夢の終わり朝の始まり
これは一体どいういうことえだろう?完全なる黙の中、月明かりに照らされた僕と君。僕は君の腰に手を回し、君は僕の肩にもたれかかる。
心臓の音が聞こえてくる、君は顔を上げ、潤んだ瞳で僕を見た。僕は何処か、居心地の悪さというか、何とも落ち着かない気分になる。
不意に言葉が湧いて来る。それは昔からよく言う言葉、何ともロマンチックな言葉だ。
曰く〝お月様が見ている〟だ。
甘やかな夢を見ている最中の、桜の木の下に佇んでいる時のように優しげで、綿毛に包まれているように柔らかな夢を見ている最中の目覚めは、何かを失ってしまったような喪失感や、どうしようもない物悲しさが付きまとう。
〝お月様が見ている〟だって?
ため息が一つ。
悲しみと疲労感とがない交ぜになったため息が一つ、口を通して心から出てくる。まどろみの布団の中で、チックタックと歌う秒針に耳を傾けていると、段々と心に朝日が差し込んでくるのが分る。
ようし、夢は終わり。現実の時間だ。のっそりと布団を出てベッドに座わる。
ため息が一つ。
今度のため息には疲労感や悲しみは入っていない、動く前の深呼吸のようなものだ。
そうして今日が始まる。
そうやって一日が始まる。