(15)-2
「ずいぶん遅い起き様で、おはようございます」
「おはよう。お兄ちゃん」
誰?
階段を下りると見知らぬ二人がいました。
余所行き用の顔って感じです。
説明しなくても、一人は家族じゃない例の彼女です。
「もう、この人が兄の彼女って聞いた時はびっくりしたじゃないですか。本当に冗談がお好きなようですね」
最初からお兄様の呼び方が違って、もうボロが出始めているようです。
もう少し頑張っていただきたかったのですが……。
はい、ダメそうですね。
「そんなこと無いですよ。内縁の妻って言葉があるように、内縁の彼女って感じです。もう半年も一緒にいるので」
意味分かんないです。
それを認定させるのに、半年って短くないですか?
ついでに言うと、目をキョロキョロさせて人見知りのとこ出ちゃっていますよ。
なるほど、これもガールズトークなのですね。――
昨日あたりにいきなり家に現れました。
コンビニから帰ってくると母とは仲良くなり、妹は物で懐柔していました。
又、彼女って体で話を進めていたそうな。
僕は面倒なのでそのまま見守っていたのですが、危うく本当に取り返しがつかなくなりかけました。
冗談の引き際は、彼女自信は考えていたのでしょうか?
そのままだったら、どうしていたんでしょうね?
「お姉ちゃんだったらよかったのに」
「養子に来る? そしたら、お姉ちゃんになるよ。こんな可愛い妹がいたらなー」
妹が可愛いかは僕には判断できませんが、変に馴染んでいて怖かった。
やけに現実味を帯びた冗談を聞きながらそう思いました。
「楽しそうだから、私も同じ大学に行きたいな」
「それなら、もっと勉強頑張らないとな」
「ここら辺で学力トップなんだけど?」
学業成績は優秀ですが、それでもきっと切られるレベルでしょう。
「私が入れてあげましょうか? 名前出せば効果ありますし、裏金を積めば――」
「遠慮しときます」
そして何より、お金が払えないレベルです。
ケツの毛をむしっても無理そうです。
少し下品でしたかね? それくらい無理って事です。
「仲いいですね。ほんと」
「そうか?」
本当は色々あるのだけれどなあ。
ベンチに座りながら、足をぶらぶらさせております。
「そうですよ。私なんか一人っ子で羨ましい限りです」
二本目のイカ焼きを食べていました。
本当にタイミング良く、夏祭りがやっていた。
浴衣持ってくればよかったとか行っていましたが、結局ラフな格好で来てしまいました。
昨年――いや、一昨年と比べると明らかに屋台が減っていて、空きが目立った。
寂しい気持ちになりました。
「本当にのどかな所ですよね。ここは」
僕はラムネに口をつけた。
「……さてと、行きますか」
翌日、彼女は急にいなくなっていた。
なぜか家族にだけ丁寧に別れをしたそうで、僕にだけ挨拶が無かったです。
台風が過ぎ去った如く静かで。
「お兄ちゃんも、今日帰るんでしょ?」
「そうだね。チケットの時間まで、まだ少しだけならあるね」
「そっか」
なんか、湿っぽい気分です。
それから無言のままギリギリまで見送りに来てくれたけれども、別れ際にこんな一言を言ってきた。
「あの人には気をつけた方がいいよ。危ないにおいというか、嫌な感じがします」
あれだけよくしてもらったのに、この言いよう。――だから、なのかもしれない。
深く考えずとも、難しいかな。
あの日から今日まで彼女に会う事は無かった。
お互いに忙しいの一言で終わるのだが。
後期が始まれば、そんなこと無いと思うのですが、『これから二度と会えない』そんな気持ちになります。
あれ以来、あの言葉が脳裏をよぎる。
どんな顔して会えばいいものか……。
だから、ちょうど良かったと安心する部分もある。
お土産を渡しに来ました。
妹に選んでもらったので、多分色気があると思われるものです。
夏休みもバイトとは大変ですね。
「女の勘って当たるのかな?」
「さあ。私のは当たったこと一度も無いので……」
唐突の変な質問に答えていただきありがとうございます。
当たるも八卦当たらぬも八卦って所ですかね。
「それって……」
「ん? ああ、お守り。家族に渡された」
目線で何となく察せました。
ちょっと女の子っぽくてセンスが合わないのですが、せっかく貰ったので適当にカバンにつけました。
「へぇー。良い家族じゃないですか」
良い家族ってなんでしょうか?
でも、言われて嫌な気分じゃないです。
「そう言えば、あの恋愛のおまじない誰に渡したのですか?」
「恋愛?」
「キーホルダーです」
あれってそうだったのか。
当たっていましたね。
男の感です。なんて言ってみたり。




