八時限目:夏期講習その二
今回は問題集を解いてもらっています。
連日の講義と忙しさで、余裕が無くなっている事でしょう。
主に僕ですが。
問.二十五センチ魔法陣で四次元空間に物を収納する時、副陣はどのようなものを必要とするでしょうか? また、どのような形をするか図に書いて説明しなさい。
答えが存在しない曖昧で、解答者としては嫌な問題ですね。
雰囲気をとらえてればオーケーです。
まあ、添削はしますが。
僕が学生だったら間違えなく、この問題だけで嫌いになるタイプの先生ですね。
そのリスクを負ってでも問題を出すのは、想像力を養い、使い物になる物を与えるためです。
少しでもこの時間を無駄にしない為、腐らないものを。
流石にそんな面倒な問題は最後の問題にしていますけどね。
問.A-B間の発動前と発動後の理想的な距離を求めなさい。
こんな無難な問題もきちんとあります。
問.この陣を発動する時、どのような物質を用いるとよいでしょうか?
これは引っ掛けでした。少し難しめです。
問題は他にありまして、全員正解するので引っ掛けの意味をなさないのが難点でしょうか。
思いついたのはちょくちょくメモしているので、まだストックはありますが、問題を文章化する方が多量に残っているので大変です。
今日の問題は彼ら基準で、四十分っていったところでしょうか?
決してサボりたい気持ちは――少しありますけど、手抜きではありません。
いつもより夏期講義の時間は短いので、速めに終わるように調整しております。
今日が夏期講習納めの人もいるので、こんな感じにしてみました。
まだ次の講義がある人の為に時間つぶし用の簡単な追加問題もあるので完璧です。
「今日のは中々に良問でした。難しい問題をさっさと解いて、他の人が苦戦しているのを見られるのは、愉悦ポイントが高いですよ。学科一位の特権ですね」
小世界の女王様は、ご満悦な様子です。
「井の中の蛙と言いたそうな眼をしていますね」
自分を卑下することで、自分の精神安定を図ろうとしているから、そんな言ってもいない被害妄想が出るのではないかな。僕の無駄な推察はいらなかったですかね。
「そんなことないよ」と僕は目をつぶって笑顔で返しました。
目は口ほどに物を語ると言いますので。
「ほんと、わかりやすいよね」
目以前の問題でしたか。
そうでした、顔に出やすいタイプでした。すっかり、忘れていました。
「そんなこと考えている人とは、もうご飯一緒に食べてあげませんよ」
「それじゃあ、冷蔵庫に入っているコーヒーゼリーもいらないかなー」
「そんな手に引っかかるとお思いですか? 抜かりましたね。コーヒーゼリーはあまり好きではありません」
冷蔵庫に手をかけた時点で、僕は勝利を確信しました。
笑みがこぼれるのを我慢するのが辛かったです。
「そっかー、残念だなー。新商品のカフェオレゼリーで、オレンジ味の生クリームにチョコがかかっていて美味しそうなのにな」
「卑怯です。鬼畜です。私が、生クリーム好きなのを知っていて」
「食べるかい?」
「食べます」
本当にわかりやすくて助かっております。
甘いものを食べていたら思いついたのでメモ。
問.水を氷に変化させる時、必要な魔力量は?
まだ練り直すので、大雑把に思い出しやすくメモ。
「答えはなんですか?」
「自分で考えてください」
先ほどから時間は経ち、おやつの時間頃になりました。
あっ、それ食べちゃったのですね。
はい。黙っていましょう。
スプーンを持った彼女はこちらへとやってきた。
「おかわりは無いんですか?」
「後はベーコンくらいかなー。それと、食パンもあるけど食べるかい?」
厚切り食パン三枚と微妙に多いが、処分できない量では無いのが実にいやらしい。
「できれば先にいただきたかったのですが……」
そう言いつつ、トースターのダイヤルを合わせていた。
冷蔵庫の処分中。
賞味期限のギリギリなものとか、ダメなものとかを食べるなり、捨てるなりしている最中です。
先ほどの言葉は気にしないでください。胃に入った物はどうしようもありません。経験済みです。
自分はお腹がすいていなかったのですが、買った自分が悪いので一緒に食べております。
無駄なものは買わないようにしているのですが、どうしても少しは出てきますね。
「卵が欲しかった所ですね」
生鮮食品はやめてください。バラ売りで売っている所はなかったはずです。
そうだ、忘れてはいけない。
予定をホワイトボードに書くのだった。
『休暇中』
短い夏休みが始まろうとしていた。




