私はお前を生涯愛することはない。私には愛する人がいるのだから。婚約者からこのように宣言されましたが、別に政略結婚だから構いません。そのあと婚約破棄されその相手が…妹と知る前はこの考えでしたけどね…。
「私はお前を生涯愛することはない。私には愛する人がいるのだから」
婚約したその日に王太子殿下にこう告げられました。
私はリーゼル・クロラン、公爵の娘です。憮然とした表情の殿下が訪れた時、まあしょうがないと思ったのは私も政略結婚で、殿下のことを愛していなかったからです。
唯一、私に好きな人がいないというところが違いましたが。
「わかりました」
私がこう一言いうと、かわいげのない女だとあなたはいいましたけど、この性格が形成されたのは私の家族のせいでもありました。
私には妹が一人、蝶よ花よと育てられた彼女は私より美しく要領がいい性格をしていました。
何か物がなくなるとお姉ちゃまがとった、とった、とったと泣き叫びますが、私がとったんじゃなくてあなたが失くしたのですわ。
と言ってみても両親は妹の味方、私が怒られることになりました。
それはまあ仕方ないかと、私は実は養女で、私は今の父である公爵の兄の子、つまり妹にとっては従姉にあたりました。
両親が事故で亡くなり、爵位を継いだおじのところに引き取られました。
まあ、本来は私が婿をとって爵位を継ぐはずでしたが、なにせ三才の幼少でしたので、おじが私の後見人となり、爵位を継ぎ、将来、私が婿をとって爵位を継ぐことで落ち着きました。
目の上のたんこぶが私でした。
まあいじめられたわけでもなく、何不自由がなく育ててもらいましたが、そのあとに生まれた妹が優遇されるのは仕方ありません。
私が爵位を継ぐ話もなくなり、妹が婿をとって跡を継ぐこととなり、私が殿下の婚約者となったのです。
妹が大層、私が婚約者になったとき怒っていましたが、跡取り娘が婚約者になるわけがないじゃないですか。私は仕方ないと諦めていました。
そして婚約初日にこれでした。
まあ仕方ないと思いました。
そして1年がたち……。
「お前との婚約を破棄する! 私は真実の愛に生きる!」
「え?」
「どこへなりとも行くがいい!」
私はなぜか婚約破棄を宣言されて、放逐されることとなりました。
私は高々に宣言する殿下の後ろでにやにやと笑う妹を見ました。
真実の愛の相手とやらがあれだったとは……。
私は弁明すらすることができず、衛兵に追い払われました。
そして家に帰ったところ、私のいる場所なんてないと両親に冷たく言われ、小銭を与えられ放り出されました。
実は妹に子供ができたことが分かり、慌てて動いたそうです。
爵位については、親戚から養子をとることにしたそうです。
ええ、正統な後継者である私を放逐してです。
私は政略結婚でもよかったんです。家の跡継ぎでなくてもよかった。
育ててくれたことに感謝しておりましたのよ? でも許せません。
私の婚約者を盗った妹、それに味方した両親。
真実の相手とやらと結婚するために私を婚約破棄して放逐した殿下。
絶対に許せません。
私はある手紙を手に、陛下のもとに行きました。この手紙がすべてを明らかにすることがわかっておりましたが……。
「どうして私が牢屋になんて! お父様とお母様はどうなったの!」
「……あら、知らないの? 処刑されましたわ」
「え?」
「身内殺しは大罪なのですわよ」
私が牢屋に座って泣き叫ぶ妹に向かって笑顔でそういうと妹がどういうことよと食って掛かってきました。
実は昔からいた使用人が両親が最後に書いた手紙を預かっていて、私にそっと渡してくれたのです。
「私の父である前の公爵、つまり私の父をあなたのお父様が殺したからなの、私の母とともにね、その罪のために処刑されたの」
「……」
「私も殺すはずだったらしいけど、私は熱を出して寝込んでいて、お出かけに両親が連れて行かなかったから私一人助かったんだけど」
前の公爵である兄、私の父と母が出かけたとき、馬車に細工をして事故にみせかけて殺したのは私の義理の父、つまりおじでした。
父はおじの不正を見つけ、それを告発するつもりでいたのですが、それを知ったおじが父の命を狙っているかもしれないという手紙の内容。
そしてその手紙を……事故で死んだ父の懐から奪い去ったのが実は使用人で、馬車に細工をしたのも彼でした。
彼も不正に携わっていて、それを明るみにされるのを恐れたおじが命じたそうです。
しかし両親が死んで、幼い私のみが残されたのを見て、己の罪を悔い、彼もおじから殺されそうになったので身を隠して、私が十五になったときに会いに来て手紙を託してくれたのです。
私の両親の死の真実とともに……。
私は悩みました。しかし、この事実を黙ることにしました。
だって妹はそのことを知りません、おばも知りません。なのに、連座で二人が死ぬことになるかもしれないのが耐えられなかったのです。
しかし私は、妹の所業を見て、そして私を放逐した義理の両親を見て、もうすべてを明るみにだすことにしたのです。
「どうして、どうして、どうしてよ! 嘘よ嘘よ嘘よ!」
「そう思いたければ、そう思っていればいいですわ。あなたの処刑は明日だそうです。さようなら」
私に真実を託してくれた彼のことを私は助命嘆願し、辺境追放ということにしてもらいました。
罪を悔いた使用人にまで死を望みませんでした。
爵位は私の元に戻ってきました。
ええ、それから殿下は真実の愛に殉じるかと陛下に聞かれ、それを否定したそうです。
愚かな選択をしたとして陛下から廃嫡を命じられ、私は第二王子と爵位をそのままに婚姻することになりそうです。
ああ、どうして愚かな選択をあなたたちはしたのでしょう。
私は口をつぐんでいるつもりでしたのに、あなたたちが何もしなければ……ね。
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