものだった。

「あれ? こっちも怒っています? おーい。きこえていますかー? 独り言みたいで淋しいじゃないですか。おーい。本当に大丈夫ですか? 動いていないようですけど? おーい」

なにか――気持ちが、心が晴れていない感じだった。

それに対して、テレビから映し出される映像はやけにご機嫌な様子です。

「独り言でもいいです。気分がいいので。だって『私だけのモノ』になるんですもの」

本当に、それが理由?

「こんなことしたからって、私の事を嫌いにならないでくださいね。今となってはそんなことあまり意味の無い事ですけど。比較対象がいませんから、常に私は一番です。だれにも取られる事もありません。だれにも触れる事の無い私だけの。そうだ、安心してください。私が幸せにしてあげます。私と違って、あなたは幸せにならなきゃだめなんです。こんな性格の悪い私と一緒にいてくれる唯一の友達ですから。私が幸せにしないといけないんです。私が、私が私が私が私が――。私が全部やってあげるんです」


……。


「君には、私が選んだ人生を歩んでもらいます。私じゃ釣り合わないから、素敵な彼女さんを用意していますからね。仕事は、そうね……。安月給って感じです。夜遅く帰ってくる感じがいいでしょうか? 奥さんが献身的で共働きがあっていますね。子供は一姫二太郎でしたっけ? それが理想ですが、女の子二人で肩身が狭い感じがいいですね。女の子三人は流石に悪いので。それから、それから、たまに私の家庭と食事会するんです。私の旦那ももちろん理解者です。その時は私と君だけが喋っていて、二人は暖かく見守っている感じがいいですね。子供は子供たちだけでテーブルを囲んで。それからそれから――。」


支離滅裂な理想語りはまだ続いた。



僕は、正しくて、間違っていた。


僕の予測は想定の外にせよ、間違っていなかった。


僕は何処が間違っていたのかは、分からない。

でも、正しくは無かった。


僕は、一体どうすれば正解だったのだろうか。


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