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竜の里と赤い布



 服に手を通して、鏡の前でそっと立ち止まる。


 クローゼットの中にあった衣装は、どれも肌の露出が多かった。特に肩のあたりがすっかり開いているのが目立つ。胸元こそ控えめだが、背中や腕まわりは風通しが良すぎて、鏡越しに自分の姿を見つめていると、居心地の悪さが込み上げてくる。


「これが、この里の服のスタンダードなのかな……?」


 素材は柔らかくて軽く、布の動きは美しい。でも、自分には少し似合わない気がしてならなかった。肩のあたりをぎこちなく引っ張ってみるものの、どうにも落ち着かない。


 ふと思い出して、鞄の中から赤い布を取り出した。母がくれた、母が嫁いだときに身につけていた手染めのもの。村を出るとき、押しつけられた一枚だった。


「……お母さん」


 小さく呟いて、それを肩にかける。途端に、赤い色が胸の奥を締めつけてきた。まだ一日しか経っていないのに、懐かしさが喉までせり上がってくる。けれど、それを受け止めるにはまだ早すぎた。


「大丈夫。どうにか頑張らなきゃ」


 鏡の中の自分に言い聞かせるように微笑んで、赤い布を軽く結ぶ。もう少し時間が経てば、きっと平気になる。そんな気がした。


 しんとした部屋に、時計の音もない。ただ外の気配を感じながら、静かに待つ。時間の経過は曖昧だったが、陽射しが斜めに入り始めたころ、突然――


「よお」


 扉が、ノックもなく勢いよく開いた。


「わっ……!」


 思わず肩をすくめて振り返ると、そこに立っていたのは、ギルフォードだった。驚きで言葉を飲み込むリアをよそに、彼はじろりと目を細めて、上から下まで一度、無遠慮に視線を這わせた。


 そして、まるで関心なさそうな顔で一言。


「思ったより悪くねぇな」

「……え? あ、どうも……?」


 一瞬、褒められたのかどうか分からず、口を開きかけたリアだったが、結局何も言わずに唇を噛んだ。突き放すような物言いのくせに、わざわざ部屋まで迎えに来るのは、彼なりの気遣いなのか――そんなことを考えていると、扉の後ろからひょいと顔を覗かせた者がいた。


「おー! リア、すっげぇ似合ってんじゃん!」


 弾んだ声で言ったのは、エルマーだった。彼の目がぱっと明るくなって、心からの感想を投げかけてくる。


「なんかあれだな! 竜族の服ってのは、こうやって人間が着ても映えるもんなんだな!」

「そ、そうかな」

「うんうん! 赤、めちゃくちゃ似合ってるし!」


 素直な言葉に、リアは耳まで熱くなるのを感じた。露出の多さをごまかすつもりで巻いた布の色まで褒められると、それはそれで余計に恥ずかしい。

 後ろから続いた声は、対照的に冷静だった。


「時間が押しています。急ぎましょう」


 レオンハルトだった。さりげなくギルフォードの肩越しに現れた彼は、ひとつ頷くだけで、リアの準備が整っていることを察していたようだった。


 リアは一つ息を吐いて、頷いた。


「よろしくお願いします」

「勝手にどっか行くんじゃねえぞ」

「へっ!? や、行かないですよ」


 ギルフォードが無言で踵を返す。それに続くように、エルマーとレオンハルト、そしてリアも後を追って、部屋を出た。


 扉の向こうには、まだ知らない世界が広がっている。怖くないと言えば嘘になる。でも――背中に感じる赤い布の温もりが、ほんの少しだけ、勇気をくれた。



「じゃーん! ここが俺たちの自慢、中央広場だ!」


 エルマーの声が、白い石畳に明るく響いた。


 見上げれば、円形の広場を囲むように様々な店が立ち並び、人々の行き交う姿が活気にあふれている。花を抱えた女性、果物を売る声、木陰で話し込む老人たち――まるでどこかの穏やかな街角のようだが、そのどこかに竜族特有の落ち着いた気配が漂っているのが、リアには不思議でたまらなかった。


「すごい、こんなに賑やかだとは思わなかったです」

「だろ? 人間の町と大差ねぇって、よく言われるんだ」


 横を歩くエルマーは、まるでガイドのように饒舌だった。その後ろ、数歩離れてギルフォードとレオンハルトがついてくる。が、どちらもあまり言葉は発さず、ギルフォードは手を後ろに組んでぶっきらぼうな顔で歩き、レオンハルトはどこか夢見がちに店先の小物を見つめていた。


「ギルフォード様のお嫁さん……ですって?」


 ふと、通りすがりの年配の女性がリアに声をかけてきた。瞬間、周囲にいた数人がこちらに視線を向ける。


「あらまぁ、人間の娘さん? 本当に?」

「随分可愛らしいじゃないの。こんなに小柄で、あのギルフォード様と?」

「竜の血と人間の血が混ざっても、ちゃんと子はできるのかしら……」


「ちょ、ちょっと待ってください! あの、あの……!」


 リアは頬を赤らめながらもどうにか頭を下げたが、質問攻めは止まらない。ギルフォードは「うるせぇしダリィ」と低く一言吐き捨てて群衆を睨んだが、エルマーだけはニヤニヤしている。


「モテモテじゃん、リア! あ、あそこ見て。あれ、薬屋の娘の――」


 エルマーが指差した先で、ひとりの少女が立っていた。


「あなた達、朝から元気ね」


 静かな足音と共に、そのからかうような声は霧の中から現れた。振り向くより早く、リアの前にリーゼロッテが姿を現した。白銀の髪が朝の光に淡く透け、紫の瞳が、昨日よりもどこか柔らかく見えた。

 リアはその美しい姿を見て、同性ながら胸をときめかせる。


「おはよう。私のこと、覚えてるかしら?」

「はい、リーゼさん。お会いできて嬉しいです」


 薄く笑ったリアが小さく頷くと、リーゼロッテも微笑んだ。その微笑みは、初対面の時よりも自然で、ほんの少しだけ感情の色が見える気がした。


「私もよ。こうして、また顔を見られるなんて」


 彼女はそう言って、少しだけ身をかがめた。挨拶でも、お辞儀でもない。まるで何かを確かめるように、リアの瞳を覗き込む。


「どう? この里は。ギルに振り回されてない?」

「えっと、まだ慣れてはないんですけど、皆さん優しくしてくださってます」

「そう。なら、よかったわ」


 リーゼロッテの目元に、ごく微かな安堵の色が浮かぶ。けれどそれはすぐに消えて、彼女はゆっくりと立ち上がると、今度はギルフォードを一瞥した。


「あなたも……ちゃんと案内してあげてるのね。意外」

「あ? 余計な口出しすんな」


 ギルフォードはぶっきらぼうに言い捨てて、そっぽを向いた。


「ふふ。変わらないわね、ギルは」


 リーゼロッテはくすりと笑いながら、リアの方をもう一度振り返った。


「また話しましょうね、リア。あなたのこと……もっと知りたいから」


 その言葉には、何か意味が込められていた。けれどリアにはまだ、それが何かは分からなかった。ただ、自分を知りたいと言ってくれたことに心が温かくなって、リアは小さく微笑みを返した。


「はい。私も、またお話したいです」

「じゃあ、また」


 優雅な身のこなしで背を向け、霧の中へと溶けていくリーゼロッテ。その姿が見えなくなったあとも、しばらくリアは立ち尽くしていた。


「……何で、いちいちリーゼロッテに見とれてんだ」


 ギルフォードの声に、リアははっとして振り返る。


「え、だって。リーゼさん、すごく美人じゃないですか。皆さんは見慣れてるのかも知れないですけど」

「へぇ」


 そう言いながらギルフォードは先を歩き出したが、その足取りはどこかせわしなく見えた。リアは小さく笑って、その背を追いかける。


 谷での二度目の朝。その始まりは、静かで、けれど確かに何かが動き出していた。



 広場を抜けて、賑やかな通りを少し外れたところに、小さな雑貨屋が建っていた。軒先には風に揺れる布と乾いた香草の束、手作りの陶器や布製の小物が整然と並んでいて、どこか懐かしい雰囲気を漂わせていた。

 リアはつい、引き寄せられるように雑貨屋の前へと足を運ぶ。


「うわぁ、可愛い」


 思わず声に出すと、店の奥からぱたぱたと軽い足音が響いてきた。次の瞬間――


「きゃーっ! あなたがリア!?」


 勢いよく戸口から飛び出してきたのは、橙色の髪をふわりと揺らす少女だった。ぱっちりした黒い瞳が好奇心に輝き、リアの前に立つなり、手をぐいっと取って、満面の笑みで顔を覗き込んでくる。


「きゃあ!?」

「あ、ごめんねびっくりさせて…! でもあんまり前から噂ばっかり聞いてたからさ、会うの楽しみにしてたの!」


 その勢いに、リアは一瞬言葉を失った。けれど、手を握る指はあたたかくて、目の奥にある人懐こさには、警戒する気持ちが不思議と薄れていく。


「大丈夫ですよ。初めまして、リアです」

「うんうん! リア、私はメルヴィ。うちの父さんと一緒に、このお店やってるの!」


 そう言ってぱっと手を離し、両手を腰に当てて誇らしげに胸を張る。ほんの少しエルマーに似た顔立ちやら空気を感じて、リアはどこか親しみを覚えた。

 リアのそんな視線に気がついたのか、メルヴィは得意げな表情を浮かべた。


「あ〜っ! エルマーに、ちょっと似てるって思ったでしょ? 親戚だから、よく言われるんだよね」

「え、あっ……やっぱり!」

「でしょでしょ? にしてもエルったら、ギルの嫁取りが新しく決まってからニヤニヤしながら話してくれて。もう、ずっと気になっちゃってたの!」


 そう言いながら、メルヴィは店先に腰かけて、リアを隣に招いた。雑貨屋の前には小さな椅子がふたつ並んでいて、陽射しを避けるように布の屋根がかかっていた。


「ギルのお嫁さんなんだよね? すごいなぁ。ぶっちゃけ、ギルはどんな感じ? うざくない?」

「う、うざい……!?」

「いや、やっぱり竜の雄って手ぇかかるし、ギルなんか特に口も悪いし態度も大きいでしょ? そういうの、人間なら尚更平気なのかなーって」

「えっと……まぁ、正直ちょっと怖いなって思う時もありますけど、でも優しいところもあるんだろうなって……そんな気がしてます」


 リアの脳裏には、一応門前まで出迎えに来てくれていたギルフォードの姿や、自身に与えられた部屋に用意されていた服や小物のことが浮かんでいた。リアが外出することを渋っていたのも、何かしら思うところがあったのだろうと思う。

 メルヴィは「ふうん」と呟き、楽しげに目を細めた。何かを確かめるようにじっとリアを見て、少しだけ声を落とす。


「そっか。なら安心だね」

「そう、ですかね? 仲良くなれたら良いんですが……」

「うん! だってさ、ギルが人間の女の子をあっさり迎えるなんて、誰も想像してなかったの。でも……今こうやって、話してみたら分かる。リアなら、なんか大丈夫そう!」


 メルヴィの言葉は、少し唐突で、でもどこまでも真っ直ぐだった。

 そして少し照れたように笑いながら、耳元でそっと囁く。


「ていうかさ、実は私……他人の恋バナとか、くっつく瞬間とか、そういうの見るのめちゃくちゃ好きなんだよね」

「えっ」

「だから、超応援してるからね。でも何かあったら、うちに逃げてきてもいいよ? あ、もちろんギルが変なことしたら、私がぶっ飛ばしてあげるから!」


 その言葉に、リアは思わず吹き出した。


 この子は、きっと誰の前でもこんな風に笑って、誰かの味方になれるんだろう。言葉に飾り気はなくて、でも、それだけにずっと胸に残る。エルマーに似てるというより、エルマーと同じ方向に、まっすぐ向いている――そんな気がした。


「ありがとう、メルヴィさん」

「ううん。あ、メルヴィでいいよ! みんなの前情報によれば、私の方が年下だもん!」

「ふふ、分かったよ」


 リアがまた笑うと、メルヴィは得意げに鼻を鳴らした。


 ──竜の里の雑貨屋の前。小さな椅子の並ぶその場所で、ひとつの出会いがやわらかく芽吹いていた。


「じゃあねー! また遊びにおいでよ、リア!」

「うん、また来るね」


 話が良いところで区切りがつき、雑貨屋の前で手を振るメルヴィに、そう笑って返すと――


「おいコラぁ……!」


 その声は、雷でも落ちたかのような勢いで頭上から降ってきた。


「えっ……わっ!」


 振り返った先には、ギルフォードが仁王立ちしていた。


「勝手にどっか行くんじゃねえっつっただろうが!」

「えー、ちょっと待ってよギル! 勝手にって、私のお店にいただけだよ?」


 メルヴィがそういうと、鋭い視線はリアではなく、その隣で口を半開きにして苦笑いをしていたメルヴィへとまっすぐ向く。


「見張りがついてねえって時点で“勝手に”なんだよ。どうせ、てめぇがこいつに話しかけて連れ込んだんだろーが!!」

「ひどーい! 連れ込んだとか言い方最低~!」

「うるせえ!」


 リアは、ふたりの勢いに思わず後ずさった。けれどメルヴィはへっちゃらな顔でくすくす笑いながら、ギルフォードの肩を指先で軽く突く。


「そうやって怒鳴ってばっかだと、リアに逃げられるよ?」

「は? どうっでもいいわ」

「ギルが一番気にしてるくせに!!」


 騒ぎを聞きつけたのか、後ろからエルマーが手を振りながら駆けてきた。


「なーにやってんだ、メルヴィ! ギルのセンサーに引っかかったか?」

「やっほエル! 当たり! リアがうちの商品を可愛いって言ってくれただけなんだけど、それにこんなに怒っちゃってさー!」

「おいてめぇな……」

「はいはい、解散解散。時間押してますよ」


 レオンハルトが肩をすくめながら手を叩いて場を収めると、ギルフォードはひとつ舌打ちしてリアの腕をがしっと掴んだ。


「戻んぞ」

「えっ、あ……はい」


 強引な手つきなのに、なぜかその手は熱を帯びている。リアはよろけながらも、素直に引かれるまま足を動かした。


 向かった先は、里に来て最初に足を踏み入れた建物だった。切り立つ岩山の懐に守られたその一室は、外の陽光を遮りながらも不思議な明るさをたたえており、空気のひとつひとつが肌に染み入るような静けさと、どこか神聖な気配を漂わせていた。


 部屋の中心にいたのは、銀糸のように艶やかな髪を高く結い上げた、青い鱗を持つ竜族の女性――ルナルディ。透き通るような蒼の瞳が、リアの姿を認めてふわりと細まった。


「ルナルディ様……」


 思わず漏れた声に、彼女は穏やかに頷く。その声色にはどこか懐かしさがあり、まるで遠い昔に夢の中で聞いたことがあるような、温もりを宿していた。


「昨日ぶりじゃの。ようこそ、リア」


 背後から、ギルフォードの気配が近づいてくる。無言で立つ彼の存在が、この空間に確かな重みを加えると、ルナルディはその姿をちらりと見上げ、くすりと小さく笑った。


「相変わらず、迎えが荒っぽいことよ。乙女の扱いも知らぬなんて、一体誰に似たのか」

「うっせぇ」


 短く返すギルフォードの声には、うんざりとしたような、けれどどこか慣れた響きがあった。ルナルディはそれ以上追及することなく、肩をすくめて優雅に笑い、ゆっくりと手を差し出して椅子を勧める。


 その仕草のひとつひとつが舞のように優美で、リアは自然と歩を進め、静かに腰を下ろした。


「里の暮らしは、どうじゃ。馴染めそうかい?」


 そう問われた声に、リアはわずかに胸を押さえた。まだほんの一日、されど濃密な時間だった。思い出そうとすれば、昨日の出会いも、今日の笑い声も、すぐそこにあるようだった。


「……えっと、まだ分からないことばかりで戸惑ってばかりです。でも、皆さん優しくしてくださって。できれば、私も……この場所に馴染みたいって、思っています」


 正直な気持ちだった。どれだけ不器用でも、まだ頼りなくても、できることならこの場所で誰かに“いていい”と感じてもらいたい。そんなささやかな願いが、言葉の奥に滲んでいた。


 ルナルディは黙ってリアの瞳を見つめた。けれどそのまなざしには一切の試すような色はなく、ただ真っ直ぐでどこまでも深く、確かに相手の心を受け止めようとする静かな力があった。


「そうか。そうしてもらえると、わしらにとっても助かるのう。お前は“来てくれた嫁”であり……同時に、“人と竜とを繋ぐ娘”でもあるからの」


 語る声が、空気の粒さえも震わせるように、部屋の中へと優しく響いていく。リアは自分が思っていたよりも、遥かに大きな期待を背負ってこの地に来たのだと改めて実感した。


「……まぁ、それはさておき」


 ルナルディの声音がふっと軽くなる。眉をひとつ上げて、向き直ったのはギルフォードの方だった。


「結婚の儀式について、少し話をしておこう。のぅ、ギル」

「ああ」


 ギルフォードは短く返事をし、隣で組んだ腕をゆっくりと解く。その口調はいつもより低く、抑えたように落ち着いていた。


「俺の仕事が今、かなり詰まっててな。早くても、式は三ヶ月後になる。下手すりゃ、もっと延びるかもしれねぇ」

「三ヶ月、ですか」

「そうじゃ。長いようで短い」


 その言葉を、リアは小さく繰り返した。声に出すと、数字の輪郭がくっきりと浮かび上がって、重みを持って胸に落ちてくる。


 三ヶ月――それは一瞬にも感じられるし、永遠にも思える。遠い未来のようでいて、すぐそこに手が届きそうな曖昧な距離。でも、決して無意味にはできない時間。


 それまでに、少しでもこの場所の空気に慣れていきたい。

 日々の暮らしの中で、竜族のことを、風習を、そして――隣に立つ彼のことを、少しでも理解できるようになりたい。ギルフォードの怒鳴り声の奥にある、口に出せない想いや痛みを、ちゃんと見つけられるようになれたならいい。


 どうせ添い遂げるなら、相手の嫌なところばかりを見るのではなくて、きっとどこかにある“いいところ”を、大切に拾えるような人間でありたいと、そう思った。誰かに言われたわけでも、義務でもなく、ただ自分自身の意志としてだ。


 リアは、小さく、けれど確かな決意を込めて頷いた。


「……わかりました。それまで、私、ちゃんとがんばります」


 その言葉に、ルナルディは微笑んだ。ゆっくりと目を細めて、蒼の瞳にひとかけらの誇らしさを宿しながら、優しくうなずく。


「お主なら、きっと成し遂げられるじゃろう」


 その声は、どこまでも穏やかで、けれど確かな未来を信じている響きがあった。まるで、古い約束をそっと手渡すかのように、優しくその場に置いて行った。



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