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「ただいま!」

 礼田弓子には珍しく。帰宅してすぐ手洗いうがいも、そこそこに。

父は単身赴任。母もパートで居ない事も多い。たまにケンカはするものの。

 甘え上手の妹に、世話好きの姉の組合せは、自然仲が良くなってゆく。

「おねえちゃん、まってたよ」

 部屋に入るのにも一応きちんとノックして。

 メールを受け取るのは、自宅に帰ってからと決めていた。

 妹からの送信。……着信。たった数秒。長く感じた数秒。

 メールに記載されたHPにつなげる。アプリケーションソフトをダウンロード。

 高鳴る胸。不安。焦燥。期待。

 起動。

 おなじみの乳白色の下地に、墨の文字。血の様な赤い鳥居。十円玉アイコンは、フチが刻みが入る赤茶色の、古ぼけたコイン。

 安堵のため息がもれる。妹はにこにこと微笑んでいる。

 と、唐突に優し気な電子音が響く。

 鳥居の上のスペースに、アイコンがどう動いたかの、履歴を乗せる欄がある。

[ゆ み ち や ん お か え り な さ い]

 そこに突如浮かんだメッセージ。

「ラッキー……待っててくれたんだ……」

 弓子の元に、こっくりさんガジェットが帰ってきた。


                                               ◆◆◆


「こうしんまち? だっけ明くん」

「はい。NGの方からの解析結果的に」

「えーっと三匹の虫が誰の体の中にも居る。それが悪い事した場合、天の神様に告げ口する。周期的には60日周期……十干・十二支で60通りだっけ?」

「……トモ姉……一応本家筋なんですから」

「えへへへ……アタシは、ほら経済畑だし。文科系の素養薄いから……弟クン、解説ヨロシク!」

「……まあ、いいですが。元々は道教の考え方で、平安貴族等の行事ですかね。俺も専門では無いですが」

「概要だから問題ナッシング!」

「……体内に居るとされる架空の虫、三匹。それが天界に日頃の行いを告げ口する可能性がある。ならそれが行われる庚申の日には徹夜して、告げ口をさせないようにしよう。ご馳走食べたり酒飲んだりして、起きていよう、という行事です。それが庚申待。告げ口する相手が、天帝だったり閻魔さまだったりするわけですが……三匹のムシ。そしてこっくりさんガジェットとの共通点は?」

「ふーん、三匹の使い魔ねえ。庚申待の伝承にこっくりさんを重ねたって感じ? ん? って事はどうなるの? あの使い魔は、ガジェットソフト使用者が生み出したとゆーか、由来って事に?」

「NGの研究チーム的には現状そういう結論です。加えて。一度デリートしてスマートフォンにデータが無くても、その使い魔たちが使用者に取り付いてバックアップになる可能性も高いとも」

「それかなりマズイんじゃないの?」

「一応憑りついても数日で、消えるそうですし。そもそも使用者本人由来なので、使用者本人には害を及ぼさないそうですが」

「……数日以内に再インストールするってえーっと。依然と同じような形で復活も容易? 的な。バックアップ?」

「そういうことです」

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