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第4話 声なき村

村に入っても、誰も声を発しなかった。


老いた者も、若い者も、

互いに顔を合わせても、ただ無言で通り過ぎる。


市場に並ぶ果物。

値札だけが置かれ、売り手も買い手も何も言わない。


広場の中央、

小さな噴水の音だけが、かすかに響いていた。


子どもの手が、震えていた。

老人たちは、黙ったまま、空ろな目で座っている。


「……」


ノアは、歩く。


空気は、重く、冷たい。


右手のキューブが、

かすかに脈打った。


道端に立つ、錆びた鐘。


誰も鳴らさないまま、

ただそこに、置き去りにされている。


ノアは、手を伸ばし、

鐘の縁を、軽く叩いた。


カーン。


乾いた音が、村に響いた。


次の瞬間。


何かが、解けた。


子どもが、泣いた。

老婆が、笑った。

男が、叫んだ。


音が、戻った。


ノアは、何も言わず、村をあとにした。


外套が、風に揺れる。

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