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第5話 境界の町
砂丘を越えた先に、
町があった。
高い柵で囲まれている。
門の前には、二重に鎖が張られ、
兵士たちが、銃を構えて立っていた。
──外に向かって、ではない。
──内に向かって。
乾いた風が、柵を叩く。
「……」
ノアは、立ち止まった。
右手のキューブが、
淡く震える。
壁の向こうから、
誰かの叫び声が聞こえた。
「出してください──!」
「外に出たいんです!」
途切れ途切れの声。
空気は、鉄と砂の匂いに満ちていた。
ノアは、門をじっと見つめる。
静かな風。
砂の音。
柵がきぃ、と鳴った。
──まだ、動く時ではない。
ノアは、
再び歩き出した。
壁に囲まれた町を、
ぐるりと迂回するように。