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キッチンにティーバッグと薬缶があったので勝手にお茶を淹れ、飲みながら待つこと三十分、ようやく変身を終了したユウミが、
「じゃーん! どう? 似合う?」
と言いながら出てきた。
今日は少し長めの赤っぽい茶髪のボブカットで、デニムスカートとにボーダー柄のチュニック、薄いオレンジ色のノーカラージャケットと、カジュアルな格好だ。
「あー、いいんじゃないかな」
と答えると、ユウミは眉を寄せた。
「お兄ちゃん、今言葉の後ろに『かっこどうでも』って付けたでしょ」
なぜ分かったし。
「ところでお兄ちゃん、その格好……」
ユウミは俺の服装(チェック柄のシャツにグレーのチノパン)をじろじろと眺めると、
「うーん、四十点」
と評価を下した。
「……何点満点で?」
「百点満点に決まってるでしょ」
ユウミは頬を膨らます。
「おっさん臭い。オタクっぽい」
「そんなにひどい?」
そりゃ真面目に考えて選んだ服装ではないけど、そこまで言われると若干凹む。
「お兄ちゃんはさ、私のお兄ちゃんなんだよ。素材はいいんだから、もっと気を使えばよく見えるのに。誰だって服装と髪型と化粧次第でイメージずっと変わるんだから」
「お前が言うと説得力があるな……」
俺の素材どうこうは置いとくとして、これでもかってくらいイメージが変わる例だもんな。
「まあ、今日はもう家出てきちゃったから仕方ないけど」
「そう思うなら出る前に言えよ!」
「弟としては兄貴の格好なんて気にしないんだけどね。私だから言ってるんだから」
妹になったから言ってるわけか。本当にややこしいなこいつは。
「ま、ユウミのファッションチェックはこれくらいにして、行こっか」
「まだ聞いてなかったけど、どこ行くんだ?」
「大原シティプラザだよ」
大原シティプラザは、俺達の住む茅原市の西側にあって、ここらへんでは大きめの郊外型ショッピングセンターだ。
「なんだ、買いたいものがあるのか?」
「うーん、買いたいものと言うより、ショッピングかな」
「えっ。……つまり買い物だろ?」
「えっ」
なにそれこわい。
「お兄ちゃん、買い物とショッピングを一緒にしないでよ。買い物は、買うものを決めてから行くの。ショッピングは、行ってから買うものを決めるの。分かる?」
「分からねえよ!」
なんだその超理論。聞いたことねえ。
「というわけで、お兄ちゃんは今日一日私の買い物に付き合うこと」
「買い物! 今買い物って言ったよね!?」
「しまった間違えた。ショッピングね」
「まあ、分かったよ。そのくらいならどうせ俺には拒否権ないわけだし、買い物ぐらい」
俺はそう言うと、湯のみを片づけにキッチンに行った。
しかし、料理をする必要はないとは言え、見事に使われた形跡のないキッチンだな。
所有者が優馬では仕方のない話だとは思うけど。
俺に教えたってことは、秘密を共有する心積もりなのだろう。
なら、多少は物を揃えておくのも悪くはないかな。
近いうちに包丁とまな板と皿くらいは用意しよう。
結局のところ、『秘密基地』という言葉に、俺もわくわくしているらしかった。




