十五 ギムナジア《アリサ》
「それでね、お兄ちゃんは顔が水につくのがずーっとずーっと怖くて……」
「あはは、それじゃ顔も洗えないね」
その日もアリサはジルと並んで、庭の東屋でおしゃべりをしていた。ジルは優しくて、時間が許す限り彼女の相手をしてくれる。
「そうなの。だらしないわよね」
「お兄さん、今でもそうなの?」
「まさか。もう十三歳だから、平気になったのよ」
「はは、そっか」
話し相手が居るのはいい。と、アリサは思った。
ジルやロディスや、他にも色々、いつも病院で話してたのとは違う人たち。みんな言うことが違って面白い。
でも、できれば、もっともっと自分に構ってくれた方がいいと思う。
思えば、最近、だんだん自分が回りの人間からないがしろにされているような気がする。
両親が忙しいのは元々だけど、前はもっと自分に時間を割いてくれていたし……
兄が全寮制の学校へ入ったので家に殆どいないのも元々だけど、前は、もっともっと一緒に居てくれたような。
「………………」
そんなのは嫌だ。
せっかくだいぶ元気になってきたのに。
「ああ、いいなあ」
「え?」
「アリサの髪の色、すごく素敵だ」
「え……っ!?」
悶々と考え込んでいたところに、ジルがサラリとそんなことを言うものだから、アリサは急に恥ずかしくなってしまった。
「あ……あの……ええと……」
一時間しか駄目とか、授業だから駄目とか、言わなければいいのに。
赤くなって口ごもるアリサが困っているのだと思ったジルはハッとした顔をして、焦ったように言った。
「ごめん。嫌だった?」
「ち、ちがうの!」
ぶんぶんと頭を振って、自分の心を表現する言葉を探す。
「その……うれしいな」
気持ちは、とても単純な言葉で言い表すことができた。
時計を持っていないから、今が何時くらいかアリサにはわからない。
でも、もっと一緒にいたい。自分のことを気にして欲しい。
一人にしないで欲しい。
「…………」
どうすれば自分をもっと見てもらえるか。ジルを見つめながら、アリサは必死で考えていた。




