第三話 同室 (遥菊)
僕はベットに乗せられたまま病室に入った。その部屋には同じくらいの年の男の子がいた。看護師さんに説明を受けた。その看護師さんにお礼を言うと退出していった。隣のベットにいる彼と2人っきりになった。なんとなく気まずいので挨拶することにした。
「こんにちは、今日からよろしく」
「こ、こちらこそ。よろしくお願いします」
めっちゃ堅苦しい子だなぁ、と言うのが彼に抱いた第一印象だ。
「敬語なんて使わなくていいのに。そうだ、名前言ってなかったな。僕は大野遥菊って言います。「はるひ」って言わずに「はるき」って呼んでね」
やっぱり一人称が気になったのかなぁ。
「僕、実は体は女なんだけど心は男なんだ。驚いた?」
彼は驚いた様子はなかった。それどころか嬉しそうにも見えた。
「いや、むしろ嬉しいな。わたしの場合は体は男だけど心は女だから。同じような人がいてよかった」
「そうだね。僕もそう思う。そういえばまだ名前聞いてないよ?」
「ごめん忘れてた。わたしは井上桜成。「おうせい」じゃなくて、「さくな」って呼んでね」
僕はその話をしながら桜成のけがが気になった。僕と同じくらいひどいように見えた。
「分かったよ。ところで、さくなは何でそんなにひどいけがをしているの?」
桜成は、卒業式が終わった後に家でニュースを見ると卒業した学校で自殺未遂があったことを知り、気になって学校に向かって走って行っていたら車にひかれた、と笑って話してくれた。僕のせいだった。僕の自殺未遂が桜成のけがの原因だった。申し訳なかった。気付けば、泣いていた。
「ごめん、さくな。君が事故に遭ったのは僕のせいだった」
桜成は困惑しているようだった。
「自殺未遂をしたのは僕なんだ、、」
僕のせいで桜成がけがをしたという事実で心が張り裂けそうだ。ただひたすらに苦しかった。
「わたしはそんなことは気にしてないよ。む しろ、車にひかれてよかったと思うよ。だっ て、はるきと出会えたから。でも、もう自殺 なんかしようとしないでね」
その言葉に僕は救われた。今までならこれで縁は切れていたから。桜成の優しさが嬉しくて余計に泣いてしまった。
「優しいね、さくなは」
「はるきもね」
僕たちはささやくようにそう言った。
この日僕に友達ができた。
その子の名前は井上さくな。