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第29章 崩れかけた沈黙の塔

塔があった。


言葉を持たず、

名も持たず、

だが確かに、

“かつて意味を抱えていた”構造だった。


今は、

ただそこに立っているだけ。


周囲の者たちは、

塔の存在に気づいていなかった。


崩れかけた壁。

剥がれた装飾。

失われた入口。


それでも、

塔は崩れきらずに、

空に向かって、静かに裂け目を伸ばしていた。


ノアは、

塔の足元に立った。


キューブは、

わずかに鈍い振動を返した。


何かが──

ここでは、まだ終わっていない。


塔の奥に、

沈黙の奥に、

かつて交わされた何かが、

確かに“崩れかけのまま”残っていた。


ノアは、

手を伸ばさなかった。


ただ、

塔と自分との間にある

わずかな歪みを感じながら、

そこに立ち尽くしていた。

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