トカゲみたいな
トカゲ……、にしては、巨大すぎる。けれど、その見た目はどうみてもトカゲだった。
視線をそらせば、魔物が伏していた。おそらく、このトカゲを怖がっているのだろう。
私だって、怖い。
トカゲの顔が近づく。
噛まれる……？ そう思い、ぎゅっと目を閉じると、衝撃の代わりに、柔らかい感触が頬に当たった。
何だかすごくくすぐったい。あまりのくすぐったさに目を開けると、私はトカゲに舐められていた。
「キャーウ！」
目が合うと嬉しそうにトカゲは鳴いた。……ちょっと可愛いかもしれない。恐る恐る、頭に触れると、嫌がられなかった。ひんやりとした感触が手に心地いい。
トカゲも気持ちいいのか、うっとりと目を閉じてゴロゴロとした音をならしている。
──と。
森の茂みを掻き分けて、一人の男性がこちらにかけてきた。
「おい！ 聖竜──ってああああ！」
聖竜というのが、このトカゲの名前だろうか？ ……ん？ 聖竜？
もう一度、トカゲを観察する。トカゲは、白く発光していた。確か、隣国ドラグーナは、竜を王とする少し変わった国だ。白く発光している肌は神々しくみえ、竜に見えなくもないかも、しれない。おそらく、そこから聖竜という名前はつけられたのかも。
そんなことを考えていると、男性は息を切らしながら、こちらに近づき、震える声で尋ねてきた。
「すみませんが、お嬢さん、こいつに舐められて……ませんよね？」
蒼白な顔にこちらも真っ青になる。勝手に飼い主の許可なく触って、舐められてしまったものね！ 怒られるかもしれない。
「あのその、大変申し上げにくいのですが……」
舐められたし、触っちゃいました。私が、そう白状する前に、トカゲは私に近づき、私の頬をもう一度ぺろりと舐めた。
「あっ、ああああ！」
その様子を見て、男性は崩れ落ちる。
「キャーウ！」
反対にトカゲはご機嫌そうだ。尻尾をぶんぶん揺らしている。舐められることがそんなに、悪いことなのだろうか。トカゲの舌には、毒があるとか？
でも、私の体に今のところ異変はない。
「あの……」
私が、男性に手を伸ばすと、その手をがしりと掴まれた。
「貴方に配偶者はいますか？」
婚約者はいたけれど、配偶者はいない。首を横に降ると、安心したように、男性はため息をついた。
「……では、貴方には〈聖竜の守り手〉になってもらいます！」
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