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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ハーレムの末路

作者: こうじ

 今日も仕事を終えていつもの飲み屋に来ていた。


「カァー、やっぱり仕事終わりの一杯はたまらんねぇ」


 ギンギンに冷えたエールを流し込み乾いた喉が潤っていく。


 この国に来て冒険者になりダンジョンの探索や魔物の討伐などをこなし小銭を稼いでいる。


(そういえば、魔王が倒されてからもう1年が経つんだよなぁ……)


 すっかり平和になり魔王がいた事なんて過去の事の様に思われている。


 実際、当事者以外だと平和になった、という実感なんて無い。


 魔物だって存在してるしダンジョンだってある、多少は弱くなっている気はするがそれだけで日々の生活自体は余り変わらない。


(魔王を討伐して喜ぶのは一部の奴らだけなんだよな、その一部を喜ばす為に命をかけて戦っていた、と思うと馬鹿馬鹿しくなるな)


 俺はそんな事を思っていた。


 どうして、そんな事を思うようになったか、と言うと俺が魔王討伐の為に選ばれた勇者パーティーの一員だったからだ。


 勇者エミル、魔法使いセレビア、賢者ライオス、そして戦士の俺ルドルフがパーティーのメンバーだ。


 国王から命を受けた俺達は魔王城を目指して旅をした。


 最初は4人だけだったが、各地で有志達が『勇者様達を助けたい!』と集まり軍隊みたいになっていった。


 その有志の中には当時の俺の婚約者だったレイラがいた。


 レイラは男爵令嬢で俺とは幼馴染の関係で将来を誓い合っていた仲だった。


 過酷な旅の中、愛する人が近くにいるのは精神的に支えになった。


 しかし、それは同時に苦痛を味わう事にもなった。


 勇者エミルの周囲には必ず女性の取り巻きがいて夜になるとイチャイチャしていた。


 最初は勇者だって成人男性な訳だし性的欲求もあるだろうし、と思っていた。


 しかし、レイラにも手を出してきた、となると話は違ってくる。


 レイラから『勇者様に口説かれた』と言われて俺はエミルの頭を剣でぶん殴ってやろうか、と思うぐらい腹が立った。


 なに、人の恋人に手出してんだよ、と。


 こっちはこの旅が終わったら結婚しよう、と約束してるんだぞ、と。


 更にショックだったのはレイラも満更ではない、という様な感じだった。


 そりゃあエミルはイケメンだったし口も上手い、それに比べて俺は普通だ、勝てる所なんて何も無い。


 それでも、将来を誓いあった仲だしレイラを信じていた。


 でも、ある夜にエミルとレイラがキスをしていた姿を目撃して心が折れた。


 俺は密かに逃げ出す事を計画した。


 なるべく不自然にならない様に逃走する場所を決めていた。


 それは魔王城、最終決戦の場を逃げる場所とした。


 魔王には側近である四天王がいた。


 その内の1人と対峙した時に『俺が相手をするから先に行け!』と言い勇者達を先に行かせた。


 そして、四天王の1人を倒した後、俺は着ていた鎧とか武器をその場に置いた。


 剣で腕を切って血を少し流せた。


 相討ちになった、と偽装したんだ。


 そのまま俺は魔王城を出て行った。


 勿論、母国に帰れないので他国に行き冒険者登録して冒険者になって現在に至る。


 逃げ出した事に関しては後悔なんてしてない。


 あのまま魔王を倒して国に凱旋したとしても俺とレイラが結婚できるかどうかはわからない。


 だから、これで良かったと思っている。


 ただ、魔王が倒された、というニュースが出たんだけどその後の勇者パーティーの情報が一切でてこないのがちょっと気になる。


 魔王を倒した英雄なんだから国だってもっと大きく広める事が出来るはずだ。


 気にはなるけど、流石に母国に帰る訳にはいかない。


 しかし、俺は意外な形でその真相を知る事になった。


 ある日、いつもの様に冒険者ギルドに行くと受付嬢に声をかけられた。


「ルドーさん、新人の方が入って来たので指導役してもらえませんか?」


「俺が?」


「はい、ルドーさんしか空いてる方がいないので」


 面倒くさいなぁ、と思いつつその新人の所に行った。


「あんたが新人か? 俺はルドーて言うんだ、よろしくな」


「あ、よろしくお願いします……、て、もしかしてルドルフ?」


「え……、てっセレビア!?」


 その新人はかつての仲間だったセレビアだった。



「まさかこんな所で再会するなんて……」


「私もよ、何処かで生きてるとは思っていたけど」


「俺が死んだ事、信じて無かったのか?」


「遺体があれば信じていたけど血だけじゃ私の目は誤魔化せない。他の面々は信じたみたいだけど」


 セレビアは冷静だからな、誤魔化せなかった、か。


「でも、ルドルフが消えた理由はわかる。 エミルに恋人を盗られたのがたまらなかったんでしょう」


「うぐっ!?」


 図星を突かれて胸がギュッとなった。


「そ、そういえばなんでお前はこの国に来たんだ?

今頃は英雄扱いされてるんじゃないのか?」


「英雄扱いなんてされてないしどっちかと言うと腫れ物扱いされたから嫌気がさして出たの」


「腫れ物扱い?」


「そう、主にエミルのせいで」


「あいつ、何かやらかしたのか?」


「うん、エミルは死んだのよ、女性達にズタズタにされて」


「はぁっ!?」


「魔王討伐後に国に戻ってきて国王様やいろんな所に報告しに行ったの。 その中に神殿があるんだけど儀式の最中に女神様が現れたのよ」


「女神様が?」


「私も驚いたんだけど女神様がエミルの勇者の力を奪ったのよ」


「奪った!?」


「女神様曰く『自分の力を貸し与えていただけで目的が達成したなら返すのは当たり前の事』て。 まぁ正論だよね、でもエミルが力を無くした瞬間、エミルに付いていた女性達が発狂しちゃってね、どうやら勇者の力の影響だったみたいね」


「想像しただけで地獄だな」


「中にはルドルフみたいに恋人がいたり結婚していたりした人もいるんだけど強制的に別れさせた事になるからエミルに泣きながら詰め寄って、エミルも勇者の力無くしちゃったから女性達相手に成すすべも無くて……、その中の数人がエミルを滅多刺しにしたのよ」


「うわぁ……、それじゃあレイラは?」


「わからないけど、何人かは戻って謝罪して元サヤになったりしたけど中には自ら命を絶った人もいるわ」


 もしかしたらレイラは……。


「どうする? 国に帰る?」


「いや……、もうルドルフは死んだんだ。 それで良い」


「そうね、それでいいかも」


 しかし、エミルは勇者の力を自分の欲の為に使った結果だよな。


 やはり謙虚でないと、と思った。


 それから数年後、とある修道院でレイラと再会するのは別の話だ。


  

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