カフェ天台球の一日
天代「ふー…今日はあまりに人が来なさそうですね」
私の名前は天代使紗、ここカフェ天台球でただ1人の店員であり、同時に店長でもあります
天代「今日はそんなにお客さまも来なさそうですし仕入れに降りる必要性はなさそうですかね…」
さっきからそんなにお客さまが来ないだとか、仕入れに降りる必要性がないと言っているのには理由があります…それは
天代「そりゃそうですよね〜こんな天気の移り変わりがダイレクトに起こっている高さのカフェなんてそうそう客が来ませんよね…ましてや今日はかなり強めの雨の日ですし。」
そうこのカフェはかなり高いで表せないほどに高いところにあり、宇宙に最も近いカフェとして受賞するぐらいのレベルなんです
天代「でも空を飛べる方達は雨宿りなどを兼ねたりしてたまにくることありますから開けておかないといけないんですよね」
そうしてカフェ天台球の1日が始まる
7:30 店の準備に取り掛かる
天代「今日はもしかしたらあのお客さまが来るかもしれないからこれとこれとこれを……」
ここまで雨の強い日になると来るお客さまの予想まで立ててしまいます。意外と楽しくてやめられないんですよ?
8:00 開店
天代「ま、朝一発目からお客さまが来ることは流石にありえないですよね〜」
こんな天候の悪い日では音楽を聞いてお客さまを待つのも難しいのでカウンター横にある漫画や小説を読みます。最近気に入っているのはこのキルストラルグル・キャラバンロンドって小説なんです、なんでもこことは違う遠い地で実際に起こった神が産まれるまでの話を書いているらしく、壮絶なキャラバンの旅路と仲間達の絆で神を倒して…そして新たな国を作り民をまとめあげたところで完結しました。
私も神様には何度もあったことがありますが、まだまだ知るべきことはたくさんあります。今度この国に長期休暇を取って行ってみるのもいいかもしれませんね
9:30 第一お客さま来店
ドラゴン「久しぶりだな、天代殿」
天代「あっ!ドラゴンさん!お久しぶりですね、ご注文はどうなされますか?」
ドラゴン「そうだな…コーヒーはグアマテラの細挽きで頼む、後はこのバラトカゲのサンドイッチを2つ頼む」
天代「はい!今すぐにお作りいたしますね!」
そうして天代は特殊なコーヒーメーカーに豆をセットし稼働させ、それを尻目にサンドイッチを作り始める…
ドラゴン「時に天代殿…返済の方は大丈夫なのか?ここにはたまに休息のため立ち寄るからいなくなってもらっては困るんだが…」
天代「まぁその点については行き違いもあったので暫くは大丈夫ですよ〜心配かけてすみませんね…っとサンドイッチとコーヒーです!お熱いうちにどうぞ!」
ドラゴン「おぉ…美味しそうだ、いただきます」
天代「ドラゴンさんこそ今度の武闘大会は大丈夫なんですか?この前来た時に強力なライバルが久しぶりに出場するって言ってたじゃないですか」
ドラゴン「それなんだが…アイツまた強者の匂いを嗅ぎつけてすぐ旅に出たらしい、なんでもグルメ家の龍族の3人組なのに強さも段違いなんだとよ。それだから結局武闘大会には参加せずじまいだ、まあそうなったら俺の相手が務まる相手など多分いないだろうがな…」
その目は少し物足りなさそうな感じがしていた
天代「ドラゴンさんも、強者を求めて旅を‥とかはしない感じですか?」
ドラゴン「そうだな…今の環境が落ち着いてきたらやってみるのもいいかもな、コーヒーとサンドイッチ美味しかったよ…ありがとう」
天代「ご来店ありがとうございました〜!」
12:00 昼食
天代「今日の昼食は天カレー位1stでも作りましょうか」
私は天カレーの位3rdまで作れますが、凄い料理人だと9thの天カレーを作れる人もいるらしいです。今日はあまりお腹が空いてないので1stにします
天代「ん〜!やっぱり天カレーは美味いですね〜!今度の週末は下に降りて食材買って3rdの天カレーでも作りましょうか」
晴れた日だとたまに昼食代わりにくる人もいますが、今日はあいにくの雨なので昼にお客さまは来ませんでした
13:30 掃除
お客さまがまだ来ないかもと思ったうちに再度掃除をしてしまいます。今日は雨の日なのでたまに出る雨漏りにも気をつけていきたいです。
天代「ふー!でもこんな高所にカフェ建てるってなった時は驚きましたがエルフの森から譲っていただけだ特殊な木材で老朽化などの諸々の課題は解決できてるので助かってます」
エルフとの交渉は大変でした。なにせうちの部下が勘違いとはいえ森を燃やしてしまい…一時は話どころではなくなったのですが、私が一晩で森を戻して環境改善してなんとか譲って貰いました。まあ代わりに返済するものができてしまったんですがね…この時ばかりは部下を引きずり回そうかと思いましたよ
14:30 第二お客さま(団体)来店
ガーゴイルA「ふぅ…全く人使いが荒いぜあの旦那は」
ガーゴイルB「そうだな…でも確かに信用されて任せられていると感じるようなものを託されてはいるな」
ガーゴイルC「それより長時間の飛行でお腹が空いたぜ!なんか頼もうぜ」
天代「こちらメニューになります、ご注文が決まったらまたお声がけください」
ガーゴイルA「ありがとう…ふむふむ、お前はどうする?」
ガーゴイルB「そうだな…これにしようかな。お前は?」
ガーゴイルC「うーん、飲み物どうしようかな?」
天代「どうしましたか?」
ガーゴイルC「それがコーヒーが飲めなくてな…」
天代「なるほど…ちょっと他の飲み物ないか探してきますね」
その瞬間扉が勢いよく開けられ、ガラの悪そうな冒険者が数名現れる
冒険者A「見つけたゼェ!よくも盗んでくれやがったなガーゴイル共!」
ガーゴイルC「な、なんの話だ!?」
冒険者B「とぼけるん〜じゃないわ!アタシたちの冒険に必要な回復薬とかを返しなさいよ!」
天代「本当なんですか?」
ガーゴイルA「んなわけねぇよ!この荷物運ぶためにずっと飛んでたんだから盗む暇なんて」
痺れを切らした冒険者がガーゴイルに掴みかかる
天代「お客さま!店内で暴行沙汰は…」
止めに入った天代は冒険者の懐のポケットに入っているあるものに目が止まる、そしてそれを取り出す
天代「これは…天鎖の雫!?こんなもの下界では普通に手に入るものではありませんよ…それこそ窃盗でもしなければ」
すると冒険者達は各々武器を取り出した
冒険者A「ケッ!随分と手先が悪い店主だな!バレちゃあしょうがねえ!ガーゴイルごとやっちまえ!」
ガーゴイルA「クッ、問答無用か!」
ガーゴイル達も戦闘対戦に入る、先制で攻撃したのは冒険者の方…だったが
天代「天剣刃!」
冒険者1人を入り口の手前まで吹っ飛ばす!
冒険者B「なんだぁ!?」
天代「うちの店で暴行紛い…お客さまに冤罪をふっかけるとは許せません!即刻ご退店…いや!ご退店させて頂きます!」
冒険者C「店員だろうが関係ねぇ!やっちまえ!」
しかし戦いは天代の圧勝であった
ある冒険者はラリアットをくらい、ある冒険者は右ストレートをもらい、ある冒険者は固められ…そうしていろいろな打撃などをもらった冒険者達は全員床に転がることになった…
冒険者A「なんだこいつ…普通じゃねえ…」
ガーゴイルA「アンタ…そうとうな武道の使い手だな」
天代「うちの店は壊されると修繕大変なんですからね?暴れられても困りますし何か起こる前に締めるのが一番ですよ」
ガーゴイルB「大変なんですね、1人で店を運営するのも」
天代「んー、あっ!この冒険者かなり美味しそうな飲み物持ってましたよ!これ飲みませんか?」
ガーゴイルC「窃盗な気もするがいいのか?」
天代「まー慰謝料ってことにしときましょーよ」
ガーゴイルA「一波乱あったが、メニューが決まったから作ってもらえないだろうか」
天代「はーい!今すぐお作りいたしますね!」
ちなみにガーゴイルAさんは中細挽きのコロンビアにバッシュネスバーガー、ガーゴイルBさんは中挽きのブルーマウンテンにアストラーデケーキ、ガーゴイルCさんは冒険者から慰謝料として頂いたシークワストジュースとワラビマチモチモチをそれぞれ注文されました。
〜15分後〜
天代「お待たせいたしました!ごゆっくりどうぞ〜」
ガーゴイルA「いい豆を使用しているな…どこのものか聞いても?」
天代「これはここから下に下った町にある職人さんから仕入れてますよ、場所書いてあげますからもし自分達でも淹れるようなことがあったらおすすめですよー」
ガーゴイルA「何から何までありがとう」
ガーゴイルB「このケーキ美味いな…これも何処かで売っているものなのか?」
天代「すいません…これは私が自作しているケーキなんです。作り方はあるのですが作り手の魔力量によって結構味が変わっちゃうんですよね…一応レシピ渡しておきますね」
ガーゴイルB「ありがとう」
ガーゴイルC「んー、どっかで見たことありそうなんだよな」
ガーゴイルA「どうした?」
ガーゴイルC「いや、店員のお姉さん…どこかで見たことあるようなって思ってさ」
天代「え゛っ!ソンナコトありませんよ…基本ここでの接客以外では家に籠りっきりですし」
ガーゴイルC「そうなのかーなら勘違いかも、ごめんね突然こんなこと言って」
天代「アハハ…」
ガーゴイルA「とっ、まだ荷物を運んでる途中だったな、美味しかったよ。また来るぜ」
天代「ご来店ありがとうございました!」
16:00 ちょっとした閉店準備
この時間から閉店の時間までは人が来ない方が多く、きても1人とかのことが多いので先にすぐ帰れるように片付けれるものは片付けることが多いです
天代「んしょ、これはこっちに…ってこれは!?」
片付け場所で無くした黒色宝石のイヤリングを偶然見つけることができました
天代「よかった〜これ再生成するの大変だから無くしたままだと困ってたんですよ〜」
17:30 本日最後のお客さま来店
寝具巻「zzz……キリマンジャロの極細挽きをよろしくお願いします…」
天代「は、はい!今すぐお作りいたします。あのー大丈夫ですか?」
寝具巻「ホッホッ…お気になさらず、私はこれでも眠そうながら事件を解決する探偵なので…zzz」
そういうといつの間にか私の目の前に名刺が一枚刺さっていた、そこには寝具巻探偵事務所 所長 寝具巻袋羽と書かれていた
天代「(探偵さんがこの店に来るなんて初めてですね…)」
そう思いつつも天代はすぐにキリマンジャロを使ってコーヒーを作り提供した
天代「お待たせいたしました!」
寝具巻「ホッホッ、美味しそうですね」
そうして満足している探偵さんに少し話を投げかける
天代「探偵さんは何をしにここにきたんですか?」
寝具巻「出張探偵ですよ、本拠地はcome・me区というところにあります」
天代「come・me区、聞いたことない所ですね…」
寝具巻「まああまり外部に知られるような所ではないですしね…そこである程度前にかなり大きい事件があって、それ自体は無事に解決して更に事件も減るようになってきて良いことだったんですが…」
天代「もしかしてあまり仕事が…」
寝具巻「そうなんです、だからここにきてそれなりの事件を解決しつつ生計を立ててるというわけです」
天代「どんな事件解決してたり…とか話せる範囲でいいですから聞いても?」
寝具巻「簡単なものだと猫探しとか落とし物探し…少し歯応えのあるものだと事件解決の協力などをしていますね」
天代「解決できなかったこととかは…」
寝具巻「一応、本拠地では優秀な探偵ということなのでここでは解決しなかったことはありませんよ…でも事件とは関係なく気になることはありますね…」
天代「そ、それは…」
寝具巻「…魔王の娘、ですよ」
天代「…ッ!?」
寝具巻「街の人々はその話をすることが多いのをよく耳にしましてね、やれ一人は魔王の娘は他の地に侵略をかけにいってるなど…他の一人は実はそこら辺に紛れ込んで営みを監視しているとか、素っ頓狂な所だとアイドルをしているのではという話も出ていました」
天代「ア、アイドル!?また要領を得ない話ですねぇ」
寝具巻「まあ確かに魔王の娘はビジュアルが良いって思い込むのも人なのかもしれませんね、うちの区にも人気アイドルの方々いますし」
天代「それで結局のところ本当は何してるのかはバレてはいないんですよね?」
寝具巻「そう見たいですねぇ…でも」
そこで寝具巻は目を鋭く光らせていう
寝具巻「もしかしたら貴方のように、奇異なことをしてすごしているかもしれませんね…」
天代「わ、私ですか…?」
鋭く光った目が元に戻り…
寝具巻「だって魔王の娘なんて普通は狙われそうなものだと思いますけどね…貴方が身分を隠しているとはいいませんが、魔王の娘なら身分を隠して何処かで息を潜めていても…と思っただけです。貴方はそうではないようだ」
天代「びっくりしましたよ〜」
寝具巻「ホッホッ、すみません。コーヒー美味しかったですよ、ありがとうございます」
そうして探偵さんは入り口に向かって行きました
寝具巻「おや?どうしました」
天代「もうほかのお客さまが来るような時間帯でもありませんし、最後のお客さまはお見送りすることにしてるんです」
寝具巻「ホッホッ、いい心掛けですね…この町はいいところです、ここではあちらより隠すことが少なくていい…ご馳走様でした」
そういった後探偵さんが帰ろうとした時に突風が吹き荒れて、少し目を閉じてしまいます
天代「お、お客さまは!?」
その時上にある雲の中に巨大な鳥の影が北の方向に飛び去って行くように見えました
天代「…まさかね」
19:00 閉店
あらかじめ済ませていた片付け以外の片付けが終わった後、店を閉めて家に戻ります
天代「今日は面白い日でしたね」
〜天代の実家〜
ツガルザーク「帰ったか、娘よ」
天代「ただいまですわ、お父様」
実は探偵さんが言ったことは当たっている、多分私が魔王の娘であることはわかっていたのだろう…しかし普通の人には私がそうであることはわからない、何故なら
アザガタナエル「今日も大丈夫だった〜使紗ちゃん〜?」
天代「まあちょっとトラブルがありましたけどちゃんと撃退しましたわ」
私は魔王と天使の間に産まれた堕天使だからである
ツガルザーク「む?お前に手を出す悪い奴がいたのか、教えてくれ。すぐに滅ぼしに行く」
天代「もう、大袈裟ですよお父様」
アザガタナエル「全く!貴方が出ていったら余計に拗れるでしょう!で、ちゃんと締めたんでしょうね?」
天代「は、はい!お母様から習った天界殺法で全員沈めておきました」
アザガタナエル「偉い!不届きものに遠慮はいりませんよ」
ツガルザーク「こわ…」
天代「今日のお客さまは面白い方が来てくださったんですよ!」
〜娘、両親にお話中〜
ツガルザーク「ほう?巨大な鳥かもしれない探偵とな?妖怪の類か…全く外の世界の者は面白いな」
アザガタナエル「そんな方が探偵ですか…何か疑うべきかとも思いましたが使紗ちゃんが何も感じないなら大丈夫な存在なんでしょうね」
天代「っと…それじゃお風呂とか入って残りの時間は自由にすごしてきますね…」
〜全ての予定を済ませて就寝前〜
天代「明日はどんな人が来るのでしょうか…」
私は昔からどんなものでも心が読めたり、いろいろなことを知れてしまう能力のようなものがありました。それのせいで余計な気遣いやうまくいかず空回りしたりすることが多く、うまくいかないまま成人にあたる年齢になりました。両親はすごく優しいです、異教ともいえる結婚を成し遂げて子供の私にも親身に接してくれます。そして両親の提案であのカフェ天台球でたった一人で働くことになりました。最初はまた空回りかと思いましたが、一人の環境で少ない人数の相手ならなんとかこなせることで次第に自信を持つことができました。今ではカフェ天台球に来てくれるお客さまと楽しくお話しができて嬉しいです。
天代「ふふw明日はどんなお客さまが来るでしょうか」
こうしてまたカフェ天台球の一日が始まる…
カフェ天台球の一日 fin