第三話 同室 (桜成)
わたしは彼女がベットに乗せられたまま病室に入ってくるのを見ていた。多分同い年くらいの子だろう。彼女を運んでいた看護師も退出し、わたしたちは2人になった。
「こんにちは。今日からよろしく」
「こ、こちらこそ。よろしくお願いします」
わたしは緊張してしていた。同年代の子と最後にちゃんと話したのはたしか小学校中学年だったと思う。高校もこれだとまた孤立する気がした。と言うよりか、確信した。
「敬語なんて使わなくていいのに。そうだ、名前言ってなかったな。僕は大野遥菊って言います。「はるひ」って言わずに「はるき」って呼んでね」
わたしが驚いた顔でもしていたのだろうか?彼女はわたしが気になったことに答えてくれた。
「僕、実は体は女なんだけど心は男なんだ。驚いた?」
「いや、むしろ嬉しいな。わたしの場合は体は男だけど心は女だから。同じような人がいたよかった」
「そうだね。僕もそう思う。そういえば、まだ名前聞いてないよ?」
同類がいたことに喜んでいて忘れてた。
「ごめん忘れてた。わたしは井上桜成。「おうせい」じゃなくて、「さくな」って呼んでね」
「分かったよ。ところで、さくなは何でそんなにひどいけがをしているの?」
わたしは、けがをした経緯を遥菊に笑いながら語った。そして、話し終わったときに遥菊の表情が曇っていることに気が付いた。
「ごめん、さくな。君が事故に遭ったのは僕のせいだった」
遥菊は涙を流しながら言った。わたしは理解出来なかった。
「自殺未遂をしたのは僕なんだ、、」
この言葉が聞こえてくるまでは。
なぜ気付けなかったんだ。自分に腹が立った。でも、今すべきは自分を責めることじゃない。遥菊を慰めることだ。
「わたしはそんなことは気にしてないよ。むしろ、車にひかれてよかったと思うよ。だって、はるきと出会えたから。でも、もう自殺なんかしようとしないでね」
わたしの言葉で余計に泣き出してしまった。でも、遥菊の顔は少し笑っていた。
「優しいね、さくなは」
「はるきもね」
わたしたちはささやくようにそう言った。
この日わたしに友達ができた。
その子の名前は大野はるき。