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アクティブアフタースクールレコード  作者: プリンシプル
11/11

エピローグ

 桜も色付く春の陽気。窓から入ってくる暖かい風に乗って、桜の花びらが舞い込んでくる。


 新学期になり、予定通りに建物が完成してそこが僕達の部室となった。結局先輩達は一度も使うことなく卒業していった。完成予定は初めから分かっていたのだから、この部室は僕達の為、後世に残す目的のみで先輩は手に入れた、ということだろう。これは先輩の優しさであり、そして無言の圧力プレッシャーでもある。


 四月。推理小説研究会の初めての部室。まだ荷物が片付いていない室内でいつもの活動を行う。それにしても、まとめ役がいないだけでここまでだらけてしまうとは……。

 コンクリート作りの階段を上る足音が聞こえる、来客のようだ。入り口の扉が開かれる、真新しい扉は無駄な音をたてず静かに来客を招き入れた。


「こんにちは、推理小説研究会の皆さん。今、少しお時間頂いてもよろしいでしょうか?」

生徒会長が副会長を連れてやってきた。前会長、須藤先輩の後を継ぎ生徒会長となった立花さん。通常行われる選挙をすることなく当選となったのは、他に立候補者がいなかったからなのか? 立花さんがそれだけ人望があったのか? そのへんはハッキリとしないが、選挙があったとしても彼女が選ばれるということに違いはなかっただろう。副会長には会計だった和合さんが受け持ち、女性中心の新しい生徒会が誕生した。


 先程まで机にだらしなく突っ伏していた健吾が、来客の声を聞いた瞬間に跳ね起きる。勢いで椅子が後ろに派手に倒れた。


「よろしいも何も、何時! でも! 来て頂いて、くつろいでください! おもてなししますよ♪」

いやいや、我がクラブに『おもてなしセット』なんてものありませんから。この健吾の過剰な反応は、新しい部長が決まり初のクラブ長会議でのあからさまな態度でわかってしまったことなんだけど……新しく生徒会長に就任した立花さん、彼女の前だと緊張して話し方がおかしくなる。つまり、そういうことだ。

 いつ頃からかは覚えていないが、立花さんは髪を伸ばし始めて去年に比べるとかなりの長さになっている。そのことがより、大人っぽさを感じさせる。そして、笑顔が多くなった。これは天敵が卒業していなくなったお陰かと推測される。しかし優しいだけではない、優しさの中に厳しさもある。その厳しさに喜びを感じる人達がいる。その一人だと思われる健吾。立花さんの言動や態度が、健吾の心を捕えたのである。

 お気持ちだけで結構ですよ。会長は優しく微笑み、やんわり拒否の姿勢を取った。それもまた、その手の人には堪らないのだろう。

 「去年の文化祭では、とても楽しい出し物を催していただきありがとうございます。参加した人達から大変な反響を頂きました。つきましては、是非! 今年も推理小説研究会で何か楽しいイベントをやってもらえないかと思い、お願いに上がりました」

会長の笑顔が健吾に向けられる。狙ってやっているのか……それとも天然? どちらにせよ、ここまでされて健吾が断わるはずがない。


「はい! 新部長、田中健吾と我ら推研部員にお任せください! 必ずや立花さん! いえ、生徒会長の為に素敵なイベントを!!!」

「ありがとうございます、楽しみにしていますね♪」

会長の満開の笑顔に、健吾は直立不動で敬礼をしている。

満足のいく返事をもらえて納得の生徒会長。健吾は僕の動揺に気づくことなく、こちらも満足げな顔だ。

 生徒会長が出ていった後も、階段を降りる音が聞こえなくなるまで直立を維持する健吾。足音が遠ざかったことが確認できると再び崩れ落ちる。さっきまでの元気はどうした? 是非ともその力を通常で維持してもらいたいものだ。

「健吾! あんな約束してどうするんだよ!!」

「どうもこうも、また去年みたいなイベントすればいいんだろ? ダイジョブダイジョブ~、なんたってウチにはシンヤ先輩がいるんだぜ!」

「先月までは、ね。」


  ……ん?! ……あーー!! そうーだったーーーー!!!!!!


健吾の一際大きい声が、開いていた部室の窓から外へと飛び出した。


 『推理小説研究会』現在の部員数、三人。最低活動人数に一人足らず。先に大きな問題を抱えてしまったが、まずは一人! 一人でもいいから部員確保が最優先だ。


 部室の窓から桜の木が見える。満開までは、まだ少し先だ。今年の桜は少し早いピークを迎えるとニュースで言っていた、我が『推理小説研究会』も少しでも早く本格始動したいものだ。といってもやることはさほど変わらない気もするけど……新しい風が吹けば、変わることある。僕達がこの部室にいること、これもまたその恩恵の一つなのかもしれない。



部室の窓から桜の花びらが一枚、暖かい風に乗ってやって来た。ひらひらと静かな足音で。






長い間(更新期間的に)お付き合いありがとうございました。これにてこの作品は完結となります。短い作品ですが書き始めてから終わるまで約半年かかりました、とはいえこの作品のみ更新していたらもっと早く終わっていたわけですが……。基本的に現代的な話が読むのも書くのも好きなので、ある程度そこに固執はしますが色んなジャンルにも挑戦してみたく、「JKとゆく、異世界の歩き方」(ファンタジー)、「オ・ト・ア・ト~仮想世界からアイを込めて~」(VRMMOモノ)なども書いています。お時間があればそちらも少し目を通していただけたら幸いです。

えっ? この話は終わっていなのでは? それは「終わりは始まりであり、始まりは終わりである」ということで^^

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