第三話
やっと説明パートに入りました。これでやっと登場人物たちの名前が普通に使えます^^ここは説明担当の後輩君に交代してもらってます。これから先も彼にはお世話になる予定です。以後お見知りおきを。
――放課後
正面玄関を入り下駄箱を抜けた正面、大きなホワイトボードがあり学校の見取り図が描かれている。ボードの隅には各クラブの名前が書かれたマグネットが備えてあり、それぞれの教室にクラブ名が書かれたマグネットが貼り付けられている。
「今日は......3-A、先輩達の教室か」
確か今日は定例会議だから先輩達は遅れてくるって言ってたな。ホワイトボードの前で推理小説研究会の名前を確認していると、一際大きな声が聞こえる。
「裕太~今日はどこだーー」
廊下の少し遠目からでもハッキリ聞こえる大きな声で僕を呼ぶ声が聞こえる。黒いブレザーに青いネクタイ、坊主頭で標準声量が結構大きい彼は僕の親友、田中健吾である。僕と同じクラスであり、同じ推理小説研究会所属の二年生。僕は白井裕太、とりわけ背が高いわけでもないし低いわけでもない、これといった特徴がないごく普通の高校生です。
ここは私立巳那月学園。県内屈指の進学校で、誰もが知っている有名大学へ進学するならここが一番の近道。なんて呼ばれるくらい偏差値の高い学校です。そんな進学校ですが、スローガンは『広く柔軟に』であり、勉学だけでは学べぬものをスポーツや社会経験を通して学び成長して欲しいという学園長の強い想いが込められている。
この学校では生徒達の自主性を養う為、クラブ活動の自由が認められている。最低限の人数さえ揃えば顧問がいなくても活動ができ、その活動内容は自由。どんな個人的な趣味事でも人数が揃えばクラブとして認めてもらえる。といったものだ。
勿論、危険を伴うものや学生としてそぐわぬ内容のクラブは承認されない。すべては生徒会によって判断が行われており、ここも生徒の自主性を尊重した形となっている。
そうなると、生徒会の審査が入るものの大概のものはクラブとして認定されるので小さなクラブが大量に出来てしまう事となる。その中の一つが僕達の推理小説研究会です。
クラブが多くなるということは当然の事ながら部室の数が足りない事態となる。部員数が多く人気のあるクラブは活動拠点として部室が割り当てられているが、弱小クラブには部室がない、従って毎回移動教室となる、あのホワイトボードは各クラブ、特に小さいクラブが今日はどこで活動しているかを掲示するためのものです。標準は一教室に二つのクラブが共に活動するのですが、時には三、四のクラブが一つの教室にまとめられることも間間あります。
天気が悪く運動部が室内で活動する時は、更衣室がわりに教室が使われるので空き教室の数が圧倒的に減り、弱小クラブは残り少ない教室へと押し集められてしまうことがあり、最高で5つのクラブが同じ教室で活動することもありました......。
「そんな大きな声を出さなくても聞こえてるから」
堪らず健吾に注意したけど本人はなんの事だか理解していない様だった。これもまたいつものことではあるのだけれど。
僕達は他愛のない会話をしながら3-Aの教室へ向う。
「そんでさ! 今日もまたスミ先に叱られてさーそれがまたいいんだよ~」
数学の美墨先生。銀のアンダーリムフレームのメガネに灰色のスーツでビシッとキメたスタイル抜群のクールな美人教師だ。あの冷たい視線が堪らないと絶賛する男子がいるかいないとか? 健吾もそのようなことを言っていたような気がする。健吾はSとかMとかで表すならきっと後者なのだろう。
あまり他の人には聞かせたくない会話ではあるが、健吾の声量で周りにダダ漏れになるのは諦めるしかない。僕だけが少し恥ずかしいと思っているだけだからいいんだけど......。
くだらない話をしている間に目的の3-Aの教室にたどり着いた。引き戸の扉を開くと教室前方、教壇側には他のクラブがいる、ウチのクラブは後方窓側に集まっていた。
一番後ろ端に座っているのは推研(推理小説研究会の略称)唯一の一年生部員、杉崎駿一。大凡スポーツとは無縁な細い体であるがリムのないツーポイントのメガネを掛けていて勉強ならおまかせ、みたいな優等生タイプの少年、クラスはBクラスで僕ら二年生組より頭がいいかも。
一年生杉崎の前に座る小柄な女の子、元い小柄な女性は推研の紅一点にして推研のまとめ役にして大黒柱、副部長の深山実花先輩。僕達は普段『ミカ先輩』と呼んでいる、これは初めて会った時にそう呼んで欲しいと本人から要望があったのでそう呼んでいる。一年生の杉崎よりも背は低いが胸のところに見えるのは赤いリボン、間違いなく三年生です。ポニーテールをまとめ上げた髪をピンで止めた髪型をしているミカ先輩。前に一度「髪を上げないでポニーテールのままにしないんですか?」ということを聞いてみたら、髪を垂らしておくと引っ張る輩がいるのよね。と遠い目をして説明してくれた。誰か? とは言わなかったがそれについては言われなくともわかるワケで。
一番小さいが一番大きな存在の人で、姉御肌。まさに『みんなのお姉ちゃん』である。クラスはAクラスでこの学校での成績トップクラス集団の一人である。
この学校でのクラス分けは成績によって決まっている、成績の良い順でAから振り分けられています。入学試験の成績で最初のクラスが決まり、その後は学年が上がるごとに成績により上のクラスに上がったり、下のクラスに下がったり、現状維持でクラス替えなしとなっている。
学年を表すのは、男子はネクタイ、女子はリボンで色分けされています。現在は、三年生が赤、二年生が青、一年生が緑になっている。三年生が卒業するとその色は次に新入生へと回ることとなります。
「ミカ先輩なんでいるんですか? 今日は会議だから遅いはずじゃ?」
ミカ先輩が纏う冷めた空気に気づくことができない健吾は素直に質問をしてしまう。僕は慌てて健吾の言葉に静止を掛けるが、声量がある健吾の声が聞こえなかったなんてことは相当な人ごみでなければ通用しない話なわけで。
「今日は来なくていいって言ったのよ、何故だか、ね」
語尾の力強さにも不機嫌な様子が窺える。僕と杉崎はその雰囲気に怯えているのだが、やはり健吾はなにも感じていないようだ。
「へぇーそうなんですか~」
自分で聞いておきながらさほど気にはならないといった感じの返事をして、杉崎の隣の席へ収まる健吾。僕はその前の席、ミカ先輩の隣へ座る。
一人を除いて気が休まらないこの状況、こんな時は本当に健吾が羨ましくなる。
ミカ先輩と杉崎は静かに読書。健吾と僕はここへ来るまでにしていた話の続きをしていたが、僕はこの張り詰めた空気に話の内容は全然入ってこず生返事を繰り返すばかりだった。
そんな不毛な時間を過ごしていると、軽快な足音が聞こえ教室後ろ側の扉の前に大きな影が写しだされた。この瞬間ミカ先輩の眉間のしわが一瞬動いたことを僕は見逃さなかった。
扉に写る影が何かしらの準備をした後、扉と勢いよく開かれた。
バーン!と音がたつ様に勢いよく扉を開きながら自分の口でも効果音を付ける様に「バーーン!」っと言って、高笑いと共に教室に入場してきた。
「聞けー! 皆の衆!! 我が推理小説研究会にも創立以来初となる部室が、遂に出来ることとなったのだーー!!!」
僕らの前まで近づいて来ると謎のポーズをとり再び高笑い。
「シンヤ先輩!!? それは一体どうゆうことですかーー!?」
先輩のこういうノリが好きな健吾は、先輩が求めるものを瞬時に理解して見事な返しをした。
「聞きたいか?」「聞きたいです!!」数回同じ言葉のラリーをしたのち、語り始めた先輩。
「時は戦国永禄三年、桶狭間の戦い。彼の勇猛な武将織田信長は、今川軍二万五千の軍勢に対し自軍三百の兵を用いて奇襲を仕掛け勝利したと云われる――その信長公を由来とする奇襲作戦を遂行したことによって我々推理小説研究会は大軍勢を退けることに成功したというワケなのだよ、諸君!」
と啖呵を切り再び謎のポーズを決めた先輩。
彼が我が推理小説研究会部長の新谷真太朗先輩。普段呼ばれている苗字の『新谷』を言い換えたアダ名『シンヤ』を、そのまま親しみを込めて使い、僕らは『シンヤ先輩』と呼んでいる。これに至ってもミカ先輩がそう呼ぶといいよ、ってな感じで決まったのであるが。
シンヤ先輩は身長百八十センチほどある大柄な人で、生粋のスポーツマンと見られても不思議ではない体格であるが頭も良い、ミカ先輩と共に三年間Aクラスを維持し成績も学年順位一ケタ台を常に保ち続ける強者である。しかし勉学にはあまり興味がないので勉強は『適度』にやっていると言っていた。それでこの成績なのだから恐ろしい人です。
見た目の体格通りスポーツも得意で運動部から助っ人を頼まれることもしばしばある。そんな凄い人なんだけど、こんな性格で僕達には理解しづらい事をいつも楽しげに話している。この性格には少し困ることもあるのだけれど、とても後輩思いの良い先輩です。
ミカ先輩とは幼馴染で、多分学校内でシンヤ先輩の暴走を止められるのはミカ先輩だた一人だと思われます。因みに先輩達の幼馴染はもう一人いて、生徒会長の須藤浩平先輩です。優しい性格で勉強もできて、皆からの信頼も厚く人気があり、人の上に立つのに申し分ない先輩です。生徒会長も含め、幼馴染三人はこの学校でAクラスを三年間維持してるようでDクラスの二年生組には恐れ多い方々であったりします。
「シンヤ先輩!結局どうゆう意味なんですか!!?」
ノリの良さだけでシンヤ先輩に合わせていた健吾だったが、武将だの、奇襲だの、の説明では本筋が見えてこないと懸命な判断をして、素直に意見を述べた。
「要約すると、全校生徒に勝負吹っかけてきた! てな感じかな?」
そんな簡単な話で済むなら最初からそう言えばいいのでは? という思いが駆け巡ったが、今先輩サラッと凄い事言わなかったか?! の方が強くて僕達三人は間の抜けた表情のまま固まってしまった。
一人静かにシンヤ先輩の戯言を聞いているミカ先輩。いつもならすぐにでも言い争いになっている所なんだけど......? そう感じ始めた、その時! 僕と健吾の間を抜けて何かが飛んでいった。シンヤ先輩の死角を突いて飛ばされたはずの『その何か』は難なく片手でキャッチされてしまった。シンヤ先輩の手に収まったことで初めて飛ばされたそれが、四六判書籍だとわかった。
「四六判を投げるなんて危ないだろ? 本は大事な財産だぞ」
シンヤ先輩の少しズレた発言にも未だ冷静に対処するミカ先輩。
「ごめんなさい、真太朗クン。本は大切な財産、そんな大事なものを投げるなんてとても悪いことだったわ。次からは手頃な石を集めておいて、いつでも投げれるように手元に用意しておくわね」
ミカ先輩は笑顔で容赦ない言葉をぶつけている。
「石は勘弁してください。当たったら痛いです。血が出ます」
シンヤ先輩の無機質な返答にミカ先輩は到頭怒り出してしまった。
「昔からそうだけど、なんでいつも一人で勝手に動くの? 一言相談があってもいいでしょ!? 朝だって何も言わずに行くし、放課後も急に来なくていいとか言うし」
ミカ先輩が怒っているのはどうやら後半の方なのだろう、本音が見え隠れしている。
言葉で怒りをぶつけただけでは収まらないミカ先輩はシンヤ先輩に詰め寄る。大きいシンヤ先輩より頭二つ分くらい小さいミカ先輩とが並ぶと、二人の非対称感が更に際立って見える。
「言ったら反対するだろうが」
シンヤ先輩も軽く反撃を試みるが、当たり前よというミカ先輩の意見の方が最もだ。
「大体、生徒会と揉めるってことはコウちゃんに迷惑が掛かるってことでしょう?」
コウちゃんとは幼馴染である生徒会長のことです。
どうしてコウちゃんまで巻き込むのよ。ミカ先輩の抗議を、面倒だなと言わんばかりにそっぽを向いて対応するシンヤ先輩の態度に怒りは増大していく。
そして最後はいつも追いかけっこが始まる。
後輩である僕達は口には出せないが、『また夫婦喧嘩が始まったな』と微笑ましく眺めてしまう。こう思っているのは僕達だけではないはず。
騒ぎ立てる人二人、それを止めることができずあわあわするだけの人二人、騒ぐ者達を叱り場を治める人一人。
ミカ先輩がいなくては収拾がつかない、ミカ先輩は推研には欠かせない存在、ミカ先輩はまさに大黒柱なのである。
いつもこんな感じで楽しい時間が過ぎていく。
これが僕達の推理小説研究会です。
文字数は多いですが説明だけでストーリーは何も進んでいないです。終わり方もこれでよかったのか?とか自身で思っていたりしてます。多分しておきたい説明は出来たと思います、多分.....。