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真昼のビジネス街、十字路――交差点、現実の淀屋橋。


「間に……合わなかった……の……」

「…………」

「明くん?」

「ステルス、そちらも起動をお願いします。二重起動です。ビー・ワイを使うので」

「え? ちょ、ちょっとぉ危ないわよ。キミのBYは『お札』ならまだしも、『宝玉』や『鏡』とは相性悪いのよ! 夏海ちゃんのは、メインがチカエシで、サブでオキツが混ざってる系統。キミのはヤツカ、めっちゃ遠いじゃん」

「……でも元をたどれば、ガジェット系統は全てクサグサノ・モノノ・ヒレに行き着くそうです。その検証も一部実証されているんです」

「そりゃ理論上は――ってじっしょぉ! ひょっとして天王寺のアンニャロメのからみなの?」

「はは、まあ何というか、呪力の乏しい俺は、失敗時の反動は少ないですからね。逆に操作力に特化されて、鍛えられましたから」

「ってソレ答えになってない! つーか、むしろ違う意味で答えか!! アンニャロメに言われて、明くん本人が実証実験したの?」

「……今からやる分を含めれば13回目でしょうか。これでもその道ではスペシャリストです」

「あーうーーー!!」

「二重遭難にはなりません。勝算はあります。夏海さんを救出する率も高いでしょう……ただ」

「?」

「ただ、ガジェットに誘われて異界入りした被害者までは、難しいかもしれません。被害者が一人とは限らないですから、余計に」

「うーむ…………ステルスは起動済。一応保険として……この『子』を連れてゆくのと、成果無くても今から30分以内での帰投を約束して。キミとアタシは一蓮托生。それは変わらないんだからねっ」

「分かってますよ、トモ姉。……BLADE OF YATUKA 起動認証許可を願います」

「……そこは、緊急避難的処置で逃げないんだ……」

「一応天王寺家の認可上の実証実験的要素も付け加えられそうなので。上への言い訳が楽になります」

「アタシ天王寺の家のアイツ大嫌いなんだけどなーー。大好きなおとうーと君をアタシから一時的に奪ってくれたし。シンパイしたんだゾ」

「色々人格面では多々問題ある人ではありますが、フユキさんは俺の師匠なのは変わりませんよ。感謝もしていますしね」

「その辺はケンカイのソーイだしねーー。まあ、ともかく納得してないケド無理やり飲み込んでっと。やるからには無理せず出来る範囲で全力つくしてこいっ!」

「了解」

◆◆◆


思い出す……思い出せ!

 ドジでメガネっ子なお姉さんと、少し生意気で賢い少年カップルの事を。

 思い出される竜王校での一幕。

『文武両道の校風と言われてもイメージしにくいでしょうが、進学にもスポーツにも力を入れていて設備面だけでは無くて、生徒側のやる気もすごいんですよ』

『その割には強制とは縁遠く、自主性にまかせるのも気風だな。お姉さんたちの様な方々が学友となれる事をオレは望ましいと思う訳だが』

 気弱そうなでもやさしそうな、一つ年上お姉さんだった。名前は思い出せない。お母さんに雰囲気とか似てたのになあ。

 名字はアトウとかマトウとか、そんな感じ。

 小学生の彼氏君の方は、大人びてまるで年上と話していたかのよう。

 そうやって天川夏海は、絞り込む。望遠鏡の焦点を合わせるかのように。

 

 銀縁メガネは嫌味無く上品に。髪型は長めのを一本のフィッシュボーンに編みこんで。

 彼氏君の容姿はあまり思い出せないけれど。彼女さんの方に、お母さんの面影を生徒会庶務さんの中に、見ていたからか。

 でもその皮肉げな口元と、彼女に向ける保護者めいた優しい眼差しは何となく……。

 そうイメージしていって。心の奥底の鍵穴に、カチリと何かがはまり込む感覚。

 見つけた!

 気がつけば見知らぬ風景の中に、夏海は佇んでいた。大阪――いや日本ではあり得ないほど巨大な門扉のモニュメント。石で出来ていて、しかも巴里の凱旋門クラスの大きさ。年代は縄文とか弥生とか古墳とか? そんな建造物の存在は、彼女の常識の中には無い。日本国内には無い。新興住宅地の中の公園の中に、場違いな形で陣取るさまは、もっとあり得ない。

 そして……歴史系統は彼女の得意科目でもある。と言うか、好きこそもののの上手なれで、教科書だけで無く副読本の資料系すらも、おやつ時間の友として、結構眺めて楽しむたちである。その浅いかも知れないが広い知識。その一般教養レベル的に見る建築様式は、東洋はおろか西洋の、洗練された様式では無い。

(原始的な……縄文とか弥生とか?)

 その時代の物で石で出来た巨大な門扉があるはずも無いな。そう考えつつ。そしてここが目的地と確信しつつ。

 門の真下に見慣れた色彩を見つけた。普段なら、小さすぎて見落としかねないモノ。でもそこに小さく青い点がある。

 青を中心とした寒色系でまとめたマスコットキャラ。

(青山ウサ吉くん、初回の数量限定チーマー・バージョン!)

  見間違い無いキャラ、その特徴的なその名前。 

 そのあんまりなキャラネーミングセンスに関して、大親友・関西弁系親分少女と論争を交わした事からも、明らかだ。 ちなみに夏海はネーミング肯定派。

(あのお姉さんがやっぱり神隠しにあったんだ!)

 それは確信だった。

遅れてごめんなさい。明日分は時間通りに。

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