第一話 卒業式 (遥菊)
僕の中学校生活はもうすぐ終わる。
この地獄も今日終わる。
こんな僕にも友達になってくれる人がいて、とても幸せ“だった”。そう幸せ“だった”んだ。
それは突然だった。僕の机に“キモい“や“ウザい”という言葉が書いてあった。別に何かしたつもりもなかった。だから、ほおっておいた。そうしたら今度は“死ね”と書かれた。流石に気になったから、書いた人を聞き出して、本人になぜこんなことするのかを聞いたら、「そんなの、お前がみんなと違うからだろ」って言われた。それからいじめが増えた。
たしかに僕はみんなとは違う。
体は女に産まれたけれども、心は男として産まれてしまった。ただそれだけなのに、、、
卒業証書の授与が始まった。
「1組 浅井孝太
池 雄斗
・
・
・
吉村陽菜
以上38名
代表 浅井孝太」
こうして、卒業証書の授与は進んでいき、僕の名前が呼ばれた。
「大野遥菊」
「はい」
声が裏返えることもなく返事ができた。
こうして卒業式は無事に終わった。
そして今チャイムが鳴り、最後のホームルームが始まった。みんな泣いている。いつも怖い先生でさえも涙を流していた。
「みんな卒業おめでとう。私は決して良い教師だったとは言えないけれど3年間付いてきてくれてありがとう…」
あぁ、これが最後かぁ。もう誰とも会えなくなっちゃうな。そう思うと涙が出てしまう。でも、もう決めたことだ。親が僕に合った学校を探して紹介してくれたから、そこを受けて、受かったけどどうせ行かない。もう僕の未来に希望も絶望もないんだ。そう思うと少しだけ気が楽になった。
「みんなこれからも精一杯“生きていけ”!」
こうして最後のホームルームは終わった。
僕は最後に僕の友達になってくれた2人にお別れを言いに行った。予想以上に話し込んでしまったけど、これで後悔なく旅立てそうだ。
2人と別れて僕は1人で屋上へ行った。
いじめられていた事実を遺書に書いて、
“飛び降りた”
意識はだんだん薄れていき、最後に赤い何かを見て目を閉じた。