第一話 卒業式 (桜成)
わたしの中学校生活はもうすぐ終わりだ。
この孤独な生活も今日終わる。
この3年間誰も話しかけてくれなかった。わたしをからかって話しかけてくる奴はいたけどそいつらは全員わたしと親しくするつもりなんて微塵もなかったことくらい分かってた。だってわたしは他の人とは違うから。
体は男に産まれたけどけれども、心は女として産まれてしまった。ただそれだけなのに、、、
卒業証書の授与が始まった。
「1組 浅井孝太
池 雄斗
・
・
・
吉村陽菜
以上38名
代表 浅井孝太」
こうして、卒業証書の授与は進んでいき、わたしの名前が呼ばれた。
「井上桜成」
「はいっ」
としっかりと言ったつもりだったが、声が裏返っていた。顔が赤くなったが、どうせ誰にももう会わないし、そもそも友達もいないからいいやと思った。しかし、なぜか頬には涙が流れていた。これは別れるのが悲しいからじゃない、誰も自分を理解してくれなかったことが悲しかったからだ。と自分を納得させた。
卒業式は終わり、最後のホームルームの始まりを告げるチャイムが鳴った。みんな泣いていた。先生は泣きながら最後のホームルームを始めた。
「まずはみんな卒業おめでとう。
今まで3年間色々あったが…」
と話している先生をわたしは内心恨んでいた。先生はわたしの相談を受けてはくれても、慰めるだけで何の対処もしてくれなかった。だからわたしはいつしか人を頼ることをやめた。そしてさらに孤独になっていった。
でも、今は違う。これからはわたしのような人にも理解のある学校に通って楽しい高校生活を送るんだ。そう思うとちょっとだけ気が楽になった。
「これからはみんなバラバラになってしまうがそれぞれの高校で実りのある高校生活を送ってください」
と先生の最後のホームルームが終わった。
みんな記念撮影や思い出話をしていたり、中にはまだ泣いている人もいる。
そんな中わたしはホームルームが終わってすぐに教室の飛び出し、もうここに戻ってこなくていいことを喜びながら走って家に帰った。
家に帰ったわたしは中学3年間の教材などの処分、そして高校入学に向けて準備を始めていた。
そんな時、いじめが原因で卒業式の後に自殺を図った中学生が重傷を負ったというニュースがテレビ報道されていた。
僕が今日卒業した中学校だった。