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「雨ですね」

「雨ですね」

連日の雨に僕たちの会話は行き着く所まで行き着き、稚拙に陥る。

会話に限界が来た。

「もうヤァダァ! 雨ヤァダァー!」

雨でもうっとうしいのに、駄々をこねる子供のように騒がれると僕のストレス値も上がる。

「仕方がないよね」と会話をぶつ切り。

しょうがない、仕方ないは魔法の言葉。それで諦めがつき、全部を終わらせてしまう。

「……そんなこと、わかっています。それでも! それでもどうしようもないから嫌なんですよ。」

再び、僕たちは並んで研究所の窓から止むことの無い空を見上げる。


近日の窓から見える景色は雨模様で、天気の調整のミスから来たものだ。

晴れの日が一日多かったらしいので、貯水量が想定より減っていたらしい。

それを戻すために連日の雨で洗濯物が溜まる。

魔法コーティングの服はストックが少なく、もうこれが無いと生きていけないレベルで必需品となっている。

寝る時だけは快適にしたい為に、現在は寝巻と化している。

今はジャージ生活だ。

実家から送ってもらっていて正解だった。


「服も無くなるし」

「乾燥機とかクリーニングに出したりしないの?」

「あの馬鹿はこんな時に熱出しやがるし」

自分でやるという選択肢は無いものなのか?

お料理の時点でお察ししたので、お洗濯もお察ししときます。

「馬鹿って言ってやるなよ。普段頑張ってくれてるんだろ?」

「むぅ。それでもタイミング悪すぎです」

「たまにの事だから許してあげなよ」

「そのたまがこれだから許せないんです」

ぽちっとテレビをつけて天気予報にチャンネルを合わせる。

「あと二日雨だよ」

知っていただろうけれども見せつければ諦めると思って。いつもより音量プラス二。

「ああああ。もう。服貸してください」

「綺麗なのはもう無くなった」というのは嘘で何となく貸したくなかった。

「それでは結構です」

「雨だね」

「雨ですね」

そう、生産性の無い会話はまだ続く。


「ああああ。もう。気分転換に外出ましょ。外。」

彼女は僕の意見を聞かずに扉の方へと向かう。

流石にこれ以上は限界だったようだ。

実際、僕もうっぷんが溜まっていたので付き添うことにした。


渡り廊下の窓からは雨の中、男性と女性の姿が。

顔は見えないが色と雰囲気的に。

「よくやりますよね。雨の中」

「卒業制作かな?」

「そうでなければこんな雨の中、外にいないですよ。行きましょう」

手を引かれた瞬間、カッパの中からちらりと顔がこちらに見えて、何だか良く分からない納得をしてしまった。

「なるほどね」

「……?? どうしたんですか?」

「しょっぱい物とか食べたいなと思いまして」

「はあ。そうですか」


こんなものまで売っているのか。

参考書。むむむ。少し欲しい。今後の参考に――いや、出来ればもう数ページ立ち読みしたい。にらめっこしていると横からスッと取られて会計へ持ってかれた。

読んだ後棚に戻した自分が悪いんです。ええ。

少しだけ、買う気があっただけに、イラッとしただけです。ええ。

「どうしたんですか? こんなところで、そんな顔して」

「うん。別に」

「そうですか。あっ! そういえば最近、書店が入ったって聞きました。図書館と違って入行の手続きがいらなくって楽なそうですよ。私興味ないんですっかり忘れていました」

「行く」

「……では、行きましょうか」

なんか微妙な間があったが気にしない。

コンビニを後にした。


そこは天国ではなく、地獄であった。

読みたい本は沢山ありました。

欲しい本も沢山ありました。

だからこそ地獄。

立ち読み対策はビニールが巻いてあってバッチリ。

そして、買えない。

つまりは生殺し。


「ねぇ、見てくださいよ。これ」

彼女は本の近くに置いてあるポップをこっちに持ってきた。

「店員に怒られる前に戻しときなよ」

「そんな事より見てくださいってば、ベストセラーですよ」

冷静に見ると今週のベストセラーと書かれていた。

売り上げを伸ばすためだけに書かれた様な売り文句で。

「山積みですよ。山積み」

店が出来たばっかりで山積み、さらにはベストセラーとは……、なるほどね。

つっこみどころが沢山だが、興奮する気持ちもわからなくは無い。

自分らが関わった本が並んでいる。

それだけで何かアレなものがある。


「すみません。あのー。これ書いていただけませんか?」と店員から小さな色紙を手渡される。

「サインですか? サインですか?」と彼女が煽ってくるが、僕は「メッセージでも書くよ」と耳打ちすると「えー」と返された。何が不満なのだろうか?

「あの後日までに書かせていただきますので、持ち帰っていいですか?」

「どうぞ、どうぞ。あとこれにサインも付けてくださいね」と本も渡された。


「私にもサインください」とからかわれたが、「絶対にやらない」


教訓として、見えは張るものではないという事が身をもって理解した。

教員割引でも中々に痛い出費であった。

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