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日本黒示録  作者: 方伯謙
3/5

3.漂流国家

長く訂正の期間をおいてしまった申し訳ありませんでした。

私事で慌ただしい日を送っておりました。

10月8日に、また少し改訂しました。どうも意気込みだけが先を進んでしまっていけません。

民主党政権による外交・戦略の停滞で日本が世界から後れを取った期間は4年にわたった。

この間世界はあらゆる方面で前進をしていたが、日本だけが階段昇降という何の後ろ盾もにない中で準備運動をするように停滞した政治的期間を送っていた。

こうした現状でも、進むことに人やりである国は邁進の槍をふる。普天間の問題から向こう米国は日本の動向に対して極めて懐疑的ながらも、アジア共同体構想にはしっかりと横やりを入れ続け、簡単に日本が宗主国を変えられないような外交手腕はしっかりと発揮していた。

日米安保は太平洋諸国にとって極めて大切なものであるという認識は、当時のルーピーズ政権である民主党も表向き理解はしていたようだが、国際社会に不慣れだったルーキー総理は自分が日本国という会社社長になった事にたいする責任感をまったくもっていなかった。

機会は訪れたと中国が身を乗り出す、そういう事件がこの時期に起こっていた。




騒音をうずたかくあげる小鳩のヘリから両耳をふさぐという茶目っ気を見せて劉歩繊はデッキに降り立った。

軍艦というには白すぎる感じで、海の潮を絡ますことで目に痛い、それが第一印象てしてあがるのが中国海軍の船の上に。

蘭州級駆逐艦、蘭州は2013年までは南海艦隊にて司令方艦艇をしていたチャイナイージスは現在東海艦隊司令方として使役されていた。

アメリカのイージス艦の情報をスパイし、それを元に作られたこの船は色々な憶測を各国に呼んだがね今のところ目立った活躍はしていない。

しかし、現在東海艦隊は大事な時期に来ていた。


「お待ちしておりました。司令」

岩石の顔を持つ大男は鉄の棒のように、荒れ気味の波の上にある甲板で敬礼をし劉司令を出迎えていた。

「うむ、天気には恵まれたな」

軽めの返礼、何度か顔を合わせて頷くと

「あれが鄭和か……」

蘭州の前方を走る白い壁に目線を走らせた。

中華人民共和国初の航空母艦。初物の艦艇を組み込んだ新たな布陣。今日より東シナ海にて演習をするという任務の遂行官として劉はここにやってきた。

そして自身もこれほど近くで見るのは初めての空母に片目を閉じ片目を見開いてみせた。

経済成長を続けた中国はついに自国産の空母の建造に成功した。その証に、驚きよりも興味で手で日差しを避けながら建艦の過程を思い出していた。

5万トン級で通常動力型、ロシアから買い取りを行ったヴァリヤーグを基本にスキージャンプ型の滑走路を持つ中国海軍発表では中型空母。

艦体の方は、当初ロシアのウリヤノフスク級図面の解明から得た形を想定していたが、近代常に空母を持つアメリカ海軍の空母をまねた箇所は随所にあった。

完成の時は大仰な電波がとんだものだったと劉司令は顔をしかめるが、この大きさの空母はアジアの国では初めてのクラスという事もあり、各メディアの声が世界中に空母の名を響かせた。

鄭和ジェン・ホゥ

建艦の年月は実に遅れをとり、

「難航する空母建造」と初の試みを達観視していた各国の度肝抜く一艦の登場に、アジアは揺れた。

完成された空母の影には、もう一つの同型艦。

中国がいかに本気で外洋の海へ乗りだそうとしているかを知らしめる名の前に、アメリカはもとより日本は足下を震えさせる事となったが、完成から向こうこの艦の居場所は一行に決まっていなかった。

中国沿岸部を初の空母としてお披露目航海をしてまわり、近海で繰り返される飛行訓令以外特に目立った動きのないまま2年を過ごし姉妹艦である「中山」の落成も近づいた今年、急遽配属が決まった。

東海艦隊に。

「やはり、大きいな」

船というより白い長城が波を切る図。色合いの滑らかさで兵器のもつ刺々しさを包み込んだ空母鄭和の姿に、白髪り劉司令はまぶしそうに目を細めた。

ヘリデッキの上で去ってゆく回転翼の雑音の下で劉は、いつもの癖である問答を艦長にした。

「君は2011年にあった、あの事件を憶えているかね?」

今からこの船が向かう海域は近年、日本国との諍いの大きな現場となっていた。

「もちろん、憶えております」

石のように硬い面構えが、唾を控えた野太い声で答える

白の人民解放海軍軍装、わざわざ司令官の出迎えのために着替えたであろう糊の利いた袖口を見つめながら

「どう思ったかね?」

劉は制帽を下ろし、休めの指示をしながら問うた。

波はこの海域を覆う季節特有の高い物、すぐにでも司令官を艦内に案内したいという気持ちをはね除けるにしては緩い口調で

「あの事件で世界は中国の中身が危険である事を少しだけ垣間見たね」

返事より先に、誘導を促す一言。白髪の痩せた司令官は太陽の欠片がみせるしぶきに目を細め

「アメリカにもしてやられたが」

「言いがかりです!!中国は世界に対して多くの工業力を間貸ししている国であります。あまねく国々にとって安価で安定的な物資を加工精製する能力を有する我が人民に対する国辱にも等しい行為です」

大声で話すには、はばかられる場所にも関わらず艦長は答えた。

例の事件、釣魚島領漁船接触事故。日本でいう尖閣諸島中国漁船追突事故。

資源問題の絡んだこの島の領有権で、お互いの国がトップレベルと、民間レベルで顔をつきあわせたのは正直初めて出来事だった。

常に戦争に対して羊であった日本が、政府の弱腰とは別に燃え上がる愛国心というのを見せる事件に発展した。

もちろんアメリカの情報操作は多分にあった。

日本がアメリカからの離脱、新たな帰属国を中国にするのではという動きに敏感に反応し、あれこれと手を高じてきた国は事件を良いように利用していた。

事実、ヨーロッパ方面では何カ国が中国のやり方を文化的でないという、非難の言葉を発表する。

それを実で取り返すようにヨーロッパ諸国の頭痛の種であるギリシャ国債の買い取り継続を発表する。

「金の力では抑えられなかったしな」

劉司令は白髪の頭を静かに抑え、あの頃の応酬劇を思い出すと苦笑いを浮かべた。

実を取って世界を助けているという力を示し、中国こそが島の領有権を持つにふさわしい国である事を示そうとした作戦は裏目に出ていた。

世界はやはりというか、中国に対して脅威を持ちつつ距離をもった付き合いをしたいと考えていた事が明るみにでただけだった。

「だが、情報は常に一方通行で我らの損失を補填するものもあった」

「はい、私達は常に前へ向かう事を必須とされる大国です。資源無き国に文句を言われる筋合いはありません」

やっと歩き出した司令の後ろを付きそう艦長。歩くと行っても部屋に向かう出なく、ヘリデッキの一番端の波打ちに向かって

あの釣魚島の事件の影で大型油田の買い取りを行ったのは大きかった。

元は日本が75%もの権益を有していた日の丸油田を、米国が横やりをいれイランの制裁のため泣く泣く権利の縮小をした。買い手の付かなくなった油田をそのまま譲渡される形で受け取った中国は、右手で領有権問題で波風を立てながら、左手で相手の弱った所を叩いたという形を理想的に成功させていた。

見事に日米の泣き所を突いた。

それでも劉司令が満足するような結果が全て得られたわけではなく、どちらかといえば世界が中国との線引きを少なからず明確にし後退の一歩を踏み出してしまったという感は否めなかった。

「あれは早急すぎた作戦だった」

事件に一枚噛んでいた司令は自分の失敗に胸を叩くと

「資源無き日本にの持つ驚くべき技術……」

作戦失敗の一因となった日本の驚くべき技術力を目に浮かべた。

レアアースの輸出禁止は表向き中国政府の指示ではないと何度も広報したが、実は制限そのものの圧力を各所にかけていた。

資源無き国は一度は圧力に折れ、頭を垂れたのだが……その後驚くような事をした。

なんとレアアースを必要としていた器機から、不必要とする精密器機を作り出していったのだ。

全てを切り替えるというわけではなかったが、EV車のモーターから携帯電話に使われた物を次々と切り替えていった。

無いならば、変わる形で作り上げる。驚くべき創意工夫と努力の錬金術の前に世界は注目し中国の焦りを見透かされてしまった。

中国には技術が無いわけではない、技術を錬成させる場所がありすぎて散漫化しすぎた。下手に金周りの良くなった富裕層は学歴を持つ我が子を慕いように教育した(一人っ子政策の弊害)彼らは自由過ぎる気質を身につけ、成功しない事からは素早く手を引き、金になる事への執着で中国をある意味牽引したが、執着心や発展、技術の進展にかかる時間を圧倒的に嫌い転職を繰り返すというワーカージプシーの状態が多かった。

つまり成功しなければ意味無しと見捨てる事で技術の前進に一用な時間を切り捨てて、発展を後回しにしていた部分があったのだ。

そういう者達をまとめ、国歌のための力にする奨めを党の中になく、発言力が落ちつつあるという事が明るみに出てしまった。

中央党本部にとってマイナスを際ただせた事件に、司令は何度か小首をひねる。

「日本の技術をどうやって手に入れるか、どう活かすか、それがカギだ」

「そんなもの、いつかすべてが中国のものになりましょう」

艦長の大きな黒い拳は、大声で真っ直ぐな道だけを見て言うが

「ああ、なるとも、だが、そこまで……」

しぶきを上げる波間の空に、司令の目は補則尖る。

「大国よろしく、どっかりと構えた態度をとり続ける事ができるのならば……あんなくだらない事件は起こさなかった事だろう」

針金のような首筋、痩せた肩にかかる威厳は厳しい目線のまま、後ろに従った艦長を睨むと

「勝たなければならない、それも密やかにしめやかに、花火の下の闇のように」

一言一句を丁寧に相手の胸元に突きつけて行く、白髪の知将の目が艦長に覚悟を焼き付けるよう告げると

「そして、技術を持つ日本が手中の猿である事を知られぬように、抱いてやらねばならぬ」

姿勢を改め強い歩調で前に進む、空気を凍らすほどに決意わ告げた司令の後を慌てて艦長以下艦内幹部の者達がしたがう。

「失敗は許されない、だからこそ私が来た」

劉司令は自分の胸を叩くと深く制帽をかぶり直した。

ひさしに隠した鋭い視線の力は、隠されているのに周りにいる者達の肝を冷やすだけの圧力がある。

「今度は……国運がかかっているのだ」

劉司令は自分の胸に手をあてると、計画実行を許可した宗主席の言葉を歯の奥で砕くようにかみしめていた。

左頬に引きつる力のライン

「我が国の歴史は一つ一つの歴史の節目をまるで石をぶつけてくくりつけたように見えるのだよ」

「……そのとおりです。ぶつかり合うという変化を呼び込むからこそ歴史は語られる。それを行う者、行った者の評価などは後の時代にしか解らぬもの……」

かみ砕く心の声を、胃に流し込む老将は離れてゆく大陸に目もくれなかった。

真っ直ぐに、今は白い壁に隠されているあの島に向かって勇み足をねじ込む音のまま部屋に向かった。

私事ですが、長居放置の間も励ましのメールなどを入れて下さる方がいて驚きました。

とても励まされました、この場を借りて感謝を表したいと思います。

ありがとうございました。

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