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二十一 ギムナジア 2/2

 放課後。

「レフ、君って下の街、詳しいよね」

 苦手な歴史の授業を終えたばかりで眠そうな級友に、ロディスは神妙な顔で声をかけた。

「……え?」

 珍しい話題を持ち出したロディスがいやに真面目な顔をしているので、レフは不思議そうに向き直る。

「まぁ、ずっと住んでるから、だいたいは」

「上級生達が遊びに出るって、どの辺に行くかとかわかる?」

「……上級生?」

 飛び出したのは、およそロディスらしからぬ質問。教師は側にはいないけれど、あまり大声で離すのははばかられる類いの話題である。周囲を気遣いつつ、声を低くして答えた。

「遊び……だったら、どうせ、その辺の酒場とかじゃないの?」

「制服で?」

「まさか。私服でうろうろしてるのを、何度か見かけたことあるよ」

 ギムナジアでは、学校の格式と生徒の行動に自律を促す意味で、原則として校外でも制服で過ごすよう指導されている。生徒が夜な夜な私服に着替えて街をうろついているなど、それだけで既に褒められたことではないのだ。

「ロディ……どうかした?」

「や、ちょっと気になることがあって、覗いてみようかなー……とか……」

「えええっ!?」

「あっ。別に店に入りたいわけじゃないよ?」

「……なーんだ」

「当たり前だよ」

 冗談ぽく落胆してみせたレフに、ロディスは苦笑した。

 やっぱりユリウスが心配だった。

 十四歳の彼らにとって、十八歳の上級生は、ある意味大人よりも大きく見えるものだ。そして、『彼ら』みたいな親戚は、本当に注意が必要なのだ。

 ユリウスは二人のことを、イヤな相手だが無害と考えているようだったが、そうじゃないかもしれない。ユリウスの父ニコライには弟がいるが、確か独身で子供はいない。ユリウスがいなく(・・・)なった場合、いずれあの従兄のどちらかにバート家の家督が転がり込んでくる。つまり――トッカル大統領の座が、である。

 身内は一番怖い敵になり得る。

 突拍子も無いことを言い出したロディスが、やはり真面目に何か考え込んでいる様子なので、レフは彼らしい明るい親切顔でフムと頷く。

「街だったら案内しようか?」

「……僕、これから行くつもりなんだけど」

「別に構わないよ。まだ時間あるし、今日は暇だったし。夜けっこう遅くまで街にいても、消灯までには充分戻れるよ。俺もちょっと家に寄りたいから、丁度いいさ。でも……一体何が気になるって? 酒場に出入りするような上級生に知り合いでもいるのかい?」

「……まぁ、ね」

「ふぅん……」

 歯切れの悪い返答だ。レフは少し胡散臭そうに顔をしかめるが、詮索するつもりは無いらしく、気を取り直して帰り支度をしはじめた。

 二人はその後、急いで寮に鞄だけ置きに戻って、制服のまま学校を出た。

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