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狂戦士さん、いつもの

「ふっ――!」


 ゾンビ共、その腐りかけた柔らかな腹の側面に剣を思い切り叩きつける。


 ひしゃげる肉片、飛び散る血液。飛来し顔に付着するそれを気にもとめずに、次の獲物へと剣の切っ先を向ける。


 振り回した剣の勢いをそのままに、踊るように右足を軸に一回転して、後ろから迫っていた二体目、三体目をまとめて斜めに両断する。


肉を断つその音は、人型の何かが体を飛び散らせていく目の前の光景とはほど遠く、果実が弾けるようだった。


 直後、危険を察知する。敵の魔法、土を槍状にして射出する典型的な魔法だ、とは言え威力は大して高くない。

利き腕とは逆の腕を盾にすると、私の腕が軽く削れ小さな穴が空いた程度で済んだ。

私の魔法抵抗を大きく抜く程の威力ではないようだ。とはいえさほど高いものでもないが。


 切り裂いたゾンビ達が地面に半身を落とす音とともに、床を勢い良く蹴りつける。

反動で弾かれたかのように体が飛び出し、少し離れたアンデットの群れに一気に迫る。


 当然敵も黙って見ているわけもない。最も近い位置にいたスケルトン――いや、上位種のレッド・スケルトンか。色が違うだけだから暗いと分かりにくい。

 錆びついた槍が繰り出される。

スケルトン共は武器を持っているのが厄介だ。

その分耐久力は低いのだが、ゾンビだろうがグールだろうが一撃の私にはあまり関係の無いことだ。


 私はその槍を――避けずに突っ込む。

利き腕ではない側の肩口を抉る冷たい感触がしたが、こんなものは治そうと思えばすぐに治る。


痛みは殆ど無い。

治すときには細菌に気をつける必要があるが、魔法は結構万能なのでなんとかなる。特に私の場合はあまり気にしないでいい。


 そのまま利き手に持った剣を突進の威力を利用して大きく振り回す。

 ――一閃。

 四、五体のゾンビやらスケルトンやらをまとめて叩き切る。

明らかに先ほどよりも巨大になっている剣は、いつの間にやらその身を赤黒く染めており、どくどくと鼓動するかのように脈動している。


 血が頭に降りかかり、黒い髪を赤く染める。

時間が経てば酸化し遠目ではどちらが元の色かわからなくなるだろう。


 残り一体、前衛を亡くした哀れなスケルトンメイジが最後に残った。私はゆっくりと近づきつつ、剣に付着した肉片を強く振りぬいて払う。壁にあたった肉片が粘着質な音をたてる。


 あと少し。足元で柔らかく肉感的な何かが半ば潰れる感触を覚えた。屍肉を踏み抜いて潰す。果汁が溢れたような水音が響く。

赤黒く脈動した刃がまだかまだかと獲物を待っている。

 踏み込んだ足に体重をかけ、反動と共に一気に駆け出す。脱力させた右腕は剣を緩く携える。


 先程から押し殺したかのような、子供のような無邪気さを感じる笑い声が低く響き続けていた。敵が怯えたように体を縮こませる。


 怯えている? 

 まさか。こいつらにそんな知能はない。私の気のせいだろう。

 何より、今から粉微塵に変わる相手が何を考えようと――どうでもいいことだ。


 弛緩した右手が剣の柄を強く握りしめる。そのまま衝動のままに振るう。

 空気を断つ音。骨が砕けたような――否、まさしく骨が砕けた音が通路に響く。


 これで全部か。

 いや、気づく。後方、今まで進んできた方向から石を削るような足音がする。

 迂闊。

 まぁいい、次の獲物は――


「ひぃぃぃぃぃぃ!! で、でたああああああああああ!!」


 ……血まみれの私とバラバラ死体と骨の沈む血の海を見て、武器を捨てて大慌てで逃げ去っていく男性。

 ……ただの人だった。


「あー……」


 どんどん頭の中が戦闘用から平時に戻っていく。

 ……またやってしまった。




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